第18話 写真
鬼堂に着いた。
「ここが、
「ここは、
「…………」
私の言葉を
とりあえず、アンナさんの部屋に向かう。
部屋に入ってすぐにアンナさんが言う。
「
「飲みましょう。」
「私が淹れてきますね。」
私が部屋から出ようとすると
「
此方を見ているアンナさんが気になるようだ。
「その前にその子に服を着せてあげないとな。」
アンナさんが
「あ…」
温泉のときも私が箒草で洋服を創ったのだ。
「私の服でサイズは、合いそうだけど、私の服て…」
夢の中で令和に戻ったり、
私の私物て、どれだ?
「
アンナさんが
次にアンナさんを見た。
しばらくアンナさんを見ている。
アンナさんの洋服を観察しているようだ。
そして私の服を見だした。
じーーーーっと、私が着ている、柳寛順チョゴリを見ている。
「
「
アンナさんの言葉に素直に返答した
「この服は、これだけだし、この服は、私のじゃないし…アンナさんの服だし…」
自分が着ている柳寛順チョゴリを見ながら誰にとなく言った。
この服は、質屋でアンナさんがお金を出して買った服だ。
「
「
「え!よろしいのですか?」
「ああ」
ぶっきらぼうに返事をするアンナさん。
「あ、
アンナさんがカバンから風呂敷に包んだ私の服を渡した。
私は、受け取り振り返り
「よし、
「はい。」
自分の服に着替える。
その間、
着替えが終わった。
さて、
「あ!」
私は、一言、声をあげた。
「アンナさん、着なくなったパンツとブラて、ありますか?」
「ん?」
「女性モノの下着のことか?」
「乳バンドと半股引、シュミーズでいいのか?」
「それともズロースがいいか?」
アンナさんの言葉に戸惑った。
大正時代は、洋装下着が出てきた時代だったけ?
まだ半数以上が都腰巻とかの時代かなぁ…
私がどう答えていいか考えているとアンナさんは、椅子から立ち上がり
「んー、私がサイズが合わなくなった下着…合うかな。」
そう言って洋服タンスに向かうアンナさん。
洋服タンスから何枚かの下着を持ってきて
アンナさんが
大正時代は、ちちバンドか。
「お、
「昔の私の乳バンドがピッタリだ。」
「わりと値が張ったから捨てずに持っていたが、再利用できて嬉しいぞ。」
アンナさんの言葉にはにかむ
「ばんざーいして。」言われた通りばんざーいをしてシュミーズを着せてもらう
「次は、半股引ね。」
「んー、ズロースのほうがいいか。」
左右の手にそれぞれ違う下着を持つアンナさん。
それを見てアンナさんの右手を指差す
「
そう言って
それから私が脱いだ柳寛順チョゴリを着させた。
「どうだ
アンナさんが
「
「なんか、K-POPアイドル見たい。」
「アイドルは、旧正月に皆、韓服で着飾るけど、
「一緒に写メ撮りたいな。」
私は、指でフレームを作りその中に
私の言葉に
「もしかして、
きょとんとしていたアンナさんが私のポージングで写真を連想したみたい。
アンナさんの言葉に首を縦にふる。
「写真は、高いぞ。」
アンナさんが言った。
「え、、」
大正時代て、まだカメラが普及していないのね。
「金持ちのステータスだからな。写真は。」
そんなに高いのか…
「
どれだけて…
相場がわかりませんよアンナさん。
試しに聞いてみる。
「例えば、チョコレート1箱?」
そう言ってチョコレートボルトを1つ見せる。
「1箱か…」
1箱だと無理なのね。
あとチョコレートボルトいくつ残ってたけ…
あ、でも食費は、これから2人分になる。
写真は、諦めよう。
「行ってみるか。」
考えて込んでいたアンナさんが突然言った。
足早に扉に向かうアンナさん。
「
アンナさんに言われて訳がわからず
鬼堂を出て少し歩いたところに1階がガラス張りの建物が現れた。
ショーウィンドウかなぁ?
ガラス張りの中を覗き込む。
大小様々な額縁に写真が納められ飾れている。
子供の写真もあれば、おじいさんの写真もある。
ひときわ目を引くのは、中央の大きな額縁に納められている女性の写真だ。
大正時代でもお洒落なワンピースを着ている女性の全身の写真だ。
Popteenのレトロ特集の切り抜きの様だ。
この女性…モデルさんかなぁ。
綺麗だな。
「その写真、気に入ったのか?」
アンナさんがガラスに張り付いている私と
「私も気に入っている。」
「撮るのに時間は、かかったけどな。」
ん?
