どうも
知らぬことは多いと知っていたが、いざそれを眼前に突きつけられると、どうしようもなく惨めなものだ。足の長さは人によって異なるのだから、一歩も違うのだ。それを忘れてベクトルだけを見て、悩む姿は滑稽なものだろう。いや、無数に膨らんだ空っぽの時間の一部を切り取って、それに費やせば、いくらか差は縮まるのだろう。けれど、なぜ私はしない? ゼロはなにもないゆえ膨張するのにエネルギーを必要としないから、無限に私の脆い筒状の日々を埋め尽くすから? 暗がりの賢人が私の視界全てに取って代わって演説をしているから? いや、本当は知っているんだ。損切りだ。今以上の刻苦に会わぬように、そこそこの苦難の前で悩むふりをしているのだ。苦しみの中歩いていくことが勇気ならば、私は臆病者だ。
しかし、神は何を思ったか、この臆病者に長い首を与えた。首が長いと、しゃんと立たせておかないと肩がこる。しゃんとしていると、否が応でも遠くが見える。勇敢な者たちが今日も険しい山を登っている。途中で息絶えた者、満足して足を止めた者、痩せぎすの四肢を引っ張って駆けずり回る者。色んな人がいるが、彼らとの距離は誰よりも私が知っている。
そして、私の、角砂糖一つ分くらいの勇気が、そちらに向かえと叫んでいる。しかしコーヒー一杯分の恐怖心が足を止める。それらを怠惰な匙がぐるぐるとかき混ぜて出来上がった史上最悪のシュガーコーヒーとは私のこと。
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