第33話 愛は憎悪を吊るし上げる
私は夢中で地名も分からぬ場所を探し回った。
お兄ちゃん!お兄ちゃん!
心の中はただそう叫ぶばかり。これじゃあ、どっちが誘拐されたか分からない。
暗闇をむやみやたらに
それはなんだか、年長に生まれたのに兄を欲しているクラスメイトの女の子のようでもあって、今の状況と照らし合わせて、それで『やっぱりこんな状況おかしい』とまたまた腹が立ってくる。
迷路に迷い込んだのは身体だけじゃなくて、頭の中もそうだったみたい。
意味不明な仕打ちをされたけど、唯一、私の行動でおかしなところを挙げるとすれば、警察に通報していないってところかな。
私自身、何でだろう?と思ったりもするけど、私の手でお兄ちゃんを助けたい・警察に邪魔されたくない・警察に任せるとアイツに復讐できないからみたいに、いろいろと理由らしいものが出てくるので、決して、大ごとにしたくないといったようなアイツをかばう気持ちがあっての事ではない。
それなのに、どんなに手を伸ばしても、脚を働かせてもお兄ちゃんには辿り着けない。お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなのに。
私だけの…………私だけの!
<プルルルル>
「お兄ちゃん!?」
「残念ながら智花さんだよ」
「…………」
「今どこに居るのかな~?」
「お兄ちゃんを探しています」
「で、見つかりそう?」
「…………何の用ですか」
電話を切ろうとする一歩手前で、あの女はそういった
「深雪は車を持ってないのよ!」
「……そうですか」
「アナタ、宗太君と違ってあんまり賢くないのね」
「車を持ってないからどうしたんですか。別に電車やバスで移動したかも」
「そうじゃなくて、監禁するためにどこかに宿泊してるかもって話よ」
そっか、お兄ちゃんは男の子だから、普通に考えて逃げようと思えば逃げられるはず。
それでも何の音沙汰もないのだとすれば、監禁状態。
そしてそのためには二人っきりになれる場所が必要。
「もう一つ、いいことを教えてあげる」
「はい」
「素直になって偉いわね~。駅員さんに頼んで、深雪の定期の使用履歴を見せてもらったの」
「よくそんな事ができましたね」
「昔から知ってる駅員さんだったのと、私が血の繋がった姉妹ってのが効果あったみたいね。それで分かったのは、深雪は公共交通機関を使ってないってこと」
「近くに居るってことですか……!?」
「そうなるね~。私も今から近くにあるネットカフェとかを覗きに行くつもりなんだけど…………あれ?切れた」
急いでアイツの家の最寄り駅まで向かう為に電車に乗ってみると、知らぬ間に3駅も離れたところを探してたらしい。
お兄ちゃんが逃げられないってことは、拘束だけじゃなくて、何か凶器も持ってるってことだよね。
じゃあ、私も武器を持っとく必要があるってことだよね?
そうだよ、私がアイツを駆除しなきゃ。
お兄ちゃん、待っててね。妹が一番、お兄ちゃんのことを想ってるってこと、きっと証明するから。
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