愛のカタチ
奈々星
第1話
"君を愛している"
僕のこの言葉に嘘は無い。
本当に君のことを愛している。
でも僕は君と手を繋いだことも無いし抱き合ったことも勿論、キスだってしたことが無い。
それでも君は毎朝僕より早く起きているし、
毎朝元気に送り出してくれる。
出先でも君のことばかり考えているから仕事に身が入っていないなんて君は知らない。
帰ってくるといつも暖かく見守ってくれる。
こんなありえないくらい積極性のない僕でも
君に毎日「愛してる」だとか「大好きだよ」
という愛の言葉をかけている。
僕がたったこれだけのことを言うだけで君は嬉しそうに僕を見つめてくれる。
まるでにらめっこをしているかのように笑みはこぼれているのだけれど声は出さない、
そんな君の姿がおかしくって堪えられなくて
僕がいつも吹き出してしまう。
何の変哲もないように見える僕らの生活だが
変わったところをあげるとすれば、
君は僕より大きい。僕の身長は170cm
男としてもうひと踏ん張り欲しかったというところだ。
あと君はいつも窓際にいる。
日の光を浴びるのが好きだから。
これが僕たち。
話は変わるけど、今日会社でとても迷惑なお客様がいてさ、こころない言葉もかけられたりしたんだ、辛かったなぁ。
「抱きしめて……いいかな?」
返事が返ってこないことは分かってるけど
付き合って同棲までしてるんだから別にいいよね。
僕は彼女の返事も聞かず彼女を抱きしめた。
ぶっっっしゅぅぅぅぅっっっっ。
____________________________________________
*いつも日に照らされている部屋の一室。
窓のカーテンは赤く染っている。
さながら飢えも凌げぬ砂漠のように
白い骸骨と2m近くあるサボテンが
身を寄せあって暮らしていた。
愛のカタチ 奈々星 @miyamotominesota
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