「アンナさんですよね。」
えーーーーーーー!
「そうだ。」
本当に!
「綺麗です。」
「だろ。」
アンナさん…否定しないのね。
「入るぞ。」
店の看板には、小西 明治店と書いてあった。
中に入ると1人の男性がいる。
カウンターに立ちながら道具の清掃をしている。
「いらっしゃいませ。」
男性が視線を上げる。
「おや、おや、これは、何のようかな?」
アンナさんを確認して、その後ろにいる私と
アンナさんは、カウンターの男性の横に並ぶと小声で何かを話し出した。
男の人がアンナさんに言葉を返す。
「
私は、カバンからチョコレートボルトを出しチョコレートを1粒取り出しアンナさんに渡す。
アンナは、何も言わずそれを男の人に渡した。
男の人は、チョコレートを確認して食べた。
「旨い!」
いきなり男の人が大声で言った。
男の人は、自分が発した声が余りにも大きかったので自分の手で自分の口を塞いだ。
でも、すぐに手を放し親指を立てて笑顔を見せた。
「
「3人で写真が撮れるぞ。」
「本当!」
喜ぶ私の隣で訳がわからない様子の
「チョコレートを1箱だせ。」
アンナさんに言われてチョコレートボルトを1つ渡す。
それを男の人が受け取る。
早速撮影のようだ。
20秒…
大正時代は、写真を撮るのにカメラの前に20秒間静止しないといけないのね。
笑顔で20秒は、キツいよね…
「20秒間、石になればいい。」
「自分が好きな顔で。」
アンナさんが出来なさそうなアドバイスをする。
私とアンナさんは、
「撮影始めますよ。」
「椅子に座ってるお嬢さん、もう少し顎を引いて。」
「はい、OK.」
「後ろの小さいお嬢さん、背筋を真っ直ぐピンと張って。」
「はい、OK.」
「では、撮影します。3、2、1、はい。」
1、2、3、4、5…姿勢を維持したまま頭の中で20秒数える。
無表情になってるよね…私の顔。
…多分。
「はい。終了です。」
「ふぅーーーー、疲れた。」
アンナさんと
2人ともいつもと変わらない。
え、、私だけ緊張してたのかな?
疲れたよ。
「出来上がりしだいお届けしますよ。」
男の人が言った。
「わるいな。頼む。」
「さぁ、帰ろう。」
アンナさんに言われて私も
「ふっー。」
珈琲を飲んで一息ついているアンナさん。
アンナさんの部屋に戻って来て今回の報告会になっている。
「で、今回の黒いお茶会の主犯は、
「結界は、自分で解いたのか?」
アンナさんが
「いえ、私が人の姿になった時に効力が消えたと思います。」
「自分で解らないのか?」
「人の姿になった時、全ての感覚が代わりました。特殊能力は、その時に使えなくなったと思います。」
「なるほど。」
何かを考え込むアンナさん。
「
すごい…鋭い質問だ。
私も解らない…
て、
私は、魔女だったのかなぁ…
え…
じゃー、私は、
「私は、太陽神に仕える者です。」
不意に
「太陽神…」
「神側の者だと思っていたが、太陽神となると我々よりも位が上の者と言うことか。」
アンナさんが
てか、アンナさん…
でも、太陽の神様とは…
「太陽神?」
思わず考えていた言葉が出てしまった。
アンナさんが私を見た。
そして、話だした。
「太陽神は、天空の神と大地の神を生み出した神だ。」
「我等、
「
「しかし、我等の神殿も襲撃にあった。」
「我等、
「
えーと、話が飛躍し過ぎて、本当に夢物語だよ。
あ…
でも、何で
「アンナさん、何で
アンナさんなら何か知っているかもしれない。
「それは、神の使者とバレないようにだろ。」
バレたらいけないの?
バレるって、誰に?
「私と
「
「元の名は、
あ…
確かに初めてインナさんを見た時に
え…アシュが
と言うこは、アンナさんも人間じゃないの?
アンナさんを見つめる。
どこから見ても普通の人間だよね。
「ところで、
アンナさんの質問に反応する。
あ!
