神様の世界

亞屍(あかばね)

1. “窃盗”の神様

 おれは、せっとうかみである。

 せっとうをするのはひとだけではない。カッコウのたくらん、ラフレシアのせい、そういったものもせっとうなのだ。そのもくてききるためであってもせっとうというのはそういうことであり、おれがそれをつかさどっているのである。

 ひかりかみでも、みずかみでも、あるいはあいかみでもない。せっとうかみなのだ。

 おれつみしきさいなまれた。25ねんかんなやまされてきた。みずかいのちとうと思ったこともいちではない。

 ところが、あるときおもったのだ。おれせっとうかみだ。きているかぎせっとうがなくなることはない。それなら、おれしんせっとうをしてなにわるいというのだ。にんりょくあまみつう。それでゆたかになれるのなら、それですくわれるなら、せっとうみちえらぶのはではないはずだ。




 せっとうをしはじめて、おれいた。にんのものを“す”ことができるのだ。

 しょてんならぶんぼん、フードコートのとうさらちいさいものからすこしずつしていった。そのざいあくかんがたまらなくここい。そしてしたものは、そのばんさいまくらまわりにがっていくのだ。

 しかし、そのかいらくながくはつづかなくなった。かんじょううばえてしまえたのだ。たとえせっとうされたといたとて、がいしゃいかりやかなしみをぬすんでしまえばなにこわくない、そうおもうようになってしまった。

 しばらくして、おれざいあくかんうすくなり、せっとうきたおれけんたいかんちていた。ちん6まん2000えんてんじょうのどおくへとえていくアルコール。1しゅうかんんだかんビールのかずは30をえていたがする。コンビニのバイトのせいねんかなしそうなるのもなっとくだ。




 おれすいえんかされた。さけのせいだろうか。ぶんすいえんくすこともかんがえたが、どうやらぶんしょひんすことはできないようだ。せっとうというのは、からなにかをうばこうことであり、ぶんのものをぬすむのはせっとうではないからなのかもしれない。

 しょせんたのしみもなくなったじんせいだ。べついまさらびょうかいふくためなにかをするつもりはない。

 びょういんしつくうかんきらいではない。ひといのちかねかいしてやりりされるしょ。ここでひとあやめてもではないだろうが、そんなつまらないことをしてもがない。




 ひとの、ぜつぼうする、かおたい。




 つるおとこがいた。それはもう、ていねいに。

せんづるですか。」

「ええ、これがさいなんです。たいせつひとがもうすぐぬんです。」

「そのひとそばに、いなくてもいいんですか。」

 おとこさびしそうに、こまったようにうなずく。

「もしも。もしもわたししにがみで、あなたのたいせつひとすくえるとったら……どうしますか。」

 おとこなにこたえない。はっとしたようなかおおれている。

「あなたのおく……たいせつひとかんするおくは、すべえます。あなたはここにいるかもわすれるでしょう。それでもあなたのたいせつひとすくいたいですか?」

「……はい。」

 そのへんいて、おれうれしくなった。うれしくてうれしくてたまらなくなった。

 これほどじゅんぼくにんげんがいたというのか。ひとだましておくぬすむ。こんなにもこころたせるせっとうが、おれにできるなんて。わらいをこらえるのにひっだった。

 おれおとこおくぬすんだ。おとこかおずに、おれびょういんた。やった、やってやった。ひさびさじんせいたのしいとおもえた。

「ありがとう――。」

 おれなかに、かんじょうめられたこえがした。




 すぐに、ちがっていたことにがついた。かいしんしたとか、そういうくだらないゆうではない。

 おとこおくぬすんだよる胡座あぐらをかいてさけんでいると、あしなまぬるえきたいれた。みずれでもしたのかとおもゆかを見ると、とうめいわずかにねんせいのあるえきたい

 いやかんがしたが、いつのにかぶんあせをかいたのだろうとることにして、そのよこになった。




「――のアパートでできした25さいだんせい――にたされたえきたいたいりょうるいえきられ――」

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