掃除

 みんなと住むようになってから、初めての週末。


「ふわ……」


 おれは大きなあくびをしながら、階段を降りていた。

 先程、携帯の時計を見ると朝の10時近くになっていた。今日は休日だから、遅く起きてもいいかな。まぁ、おれは毎日休みだから、関係ないんだけどね……


「おはようございます」


「あ、おはようございます」


 リビングを開けると、そこにはエプロン姿の美咲さんがいて、ニッコリと微笑みながら、挨拶を返してくれた。


 やべー、かんわいいぃ……破壊力抜群すぎだわ。

 しかも、エプロン姿とか……新妻ですかって感じなんだけど……って朝から何考えてんだよ。どうやら、これは見たところ、部屋の掃除中ってところかな。


「他のみんなはいないんですか?」


「はい。弓月は部活で葵はバイトに行きました」


「そうなんだ。あれ、サヤさんは?」


「サヤ姉さんは……」


 美咲さんは言いにくそうにしながら、チラッと天井を見た。それだけで何が言いたいのか、察することができた。


「なるほど。ということは美咲さん、一人で家事やってるの?大変じゃないですか?」


「まぁそうですね。でもいつものことなんで」


 美咲さんはそう言いながら、苦笑した。


「それじゃあ、何か手伝いますよ。何すればいいですか?」


「え、そんな。悪いですよ」


「でもこの家にお世話になってる以上、何もしないってのも変だと思うから」


 このままだと、完全なるニートになってしまうからな。それだけは避けたい。ちなみにニートというのは、家に篭って、働かず、勉学もせず、家事もしない人のことを指すらしい。


「そ、そうですか?それじゃあ、リビングに掃除機をかけてもらえれば助かります。あとそれが終わればトイレとお風呂掃除を……」


 美咲さんは遠慮がちにそう言ってきた。

 意外とがっつり頼まれて、おれは少しびっくりしたが、それぐらいの方が割に合うと思い、二つ返事をした後、早速掃除に取り掛かった。












♦︎













 そして、1時間後。


「ふぅ……」


 額の汗を拭いながら、リビングへと戻ってくる。

 頼まれた掃除は全部終わった。やっぱり綺麗なところを見ると気持ちがいいな。


「あ、おはよー」


 そこには寝巻き姿で髪の毛も所々ボサボサのサヤさんがソファに座って、くつろいでいた。

 なんか普段はしっかりとしてるイメージだから、ギャップがすごい……

 休日だから、ダラけてるのかな。


「掃除ありがとうね」


「いえ、お世話になってる以上、何かしたかったので」


「うーん、前から思ってたけど、言い方が堅苦しいのよねぇ。もっとこうラフにいかない?」


「そ、そうですか……?ラフに……」


「そうそう。まずは敬語やめましょうよ」


「いや、でも、サヤさんは年上だし……」


「そんなの関係なし!今から敬語使ったりしたら、罰金ね。万取るわよ、万」


「わ……かったよ」


 敬語を使いそうになり、おれはすんでのところで止める。万は取られたくないからな……


「うん。それでよし」


 サヤさんはどこか納得したような面持ちで台所へ向かい、コーヒーを淹れ始めた。

 ありがたいことにおれの分も淹れてくれていたので、二人揃ってコーヒーブレイクを味わうのだった。

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