第24話 地下牢

視界がぼんやりとする。

此処は?

頭を横に動かし辺りを確認する。


「あ!」

叔父サンチョンだ!」

椅子に腰掛け何かを飲んでいる叔父サンチョンの後ろ姿が視界に映った。

叔父サンチョン、聞いて、聞いて、」

「私、お父さんとお母さんのいる令和の時代に戻れなくなっちゃったの!」

顔を横に向けたまま声をあげた。


「え?」

「コロナで大変な令和より、大正時代の方角が安全だ。て、叔父サンチョン、茶化さないで私の話しちゃんと聞いて。」


「ホントにホントに帰れないと思ったの。」

体も顔に合わせ横向きになる。

私は、ベットの上に寝ていたようだ。

「でも、叔父サンチョンに逢えて、これで家に帰れると思ったの。」

「よかった。叔父サンチョンに逢えたのが夢じゃなくって。」

そう言うと本当にほっとした。

これで、家に帰れる。

お父さんとお母さんが待っている家に帰れる。

気持ちが走る。

叔父サンチョン、どうやって令和の時代に戻るの?」

私は、上半身を起こして叔父サンチョンを見据えた。


「え?」

叔父サンチョン、聞こえない、もう少し大きな声で話して。」


「え!」

「もう、帰って来てる。て、」

「ここ、家なの?」

叔父サンチョンの意外な返答に辺りを見回す。

見慣れた岩で、できた天井が天井にあった。

見慣れた岩で、できた壁が、壁にあった。

ここは…

叔父サンチョン!ここは、地下の牢屋?」

叔父サンチョンが、「そう。」と答えた。

直ぐに「お父さんとお母さんは?」と私は、聞いた。

「台所で朝ごはんの支度中。」と叔父サンチョンが答えたと同時に私は、岩で、できたベットから飛び出し住居区目指し走り出す。

やった。

やった。

お父さんとお母さんに逢える。

やっと、お父さんとお母さんに逢える。

気付かないうちに何回か令和に戻っていたが、逢えるのは、叔父サンチョンばかりだった。

お父さんとお母さんに逢うの本当に久々だね。

あれ?何日間逢っていなかった?

あれ?最後に逢ったのは…

1ヶ月前かな?

違う、もっと日にちが、経ってる?

3ヶ月、6ヶ月?

…1年経ってる?


あれ?まだ私は、廊下を走っている。

なんかスピードも遅くない?

腕を大きく振ってスピードをあげ…

あれ?私の右手がないよ。

腕を振った感覚がなかったので右手を見たら白い煙に右腕が変わった。

え?

左手を見る。

左腕も白い煙となって、ゆらゆらと流れて行く。

え、え、え、どう言う事?


「お前の等価の代償は、何だ?」

男の人の声が聴こえた。


私の等価の代償は…


足元に視線を落とす…走っている私の足が白い煙に代わりだす。


私が差し出した等価の代償て、なんだっけ?

私が望んだのかな力を?

何のために?

「帰るために。」

私の声が答えた。

私ではない、私の声が。

私は、白い煙になり消えていく。


「はっ!」

息を吹き返した。

勢いよく上半身が跳ね起きた。


此処、此処は何処?

私は、どうなったの?


波木ハキ様。」


誰かが私に抱きついてきた。

世炅セギョンだ。

抱きついてワンワン泣いている。

世炅セギョン、泣かないで。」

そう言って、私に抱きついている世炅セギョンの頭を撫でる。

世炅セギョンは、顔を上げて私を見た。

「よかった。」

「本当によかった。」

「「波木ハキ様、いきなり崩れ倒れそのまま動かなくなっちゃったから。」

「死んじゃうかと思った。」

私は、意識が飛んでいた?

此処は、安奈アンナさんの部屋の私のベットの上だ。

だとしたら私は、この家から1歩も出ていない?

あれは、夢だった?

胸の辺りから視線を感じる。

自分の視線を下げると抱きついている世炅セギョンが上目遣いで私の様子を伺っている。

「ホント、世炅セギョンは、可愛いね。」

世炅セギョンを引き上げ抱き寄せる。

「ありがとう世炅セギョン。」

世炅セギョンを抱き締めていると何故か落ち着く。先程までは、正直、お父さんとお母さんにやっと逢える喜びとまさかまた逢えなかったらどうしようと言う不安な気持ちでいっぱいだった。

恐怖感みたいなドキドキがずっと続いていた。

叔父サンチョンに会えて嬉しかった。

これで令和に戻れると思った。

早くお父さんとお母さんに逢いたいと本当に思っていた。

でも、でも、世炅セギョンを抱き締めているとすごい安心感がある。

このままずっと抱き締めていたい。

二度と離れたくないと思う。

あんなに逢いたかったお父さんやお母さんに対する気持ちが薄くなっていく。

さっきのは、夢?

いや、多分現実だと思う。

叔父サンチョンが私に話ながらテレビを見ていた。

テレビには、コロノウイルスの第6波のテロップと新しい変異株の名前が映っていた。

夢であそこまで鮮明に覚えている事はない。

ついさっき見たから思い出せる記憶だ。

だとすると私の意識だけが本当に飛んで行ったのかない?

身体が白い煙で消えてしまったのは、此処にいる私の身体が覚醒しようとして、意識の私を呼び戻したのだろうか?

なんとなく自分の推論に納得する。

では、あの男の人の声は、なんだったんだろう?

私の無意識下で、もしも私なら悪魔デーモンにどんな力を求めるか、求めた力に価する物は、何か考えてしまっていたのかな?


「お、「波木ハキは、目覚めたか。」

安奈アンナさんが扉を開け部屋に入ってきた。

ジンが、たまには外でご飯食べようと言ってるけど「波木ハキ大丈夫か?」


「え!外でごはん。」

世炅セギョンが私から離れ、一躍、安奈アンナの言葉に反応した。

世炅セギョンは、私を見つめている。


私は「行く。」と返事をした。

外でご飯か、テンション上がるね。


「じゃー、すぐに準備して出てこいよ。」

安奈アンナは、そう言って部屋をでた。


「ごはん♪︎ごはん♪︎波木ハキ様、何が食べれるのかな?早く行こ。」

嬉しそうにはしゃぐ世炅セギョン

その姿が微笑ましい。

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