第67話 二人のアーシュ  未来の時間 アルテイシア姫将軍

「いいか エルトニア・・

リアンの所に行くんだ 判ったな・・。」

優しい声でゆっくりと話しかけるアーシュ


「兄さまの元に・・?白の国・・僕の国へ帰れと・・


 ねえ!迎えに ちゃんと迎えに来てくれるの?」

黙ったまま・・エイルを見つめるアーシュ


「今はまだわからない・・でも、約束するから・・。」


エイルの涙をその指先でぬぐうと

顔を近づけ 口づけを交わす


「アーシュ・・アーシュラン」

「約束するよ」エイルに向かって 微笑むアーシュ


「必ず、待ってるから・・待ってるから・・」

何度も振り返り 庭の奥に消えていくエイル


「王・・

サラマンデイア様」 

声をかけるのは 長い黒髪を上に丸く結い上げた

女騎士・・

美しいメリハリのある身体をかっちりとした

銀色の鎧に包み込んだリュース公女

アルテシア姫


「結局、貴方も 先々代の王同様に・・私のおばあさまのように・・・

白の国の姫君を・・エルトニア姫を手放すのね


・・・可哀想なエイル


そして・・貴方・・。」


悲しげにつぶやくアルテシア姫


「私のおばあさまは

エイル同様、白の国からの人質で 先々代の黒の王と恋に落ちてたけど


でも、結局

白の国にも戻れずに、黒の貴族のリュース家に嫁いで・・」


「悲しいわ・・。」


「行きましょうか・・私の黒の王さま

リュース家は今も昔も 王家ともにあるわ」


「ああ・・」うなずく アーシュラン


ハッ!と気が付いて・・


「すまないアルテシア

リュース準将軍殿・・少し先で待っててくれないか?」


アルテシア姫が先にいった事を確認して


未来のアーシュは茂みに向かって声をかける


「そこにいるのは、知ってる

何せ、俺にとっては過去の出来事だからな」


くす・・と笑う

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