『小さなお話し』 その137

やましん(テンパー)

『ハシラーの孫たち』

『これは、遥かな未来に書かれた、『ヤマシン・サガ』の一部と言うことになっているところの、フィクションである。この世とは、一切関係ありません。』



 



 『大海獣ハシラー』については、あの、関門海峡で起こった、奇異な事件など、すぐに、世間から忘れ去られてしまいました。


 ハシラーの産みの親である、元生物学者の孤独な漁師も、その、ノンキャリ公務員の弟も、なんら、資料も残さずに、自ら身を処分してしまい、その陰の仕掛け人である、ある政界の大物は、一切、口を閉ざしたまま、この世を去ったのです。



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 しかし、やがて人類は、『宇宙ゴキ』の征服を受けたのだ!


 『正体不明の組織』が内部から手引きしたこともあり、また、あまりに人類を甘く見た宇宙ごきのミスによる、初戦の勝利だけで、それ以降は、まったく歯がたたず、ほとんど抵抗らしい抵抗もできずに、地球人類は、あえなく、降伏したのである。


 しかし!


 宇宙は、意外と、そう簡単でも、なかった。



 広く、宇宙に拡散する『宇宙ゴキ』に、生理的な『敵愾心』を強く抱く、ふたつの宇宙人、つまり、あの、『ノミ・スギー星人』と『クイ・スギー星人』が、にっくき『宇宙ゴキ』の始末と、地球征服の両方をまとめてやってしまおうとして、総攻撃してきたのである。(彼らに、過去、いったい、なにがあったのかは、不明である。)



 『敵の敵は味方なり。』



 もともと、『ノミ・スギー星人』と『クイ・スギー星人』は、同じ起源を持つのだ。


 それは『セ・イカ・ツ・シュ・ウカン・ビョウ星人』である。


 彼らは、本来は「宇宙の絶対平和」、をスローガンに掲げる、非常に先進的な知的生物であった。


 また、地球からは、あまりに遠方であることから(母星は、アンドロメダ星系にあるのだ。)、長く銀河系の下等知的生物のことなど、気にもしていなかった。


 しかるに、そのなかから、非常に好戦的・挑戦的なグループが現れたのである。


 地球の、『堕天使=悪魔』みたいなものだろう。


 空間を縫い合わせながら進行する技術を、祖先から譲り受けて持っていた彼らは、外宇宙に乗り出した。


 もっとも、本来、この二種族は、非常に仲が悪い。


 同じ祖先を持ちながら、まったく、犬猿の仲だったのだ。


 しかし、『地球征服』という共通の目的で、とりあえず、同盟を組んだのである。


 『ゴキ退治だ! 地球は昔から我らの領土である!』


 との声明を、全宇宙に発した。


 彼らに寄れば、地球人は、『セ・イカ・ツ~ 以下略、』の遠い親戚筋から別れ、肉体は放棄した、DNAだけの形で宇宙をさまよい、やがて、火星人・金星人・地球人と別れた。


 そこに手を加えたのが、『火星の女王』と呼ばれる、未知の存在である。

 

 どのような知的生命体も、この『女王』には、まったく通じない。


 なんせ、『女王』は、あっというまに、『ある太陽系』一つを、消滅させてしまう力がある。


 だから、『女王』は、戦争の対象にはならないのだ。(地球人はそれを知らないらしいが。)


 彼らは、事前に、その『女王』に宛て、銀河系の、自称『太陽系』を攻撃したいと伝えた。



 ところが、女王は、あまり、そうしたことには、興味がなかったらしい。


 地球上の『宇宙ゴキ』に関しても、さして、手は出していない。



 『まあ、お好きに。結果に責任は一切持たないからね。』


 と、回答があった。


 地球人ならば、これには、『脅し』が含まれる、と見る。


 彼らは、単純に、『どうぞお~~~~』と、受け取ったのだ。


 非常に素直な、宇宙人である。




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 『宇宙ゴキ』と『地球人類』は《宇宙連合軍》を、共同で設立したのである。



 女王は、自分の旗艦である、無敵の宇宙攻撃母艦『アブラシオ』を人類に貸与した。(アブラムシ、ではない。)



  


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 『大宇宙戦争』になる前に、宇宙ごきと地球人類は、『ある』、策略を実行した。



 『ノミ・スギー星人』と、『タベ・スギー星人』は、地球を挙げての大歓迎会に招待された。


 飲めや歌えや、の、(太平洋の、ど真ん中を宴席とした)、まさに、歴史上最大の宴会が開かれたのである。


 しかし、それはつまり、やまたのおろち、とか、しゅてんどうじ、のように、相手がふらふらになったところを襲うはずだった、計略であり、とっくに見抜かれてもいたが、・・・・いたのだが、なんとも、思わぬ事態となった。



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 大海獣『ハシラー』の孫の世代は、すでに、数十万に近いくらいに、増えていた。


 大食いである。


 なんでも、食べる。


 ものすごい、繁殖力である。


 

 海中から現れた彼らは、『ノミ・スギー』も『クイ・スギー』も、みな、平らげてしまったのである。



 にもかかわらず、人類は、まったく、無事だったのだ。



 こうして、講和が成ったのである。


 

 しかし、そうなると、困るのは、『宇宙ゴキ』であった。



 なにしろ、人類より強い相手が、地球の『大洋』の中に、住んでいると、分かったのだから。


 それも、どうやら人類寄り、なの、らしい。


 

 うっかりしたことは、出来ないと、悟ったのである。


 宇宙ゴキは、政策転換を、せまられたのだ。



 地球人同様、喰われる、というのは、宇宙ゴキ最大の、恐怖だった。




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『小さなお話し』 その137 やましん(テンパー) @yamashin-2

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