そうだ。
「これですか?」
そう言うと
その右目を、見て
「その目は、
アンナさんの質問にきょとんとする
。
私は、自分の肩掛けカバンの中を確認する。
「ない。」
ムネとの思いでの品、金の針が沢山入った水晶玉がない…
私は、アンナさんと
「私が、
「そして、気が付いたら人の形になっており、右目に特殊な力を感じました。」
「
私の言葉にビックリする
「
そう言って右目に指を差し込もうとする
「駄目、駄目、駄目。」
「でも、これは…」
「これは、命令です。」
「はい。」
「その目に、特殊な力が宿っているのか?」
アンナさんが質問をする。
「私も、よく解らないのですが…でも、以前のように結界を張ったり、高速移動等出来そうです。」
「高速移動?」
私の聞きたいことをアンナさんが質問した。
「これです。」
そう言うと目の前から
その動きがしだいに速くなり部屋の4隅と中央に5人の
「そこか。」
そう言ってアンナさんが中央の
「流石です。」
投げられたサイン剣を受け止め
「残像…高速移動で5人に見える目の錯覚か。」
「はい。」
笑顔で答える
「このサイン剣は、アンナさんのですか?」
「そうだが、今は、使えない。」
悲しそうな顔でアンナさんは、言った。
「ちょっと、見てもいいですか?」
「何か、わかるのか?」
アンナさんが身体を乗り出して詰め寄る。
「見てみます。」
「大地の剣ですね。」
アンナさんは、
「使えなくなった?」
「
「えええええ?」
アンナさんの告白に驚いた。
私が使った後、使えなくなったて、私…何かしでかした?
「では、
そう言って
えーと、話が急で解らない。
「帰せばいいの?」
「はい。そして、それをアンナさんは、両手で受け取ってください。」
私は、
「アンナさん、はい。」
「ありがとう。」
訳がわからないがアンナさんは、お礼を言って両手でサイン剣を受け取った。
受け取った瞬間、鞘に蒼白い光が走った。
それを見て
「では、アンナさん、サイン剣を鞘から抜いて下さい。」
でも、サイン剣を鞘から抜いてみている。
鞘の鯉口辺りから蒼白い光が漏れる。
その蒼白い光に包まれてブレイドが姿を現す。
鞘から抜き出したブレイドを見て驚く。
蒼白い光にブレイドが包まれている。
ブレイドに刻まれた文字が真っ赤に燃えている。
文字から炎が立ち上がり蒼白い光を呑み込んでいく。
ブレイドは、外側から紅、赤、オレンジ、黄金とグラデーションの炎を纏っている。
「これは…」
アンナさんが、サイン剣の代わった姿に唖然とした。
「きゃーーーーーーぁ!」
アンナさんが突然奇声を上げ
「
「この未知の力が湧き出る剣は、なんだ。」
すごい嬉しそうな顔のアンナさん。
子供が欲しい物をサプライズでプレゼントされたときの様だ。
「ありがとう。ありがとう。」
「また、大地の剣が使える。それも私が感じたことのない力を秘めている。」
アンナさん、目をうるうるさせてる。
本当に嬉しいのね。
「
「お礼に何でも作ってやるぞ。」
また
え!いいなぁ…
アンナさんの料理は、何でも美味しい。
「いえ、いえ、私は、何もしていません。」
「今、この大地の剣が纏っている力は、太陽神の力、
「えっ!」
小さく驚くアンナさん。
そして、大きく驚く私。
「えええーーーーー!」
「なので、アンナさん剣を持ったまま抱きつかれると熱いです。剣の
「ごめん、ごめん、でも、この炎、見た目より全然熱くないぞ。」
そう言ってブレイド部分を触るアンナさん。
「いえ、それは、その剣を先程、
「主は、剣を操る者、ゆえに剣の力から主は、守られているだけです。」
「私も太陽神の使いですが、
アンナさんの顔が真顔になった。
剣を持ったまま両手を上げて
私もつられて後退りした。
"クッス クッス"
「こんにちは。」
隣の客室から声が聞こえた。
「来たか。」
アンナさんがそう言って剣を鞘に納めた。
「私がみてくるから待ってろ。」
アンナさんは、楽しそうな顔をして隣の客室に続く扉に消えた。
サイン剣が目に入る。
「これ、私がまた触ったら変になっちゃうの?」
サイン剣を指差しながら
「大丈夫ですよ。」
赤い炎が先程より大きく勢いよく燃えだす。
「わわわ、ええええ、ああああ、」
「
「
「
…頭の中に大地を切り裂く黄金の大剣の映像が生まれた。
大地よりマグマを引き寄せてブレイドに纏わせ全てのモノを一瞬で消し去る大剣。
なんだろうこのイメージは…
「何事だ!」
アンナさんの声に我に返る。
目を開けると目の前にマグマを纏った剣がある。
いや、ブレイド部分が、大きくなっている…大剣だ。
全てのモノを一瞬で消し去った大剣…
私は、大剣から手を離した。
「大丈夫か?」
「ん…」
目を開ける…
ここは…
居間?
