花火大会
夏。
轟く蝉の声、滴る汗、目を引く二の腕、ちらりと見える脇。
夏である。
イベントも盛りだくさん。
海、肝試し、帰省、バーベキューなどなど。
でもやっぱりこれでしょう。
花火大会でしょう!!
『花火大会』
言わずと知れた夏の一大イベントであり、本当にわけのわからないほど人が集まる。
もちろんカップルや付き合う前の男女たちのデートの定番であり、告白しようとしたら、ちょうど花火の音と被ってしまい、聞こえないなんてもうただの夏の風物詩である。
浴衣の女性ってなんであんなに魅力が150倍くらいになるのだろうか。
現代科学でも解明できない大きな謎の一つである。
僕は今、沙耶を待っている。
そう、僕たちは今日、花火大会に行くのだ!
僕は沙耶教官に勉強のスパルタ指導を受けている最中だが、今日は休みの許可をいただいている。
そして、僕は現在、黒の浴衣を着ている。
沙耶がせっかくだからお互い浴衣を着てこようと提案してきたのである。
もちろん沙耶の浴衣姿を見たいので秒で了承した。
まあ、絶対にスーパーかわいいのはわかってるから、今日は動じることなく、めちゃくちゃ褒めて、沙耶を照れさせてやるか!
「貴志〜!おまたせ〜!待った?」
来たか!よし!平常心だ貴志!
かっこよくいくんだ!
僕は声のした方向を向く。
「全然待っ、て、な、い、、、」
ゆ、浴衣の破壊力はこれほどもまでに強大なのか!?
淡いピンク色の浴衣。
まとめている髪。
もちろんうなじ。
か、かかか、かわいすぎるだろ!!!!
「ん?どうしたの貴志?笑 固まっちゃって!笑 またあたしに見惚れてるの?笑笑」
「う、うん、ちょっ、ちょっとかわいすぎて。めちゃくちゃ似合ってます。」
「そ、そっか。えへへ。ありがと!貴志も似合ってるよ!」
沙耶が少し照れながら僕のことも褒めてくれる。
嗚呼、最高に幸せだ。
「あ、ありがとう!よし、じゃあ行こっか!」
僕は沙耶の手をしっかりと握る。
人も多いからね!
「うん!」
笑顔で沙耶も握り返してくれる。
嗚呼、この時よ永遠に。
僕らはゆっくりと出店を見ながら歩く。
「貴志は自分でちゃんと浴衣着れたの?笑」
正直、マジでわけわからんかったな浴衣。
お母さん様様です。
「ううん。全く着方わからなかったから、お母さんに手伝ってもらった。」
「やっぱり着れないと思った〜!笑 あたしは正月に着物も来たからもう自分で着れるよ!」
沙耶はやっぱりハイスペックだなぁ〜。
「沙耶すごいね!女子力高い!!」
「そんなことないって!というか、貴志知ってる?女性の浴衣って、ちょっと前までは下着履かずに着るのが普通だったらしいよ〜!笑笑」
な、なんだと!?
下着がない!?
つ、つつつ、つまり、ノーパンってこと!?
浴衣って、そんな破廉恥な服装だったのか!
けしからん!実にけしからん!!最高ではないか!!
ちょっと待て。
この話をしてくるということは、もしかして沙耶も今、履いてない?
僕の視線が沙耶の下の方へと向いてしまう。
「貴志笑笑 考えてることわかりやす!!笑笑 さ〜て、どっちでしょ〜??笑笑」
くそう!思考が完全にバレているだと!!
さすが沙耶ってことか!
よし、頭を整理しよう。
問題は単純だ。
沙耶が履いてるのか履いてないのか。
くそう、わからない!!
正解はどっちなんだ!?
「正解したら〜、貴志に、イ•イ•コ•ト、しちゃおっかなぁ〜!笑笑」
な、なにーーーー!!!!
イイコトってなんだ!?
イイコトってなんだ!?
沙耶は僕をからかってくるために結構大胆なことするからなぁ〜。
まさか履いてないのか!?
いや、でも冷静に考えたら履いてるよね。
いや、でも沙耶ならまさか。
よし、決めたぞ!
「よ、よし。き、決めた!さ、沙耶は、履いてない!!」
するとそれを聞いた沙耶が一気に吹き出す。
「貴志は期待を裏切らないなぁ〜!笑笑 今どき履いてないわけないじゃん!!笑笑 正解は履いてるだよ〜!笑 残念でした〜!笑」
くっそーーーー!!!!
これは完全にやられた。
僕がこういう時、願望のままに答えてしまう性格を完全に熟知している。
僕はものすごく落ち込む。
イイコトってなんなんだろう。
「じゃあ、イイコトは大学に受かったらしてあげる!」
な、なにーーーー!!!!
ワンモアチャンスだと!?
諦めていた僕に沙耶が希望の光を照らしてくれた!
これは気合入ったぞー!!!!
「僕は絶対に大学合格します!!」
「うんうん、その意気、その意気笑」
そんなことをしながら、僕たちは出店を回り、チョコバナナやわたがしなどを食べて満喫していた。
そろそろ花火が始まるので、良さそうな場所へと移動した。
そして、花火が始まる。
さまざまな色、形の花火。
正直、今までこういうところは陽キャの巣窟だと思って行ってなかったけど、花火ってこんなに綺麗なんだ。
僕はそんな綺麗な花火にかんどうしながら、ふと隣を見る。
「綺麗。」
そう呟きながら、花火を見上げる沙耶は、本当に何よりも、陳腐な言い方になってしまうが、今打ち上がっているどんな花火よりも綺麗だった。
僕は握っていた手を少し強めに握る。
花火の音が大きい中、その音にかき消されないよう、沙耶の耳元に口を近づけて言う。
「沙耶、大好きだよ。」
その瞬間、花火が開く。
その光に照らされた沙耶は、笑顔で、かつ、顔を赤く染めていた。
「あたしも、貴志のこと大好き!」
その声は花火の音にかき消されることなく、僕の耳にしっかり届いた。
高校生最後の夏。
こんなに幸せな夏があっていいのだろうか。
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