第4話

「ん?」


「あはは。すごいことになってる」


「社長おはようございます。よく寝れたすか?」


「よく寝れたす」


「あ、紅ちゃんまだ寝てるのか」


「社長すごい顔」


「顔?」


「まあいいや。そのままで」


「え、すごい気になる。どうなってるの、僕の顔」


「まあまあ」


「この紅ちゃんについて喋ってくださいよ」


「まずは馴れ初めからね」

「まず馴れ初めからだな」


「ふたりとも、ほんとに、仲良いね。喋るタイミングも息ぴったり」


「社長もついさっきまで女の子と寝てたじゃないすか」


「あそうか。僕もか」


「いいから、馴れ初め」


「ああはい。馴れ初めね。僕が自販機で飲み物を買おうとしたら、おごってくれたの。で、それ以来の付き合いです」


「それだけ?」


「それだけ」


「もっと詳しく」


「ええとねえ、彼女は行動変容性、なんだっけ?」


「行動変容性未来変更能力」


「そうそれ。それを持ってて、いままで友達や恋人がね、いなかったんだって。だから友達でも恋人でもなるよって」


「へえ」


「なんか明日が来たら忘れちゃうから、って言われたから、エナジードリンクがぶ飲みして、徹夜しました」


「それで眠かったのね」


「起きてても覚えてるけどね。なんか、振れ幅が大きいと云々、って言ってた」


「云々の部分を詳しく」


「与える影響が大きければ引き起こしたトリガーである彼女が忘れ去られるし、トリガーにならなければ誰の目にも映らない、みたいな」


「社長はどうやったんすか」


「どうやったもなにも、彼女のことを普通だな、普通の人なんだなと思っただけだけど」


「社長が一番普通じゃない」


「おれは寝ないからいいとして、なんでメイクアップマンは覚えてるんすか?」


「わが名はメイクアップマン。メイクをキメキメにする者」


「それなんだけどさ、タイミングじゃないかなと思って」


「タイミング?」


「寝ても起きてもいないタイミングで紅ちゃんを認識したから、今日でも明日でもなかった、みたいな」


「んな適当な」

「んな適当な」


「喋るタイミングも喋る言葉も適当なタイミングなんだよなあ」


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