それぞれの日々とネオン (たとえ明日が 2)

春嵐

第1話

 帰ろうと思ったのに、街のベンチでエナジードリンクをたくさん飲んで夜を明かした。


 そのまま、出社する。


「社長、おはようございます」


「おはよう、ゲーマくん」


 部下その1。若い男性。ショートスリーパー。夜勤中ずっとゲームしてるし、日中もゲームしてる。ゲーマーなので、ゲーマくん。


「社長。なんかつかれてます?」


「いやいや。ぜんぜん。ちょっとエナジードリンクを飲んだだけ」


「あれ、社長ってエナジードリンク飲む人だっけ」


「メイクアップさんは?」


「そこで転がって寝てると思いますけど」


「あ、ほんとだ」


「ぐぅぅ」


「いびきかいてるけど」


「ぐぉぉ」


 部下その2。女性。オフィス内にお布団を敷いて寝ている。どこから持ってきたんだその布団。メイクにめちゃくちゃ時間をかけて、顔をキメキメにするので、メイクアップさん。


 部下その1とその2は付き合っている。独特の雰囲気を持つ者同士、やっぱり惹かれあうものがあるのかもそれない。


「で、そのきれいな女性はどなたですか社長」


「ご紹介します。うちの新たなメンバー、ええと」


 彼女が本名を言おうとしたので、遮る。


「ここではニックネームが基本なので、ニックネーム付けましょ。ニックネーム」


「どういったかたなんですか?」


「それがね。すごいの。こうど、ええと、なんだっけ。行動変なんたら」


「行動変容性未来変更能力です」


「うわよくわかんないの来たな」


「それだと長いし、ええと、みんなの記憶から消えるから。消えるで、消えちゃんとか、どうかな?」


「却下」


「ぐごぉ」


「なんでよ」


「同じ名前のゲーム実況者いるんで。ややこしいっす」


「あか、って呼んでください」


「あか?」


「名前がこうで、あかなので。あかで」


「あかちゃんですけど、いいんすか?」


「あ、ぜんぜん関係ないけど、背中を優しく叩かれたわ俺さっき。あかちゃんを寝せるがごとく」


「いや、何いってるかわかんないす」


「じゃあ、決定で。よろしく。紅ちゃん」


「よろしくおねがいします。社長」


「ぐおっ」


「ゲーマくん、メイちゃん起こして」


 鼻と口が、塞がれた。


「んばあっ。しぬ」


「おはようメイクアップさん。こちら、新入りの紅ちゃん」


「紅です。よろしくおねがいします」


「あかちゃん産んだ覚えは、ないです、社長」


「いや知らんよ」


「ゲーマくん認知してね?」


「認知はしますけど、結婚が先じゃないんですか?」


「ねぼけてるなあ」


「むにゃあ」


「あ、また寝た」


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