その道具で宇宙船が直ったら、星に帰れるの?
宇宙人との生活が始まって四日、彼は今日も小さな工具で修復を試みている。
「それ、どれくらいで直るの?」
「はっきりとは分からない。君には迷惑をかけないように、出来るだけすぐに済ませるように努力しているところだ」
彼は修理をしつつも、いつも僕と話をするようになった。一人暮らしで少し寂しい思いをしていたのだから、彼と話ができることは素直にうれしかった。
僕がこうして読書をしている間もずっと、彼はよく分からない図面を取り出しては頭を悩ましていた。
「君は本を読んでいることが多いな。好きなのか?」
「うーん、まあそうかな……」
特にすることもないから、というのが正確な答えであった。それを分かっていたかのように、彼は次の質問を投げかけてきた。
「学校には行かないのか?」
黙り込む僕に、「いや、そんなつもりはなかったんだ。すまない」と言って彼は謝った。この宇宙人は何でもすぐに覚えてしまうらしく、ここ数日の僕との会話とそこにある本棚から得た知識でこの世界の在り方を理解したようだ。当然、僕ぐらいの年齢の子供はみな学校に通っていることも理解したのだろう。
「人生は自分のものなんだから、個人の好きなようにやればいい。君が読書をしていたいと思うのなら、その行動は何ら間違っていない」
「決められていることなんだ。それなのに、僕はルールを破ってずっと家にいる。僕はダメなやつだ」
彼は工具と図面をそっと床に置いて、僕の方に向き直った。
「……君は勘違いしている。ルールとは人を幸せにするために存在するものだ。それなのに、当の君はルールに縛られて苦しんでいる。君が学校に行かないことで他の人が不幸になるなら話は別だが、そうではないだろう。ところで、本棚の横にあるのが君の机だろう?」
「うん」
「机の上には、おそらく学校で使うだろう教材が置かれて間もない状態だ。君が学校に行かなくなったのは、ワレがここに来る少し前だったのではないか?」
僕は何も言わなかった。
「無理に話す必要はない。ただ、君は最近起きたことが原因で休校しているように思っただけだ。それなら、それが解決したり緩和したりしたときに登校すればいい。無理をすることなんてないし、人生の中で少し休む期間は誰しもが必要なのだ」
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