テレビの映像が目に入った。
"コロナウイルス拡大…"
"第5波、政府は緊急法改正に入る。"
"日本のロックダウンは、いつ?"
あれ?
第5波?第1波じゃなかったけ?
法改正?ロックダウン?
え…
あれ?
さっきの声は、お父さん?
椅子から立ち上がりお父さんを呼ぶ。
「お父さん?」
「お父さん?」
「お父さん…」
足が覚束無い…
視界がボヤける…
「大丈夫か?」
あれ?
お父さんの声じゃない。
目を開ける。
ぼやける視界に私の顔を覗き込む
ここは…
「よかった。気が付いたか。」
あれは、お父さんの声だった。
コロナウイルスをニュースで扱っていたと言うことは、令和だよね。
それとも夢?
今の短い時間の出来事を考えていると、不安そうに
「お怪我は、ありませんか?」
怪我?
言われてみると頭が…
「頭が痛い…」
なんだ。
このズキズキした頭の痛みは。
「痛い。」
涙が出てきた。
「
「はい。」
「本当だ。タンコブがある。」
「
早い。
「あの剣は、なんだ?」
「えーと…」
そうだサイン剣をいじっていたのだ。
令和で神殿のサイン剣を確認してるときに大正時代に戻って来た。
今もサイン剣を確認していた。
そして、一瞬だったが令和に戻った。
でも、令和は、私が大正時代に戻る前の時間では、なかった。時間が進んでいた。
そして、大正時代にまた戻ったが、此方は、時間軸が継続されている。
なぜだろう…
私が黙り込んでいたので
「あの剣は、
「大地の始まりの力?」
「時の太陽神が大地を生成され、その後、大地は、マグマと海水が交わり生まれ出されました。マグマを操るのは、火山の女神です。海水を操るのは、水の女神です。因みに2人は、姉妹です。」
「火山の女神の力か。私にもその力は、使えるのか?」
「この大地の剣の主は、今は、
「なるほど。理解した。」
そう言うと
確か、
大きい額縁ぽいね。
なんだろう?
「写真ができたぞ。」
「本当ですか?」
「なかなかの出来映えだぞ。」
大きいセピア色の写真。
写真の中の
2人ともすごく美人に見える。
写真の中の私は、今にも泣き出しそうな感じだ。
セピア色でも目がうるうるしているのがわかる。
「この子犬みたいな
え、え、え、なんであの状況で2人とも笑顔なの…
「お母さん、2人のお姉さんは、笑顔なのに、このお姉さんは、目をうるうるさせてるよ。どうしたのかな?」
頭の中で誰が喋った。
子供の声…
遠い過去の記憶。
私は、セピア色の写真を見て不思議な世界だなと思った。
こんな色の世界もあるんだなと。
でも、写真に写っているお姉さん達は、皆、綺麗だった。
テレビに出てるお姉さん達だと思った。
2人の笑顔のお姉さんは、本当に綺麗だった。
でも、私は、この目をうるうるさせたお姉さんに惹かれた。
不安げで可愛らしいお姉さんだ。
私は…
子供のときにこの写真を見ている。
お母さんと…
でも、私が見た写真は、こんなに大きくなかった。
L判かな…自分の手でL判位の大きさをなんとなく作ってみる。
もう少し小さかったからDSC判かな?
でも、見ていたのは、写真のアルバム?
それとも本かな?
記憶が曖昧だ。
でも、子供の頃にこの写真を見たのは、間違えないと思う。
なんとも言えない感情が全身を包み込んだ。
なんだろう…この感覚…
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