人間代表のショートショート

人間代表

最後のミッション

オル星人たちは、文明を極限まで発達させ、何もすることがなくなって、すっかり退屈になってしまった。そこで宇宙じゅうの知的生命体をリストアップし、それらが住む星を征服してまわり、全ての生命体を自分の星に住まわせた。知的生命体を収集すれば、何か新しいことが生まれもすると考えたのだ。そうして彼らは400年くらいをかけて、5000あったリストのうち、4999を屈服させ、リストに残る知的生命体は人類だけとなった。


オル星人は最後のミッションだと意気込んで、知的生命体の住む領域のうち、オル星からもっとも離れたところにある太陽系へと船団を派遣した。


いくらオル星人といえども、太陽系は全く未知の領域であったため、人類探しは難航した。観測員がセンサーに生命体の反応を捉えたのは、太陽系に入って数年が経った頃だった。


「艦隊長!知的生命体の反応を確認しました!この星に降りますか?」

「やっと見つけたか、観測員。よろしい、全艦目的星に降りろ!」


さすが4999の知的生命体を征服してきたオル星人、そこからの動きは速かった。人類から数人をサンプルとして拉致し、生体を分析。そして手早く言語を学習したのちに圧倒的な科学力を見せつけ、投降を迫った。どうやら人類は統一的な意思決定機関を持っていないようであったが、全滅か降伏かを迫られて全滅を選ぶほど愚かではなかった。オル星人は速やかに人類を船に乗せ、オル星へと帰還していった。


ようやく最後のミッションを終えたオル星人たちであったが、船に高揚感が漂うことはなかった。


「さて、これで全宇宙5000の知的生命体を収集完了したわけだが、最後のが一番少なかったな、観測員」

「そうだな、航行士。最後だしドカっと連れて帰りたいところだったが、50体ほどしかいないとは。これではかけた時間に釣り合わない」


そのころ地球では、火星の移住実験に出発したチームからの交信が途絶えことがちょっとしたニュースになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る