第30話 拘束幼児プレイ
半ば強制的に連れてこられた場所は市内のビジネスホテル。
ここなら人目を気にせず腹を割って話が出来るからとのこと。
彼女の言い分には一理あるし、先ほどの一件があるため、首を縦に振らざるを得ない会合場所案なのだった。
「入って」
いつになくとげとげしい口調。在りし日の深雪さんが見せたあの暴走を、脳の長期記憶を司る部分がご丁寧にも思い出してくれる。
物怖じせず、相手の逆鱗に触れないように、静かにゆっくりと部屋へと入っていく。それはまるで危険生物への対象法であるかのように。
<ガチャン!!!>
キーボードのエンターキーをわざと大きな音を出してタイピングする人がいるように、わざわざ強調するかのようにして鍵を閉める人もいる。
エンターキーの場合はカッコつけるのが主たる目的であり、鍵の場合は紛れもなく支配を表しているのだった。
浅はかにも僕は、言われるがままに美少女に誘われてホテルにのこのこ着いてきた大学生という烙印を押された。
それが気にならないのなら、これはどうだろう?
<バチッ!バチッ!>
彼女の手にある凶器は、察するにわが妹の愚行によって購入されたあのスタンガンそのものだろう。
没収後、厳密に保管していたはずが、こうして僕へ向けられているのだから、面目丸つぶれもいいところだ。
如何なる賢者あるいは悪魔によって封印されたいにしえの秘儀・秘宝であったとしても、いずれは解かれてしまうのだ、僕の些末な保管など何の意味があろうか。
抵抗虚しく、僕は彼女に高電圧を浴びせられ、真っ白なシーツに向かって倒れこむのだった
<バチバチッッ!!>
雷には小さい頃から興味があったが、これからはトラウマになりそう…………
慣れているとは言わないが、彼女に拘束されたのは良くも悪くもこれが初めてではない。
だから、スタンガンで気絶させられた挙句、ベッドにくくられるという、ある種卑猥とも取れる現状にも、パニックで発狂するなどという事態には発展しなかった。
それも彼女の計算だったり……はしないだろうが、彼女はリンゴのすり身をせっせと作っている。
「おはよう、もうすぐだからね♡」
この場合、幼児の如く、僕がリンゴをすりつぶしたものを食べさせられるのであろう事は言うまでもない。
個人的にはシャキシャキとした食感がリンゴのいいところだと思っているので、できればご遠慮したいところだが、下手に嫌がって、喉を詰まらせてはシャレにならない。すりつぶしているので、可能性は低いにしてもだ。
「はい、そうちゃん、あ~ん♡」
発狂の心配は無さそうだけど、正常な判断が保てるかは自信が無いぞ。
こんな事だったら、官能小説も読んでおくべきだったか。
「そうちゃん♡」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます