第5話 感謝

次の日、ガキは大人に小遣いをせびっていた。

いつも通りの光景。


「じゃあ明日、お小遣い渡すから。」


「えー!今日じゃないと欲しいもの買えないんだよ!」


「なんてやつなのそれ。」


「もんじろうのつやつや雷刀!」


「あー、なるほどね。じゃあ小遣い無しで私が買ってくるかい?」


「じゃあその分のお金持ってくる!」


「いいよ、まずは学校行ってきな。買ってくるからそのあとその分のお金くれればいいよ。」


「やったー!じゃあ行ってきまーす!」


だいぶまずい。お小遣いを渡すと思って

明日行動に出ようと思っていたのにタイミング悪く計画が崩れる。


今日の午前中しか取るしかない。


大人はそれぞれの仕事をしていて廊下の行き来はあまりなくガキの部屋には入れるが明日までお金をかくすことはできないだろう。


多分すぐに俺らのせいにされてしまう。


とったら人目を盗んでこの神社を出るしかない。



大人があまり動きがないことをこっそり確認して

ガキの部屋にはいる。

いつも財布を入れている場所からお金を抜き取る。

2万円。

どのくらい遠くに行けるだろうか。


急いで自分たちの部屋に戻り霞美に伝える。


「でも明日じゃなかったっけ?」


『ごめんなさい、色々あって今日出ることになりました。』


「そっかぁ、明日まで居たかったけどしょうがないよね。お墓詣りしてもいい?」


ああ、そうか。明日は旦那様の命日だった。

親切にしてくれた人の命日を忘れてしまうなんて俺ってひどいやつだな。


『いいよ。急いで準備していこう。』


「わかった!」


霞美は思入れのあるものからどんどんリュックに入れて服は最小限。


「出来たから外でよう。」


リュックを霞美が背負う。

まあまあ重い。


よし出よう。靴を履き外に出る。

ラッキーなことに外には誰も居なくてすんなりと出れた。


「育ててくれてありがとうございました。」


お礼を言いこの神社から一人だけで初めて外に出た。


まずはお墓詣り。

一年前の記憶をたどって墓に向かった。

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