第3話:刺客
王太子の叫び声と同時に、十数人の近衛騎士が、剣を抜いて国王陛下や王妃殿下に襲いかかりました。
全員が、最近王太子が強引に登用した、王太子付きの近衛騎士です。
ですが、そう簡単に国王陛下と王妃殿下を弑逆などさせません。
他の護衛役が不意を突かれたとしても、父上と兄上が見逃しはしません。
もう私の側を離れ、壇上で謀叛人どもを誅殺されています。
もう大丈夫と思った時、嫌な視線に気が付きました。
このような事態になっても、王太子の嫌な視線が私に向いたままなのです。
これは、国王陛下と王妃殿下の襲撃が囮ではないのか?
本命はあくまでも私で、聖女の私を殺す事が一番の狙いなのではないかと!
そうだとすれば、国王陛下と王妃殿下も一味同心だと思われます。
そうだとすれば、私の側には刺客が潜んでいるはずです!
「愚か者が!
お前らごときの陰謀に騙される俺ではないわ!」
私が背後に迫っていた刺客に気付いて、何とか避けようとした時には、すでに兄上が壇上からこちらに戻られていました。
そして、妹の私が恐怖を感じるほどの、恐ろしい憤怒の表情を浮かべられ、刺客を頭から尻まで一刀両断にされました。
そのあまりに凄絶な刀技には、見ていた者すべてが恐怖を感じる事でしょう。
もう、壇上の謀叛人は父上に皆殺しにされています。
父上はハルバートと双剣の達人で、今回は双剣を使って攻防一体の剣技を使われ、最短で謀叛人を誅殺されました。
兄上も父上に鍛えられたハルバートと双剣の名手ですが、全盛期を過ぎられた父上に比べれば、剣技に乗る力が凄まじいのです。
技よりも力が目立つ剣技、それが兄上の双剣術です。
その兄上が、一見今回の謀叛劇に関係ないと思われる者まで誅殺されています。
その為会場が阿鼻叫喚の場と化していますが、兄上に間違いはないでしょう。
少し妹の私を溺愛し過ぎる点はありますが、密偵を上手く使って情報収集する事も、父上から学んでおられます。
兄上が殺しているのは、今回の謀叛劇に陰で加わっていた者でしょう。
全員が私に恋文を届けて兄上に殴られた連中ですが、私はそれが原因ではないと信じています。
「王太子、いや、謀叛人エリオット!
この謀叛劇の真相を白状してもらうか!
国王陛下、王妃殿下、私がこれからエリオットを尋問しますが構いませんな?!
もし止められるのなら、今回の件に陛下と殿下が加わっていたと考えますぞ!」
「構わん、構わん、構わん!
余は無関係じゃ、エリオットが勝手にやった事じゃ」
「そうよ、私達は無関係です。
全てエリオットが勝手にやった事です。
もうエリオットとは縁を切ります、左大臣大将軍の好きにしなさい」
王太子は国王陛下と王妃殿下にも見放されましたね。
これで父上も自由に拷問できるでしょう。
父上が謀叛人に加える拷問、考えるのも恐ろしい!
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