千鳥野綾香は笑わない
千蘇
001
まずは私の話をしよう。そうしたほうが読者諸君も物語に親近感を持てると思う。
私の名前は千鳥野 綾香だ。チドリノアヤカ、それが私の名前であり、私が私であること照明できる唯一の物だ。
千鳥野家は代々見てしまう家系である。見てしまうというより目撃してしまう家系と言うほうが正しいだろう。何を、決まっているではないか。人ならざるものだ。それを見てしまうが故に自殺した先代、それに殺された先々代、そして私である。
私もそれに関わって死ぬ運命なのは分かっている。分かっているはずなのに、もっと、もっと生きたいと思ってしまう自分が居た。
そんなことを考えていたがすぐに現実に引き戻される。
パシッ、パシッ。頭を叩かれた。本の様なもので。私が顔を上げるとそこには教師が「またお前か」と云わんばかりの目で私を見ていた。
ここは窓際一番後ろと中々に見つかりにくい場所なのだが。それでも見つかるとなると私が寝息を立てていたという事だろうか。いや、違うな。私はすぐに気づいた。それがクラスメイトの仕業であると云う事に。
クラスメイトが親切に起こそうとした?違う、起こそうとしたのではなく自分達の評価を上げ私の評価を下げようとした結果がそれだった。
苦手な数学の講義が終わり、私はお手洗いに行った。駆け込んだ。逃げるように。
私は鏡を見るのが好きではない。何故なら己の現実と、己の真実と、向き合ってしまうからだ。否応なくに。
そう、虐められてると云う現実とも向き合わなくてはいけないからだ。
教室に戻ると机の上の筆記用具が分解されていた。分解されていたのは百円程度の安物のペンなのだが壊されていたというよりあからさまに分解されていたのだ。
もしも踏んで壊してしまったのであれば私はまだ許せただろう。何故ならそこに故意がないからだ。但し、この分解という行動は如何足掻いても、如何理由付けしようとしても故意が有ることに変わりは無いのだ。
怒るべきだ、子供の様に、只、それは私には出来なかった。それをせずに椅子に座る。内心傷つきながら。
分かっている、私は浮いているのではなく虐められているのだ。虐めで、惨めで、しょうがない私だ。
扨、どこまで話をしたのだろうか。
嗚呼、思い出した、私が惨めな奴という話をしたのだ。
でも、まだ話さなければならない、開示しなければならない過去が、今が、未来が、存在する。もうしばらく私の独り語りを聞いては頂けないだろうか。
誠に申し訳ないと思ってる。こんな自分が私は嫌いだし、読者諸君も嫌いなはずだ。
それでも、私は話さなくてはならないのだろう。
たまに巫女服を可愛いと云う輩が居るが私はそう思わない、思えない。あんな忌まわしいものを何故可愛いと思えるのか私には分からなかった。普段着慣れていないと可愛いと思うのかもしれない。
私は着慣れている。巫女のアルバイトをしているのではなく職業柄、家柄として。
ここまで云えば私の家系がどのような家系なのか分かってもらえるだろう。そう、千鳥野家は代々神主、巫女の家系である。
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