流れ星が落ちる夜と
いよ
プロローグ
夢の記憶
「そろそろだよ。」
男の子が並んで歩く女の子に言った。
木々が生い茂る山道を進む二人の前に、突然コンクリートの四角い塊の地面が現れた。
その部分がちょうど山道からはみ出し、景色が晴れ、展望台のようになっている。
真下には急な斜面と街の風景が広がっていた。
「ここだよ。もうちょっとですっごくキレイになるからね。」
男の子は女の子にいった。
女の子は黙ったまま頷いた。
「風が吹いたら危ないから座っていよう?」
男の子はそう言って。二人はコンクリートの地面と空の境目からできるだけ遠くに座った。
少しして、空がオレンジ色に染まった。
途端に世界は表情を変える。
真下を走る車、学校や民家の影を色濃く落としながら。日はゆっくり傾いていく。
女の子の目は輝いていた。
夕日から遠い空は青のような藍色のような曖昧な色に染まり、オレンジとの境界で鮮やかな紫に溶けている。
気付けば女の子の小さな手は、男の子の手を握っていた。
男の子は少し戸惑った様子だったが、困ったように笑って、再びオレンジ色の世界を見つめた。
「おうまがときって言うんだって。おばあちゃんがいってたけどわかんない。でも、僕好きなんだよね。」
男の子がいった。
「私、たそがれどき…って教えてもらったよ。」
不意に女の子が口を開いた。
男の子は少し驚いた様子だった。
「たそがれどき…?よくわかんないなー。」
「時間が…ぼやけるんだって。おばけがでてくるって言ってた。」
「へー…そうなんだ。じゃあ早く帰らなきゃね。」
「うん。そうだね。」
女の子はそう言った後、自分が男の子の手を握っていることに気付いて、恥ずかしそうに手を引っ込めた。
男の子も少し恥ずかしそうに微笑み
「じゃあ、帰ろっか。」
と言った。
後ろから迫ってくる夜から逃れるように山を下り、ふたりは家の近くまで戻ってきた。
心配で家の外に出ていた女の子の母親に少し叱られた二人は素直に謝り、別れを告げた。
「またね。」
玄関の前で振り返った女の子に、男の子は幼い寂しさを感じた。
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