霞美と俺
環流 虹向
第1話 霞美
空から大粒の雨が降り注ぐ真夜中。
俺は生まれた。
俺が愛している霞美(かすみ)を守るために。
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神社の大きいかしの木の下に俺たちは捨てられた。
母親と思われる人は泣いていて、なにか言葉を発していたが傘に打たれる雨音で何も聞こえなかった。
そして俺たちが雨に濡れないように傘を置いていき去っていった。
この日は梅雨の時期ど真ん中でずっと雨音が聞こえる。
霞美は静かに寝ている。
霞美が傷つくことは見なくていい。
朝日が差し込んできたと同時に霞美が起きたようで声をあげる。
それに気づいたのか人が来る足音が聞こえる。
神社の人間なのだろうか。
傘をどかし俺たちをみると急いで家に入れてくれた。
家にはたくさん人がいるようで俺たちの周りに集まってきた。
みんな俺たちのためにごはんや服を用意してくれた。
霞美は安心したようでまた寝てしまった。
俺もひとまず安心して寝床を確保できたので寝ることにした。
月日は流れ俺たちは7歳になった。
俺は霞美を守るために攻撃的な言葉を使うようになった。
その反面、霞美はおっとりしていて何を言われても言い返さない物静かな子になっていた。
まあ、俺がいつも一緒にいるから大丈夫。
「おい、お前客人に出す菓子食べただろ。」
濡れ衣だ。霞美は食べていない。
「おい!答えたらどうなんだ!」
大人が霞美に対して手を上げようとしている。
俺が出る出番だ。
「やってねぇよ。」
「はあ?食べている所見ている人もいるんだよ。」
「霞美はやってねぇーって言ってんだろ!」
「なんだその口の利き方は!お仕置きだ!」
大人の大きい手のひらが霞美の顔をはたこうとしている。
「やめろ!」
俺はそいつの腹に思い切り飛び込み、体制を崩させた。
痛がる大人を無視して走って逃げた。
俺たちは、いつもの物置に隠れた。
いつも優しくしてくれた旦那様が死んでしまってから霞美はいじめられている。
掃除、洗濯など霞美が出来ることはなんだってやっているのに。
菓子だって、黙って盗ったりしない。
旦那様の息子、あのガキが食ったんだ。
いつもあいつが霞美のせいにする。
旦那様が霞美に優しくするといつも怒っていた。
あのガキが跡取り息子だから周りの大人はあいつ第一で行動してくる。
だから今日も殴られそうになった。
こんなところにいたら霞美は大人になるまで生きられるのだろうか。
旦那様にはとても感謝しているがここにはもう居場所がない。
新しい場所を探そう。
そう決めた。
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