ハロウィン
秋。
それは人々が何かしらの欲に掻き立てられる季節。
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋などさまざまである。
そんな秋であるが、秋には必ず消化すべき重要なイベントが1つある。
今日は10月31日、つまりハロウィンである!
『ハロウィン』
仮装した若者どもが街を闊歩し、「トリックオアトリート」などと訳の分からないことほざくというキラキラとした陽キャ向けのイベントであり、クラスでみんなにお菓子を配っている心優しき女子からも存在を忘れられて貰えない筆者のような陰キャたちにとっては憎悪の対象である。
しかし、インスタでエチエチなコスプレをしたたくさんの若いおなごたちを見られるのは行幸である。もちろんそれを見るためだけに新しいアカウントを作っている。
ハロウィンは、僕のような陰キャにはこれまで全く関係のないイベントだった。
お気づきだろうか。
「だった」である。過去形である。
今の小森貴志は違うのである!
なぜなら、僕は、「彼女持ち」だから!!
今、僕は姫川さんの家へと向かっている。おっと間違えた。
今、僕は「沙耶」の家へと向かっている。
付き合ってから3ヶ月以上経つからね。さすがの僕も彼女のことは下の名前で呼んでるってわけさ。
未だにちょっと緊張するけどね。
さて、話を戻そう。
僕は今、沙耶の家へと向かっている。今日は土曜日で学校は休みである。
そして沙耶のほうからお呼びである。
まあ、十中八九ハロウィンであろう。
よし、シュミレーションでもしておくか。
沙耶に「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ〜!」って言われたらどうしよっかな〜!!
お菓子は一応準備してきたけど、わざと忘れたふりして、イタズラされるっていうのもめちゃくちゃありだな!
イタズラがエスカレートして、今日で大人の階段登っちゃったりしちゃったりして!きゃっ!
まさか、こ、コスプレもしてるんじゃないか?
ナース服、ミニスカポリス、巫女さん、チャイナドレス、いやあ〜迷っちゃうな〜!
どんなコスプレでも沙耶が着たら絶対やばいな!
鼻血を出す自信しかない!!
※お分かりの通り小森貴志はまだ童貞である。
そんなシュミレーションをしていたらもう沙耶の家に着いてしまった。
き、緊張する。
そういえば、沙耶のご両親は居るのだろうか?
やばい!も、もしかして、彼氏紹介イベントだったのか?
深呼吸だ、深呼吸。
紹介されたらなんて言えばいいんだっけ?
そうだ!「娘さんを僕にください」だ。
練習してからいこう。
「娘さんを僕にください娘さんを僕にください娘さんを僕にください」
よし!これで大丈夫だ!
緊張する。ここが勝負時だ貴志!がんばるんだ!
僕は手を震わしながらインターホンを押す。
廊下を小走りしている音が聞こえてくる。お義母さんかお義父さんだったらど、どうしよう?
娘さんを僕にください、これしかない!
ガチャ。扉が開く。
「む、むむむ娘さんを僕に」
「おかえりなさいませにゃ!ご主人様!」
ん?なんて?なんて言った?
緊張で下を向いていた僕は顔をあげる。
そこにはネコ耳メイドがいた。
ね、ねねね、ネコ耳メイドだとーーーーー!!!!
やばいやばいやばいやばい!!!!
シミュレーションの100億倍上にいってる!!
か、かわいすぎる!!
短めのスカートに圧倒的な神々しさを放つ絶対領域の太もも、し、尻尾までついてやがるぜ!そしてなんといってもネコ耳!!
に、似合いすぎる!!
「お〜い、ご主人様〜、大丈夫かにゃ〜?」
おっと、完璧に固まってしまっていたようだ。
「だ、大丈夫だよ!」
「ほんとかにゃ〜?笑笑 あたしに見惚れすぎだにゃ〜!笑笑」
やっぱりバレてる!でもかわいすぎるから仕方ないだろ!!なんなんだこのかわいい生き物は!!いくら見てもかわいすぎる!!語尾に、「にゃ」をつけるのも反則的にかわいい!!
「た、貴志、ほ、褒めすぎ」
沙耶が顔を赤くしている。も、もしかしてまたか。
「えっと、僕の心の声漏れてました?」
顔を赤らめた沙耶がこくりと頷く。
沙耶はそのまま顔を赤らめたまま俯いてしまっている。
へ、変な時間が流れている。
な、なんか話さなきゃ!
「えっと、沙耶はなんでそんな格好してるの?」
「今日ハロウィンだし、貴志を驚かせたくて。貴志が好きそうなの選んだ。」
沙耶、本当に僕にはもったいないくらいかわいくて最高の彼女だ!!!!
「ありがとう!沙耶大好き!!」
感動した僕は心の衝動のまま沙耶に抱きつく。
「ちょ、ちょっと貴志!」
沙耶がさらに茹でタコのように顔を真っ赤にする。
さすがに耐えきれなくなった沙耶が抜け出すまで3分ほどハグは続いた。
「もう!今日はあたしが貴志にイタズラしてからかう予定だったのに〜!」
無事に沙耶の家へと入った僕が出されたお茶を飲んでいると、沙耶が少し拗ねていた。
「ご、ごめん。で、でも沙耶がかわいすぎて。」
「むぅーーー!!」
沙耶がまた少し顔を赤くする。かわいい。
そういえば、ご両親は居るのだろうか?
「沙耶、今日は親御さんいないの?」
「今日は2人とも出かけてるよ〜!」
ふむふむ。2人とも出かけてるのか。
ふむふむ。ん?つ、つまり、2人っきりってこと?付き合ってる男女が家で2人っきりってこと?
な、なんだかめちゃくちゃ緊張してきたぞ!!僕は今日、ついに、あんなことやこんなことしちゃうのか!?
「貴志、どうしたの〜?笑笑 いきなりソワソワし始めたけど〜!笑笑 もしかしてエッチなこと考えてる〜?笑笑」
ば、バレるのが早い!!
「い、いや、そ、そそそそんなことないよ!!」
「ほんとかな〜??笑笑」
「ほ、ほんとだし!!」
「まあ、そーいうことにしてあげとこう!さて!ここであたしから貴志にプレゼント!ジャジャーン!手作りクッキーでーす!!」
めちゃくちゃ美味そうなクッキーが僕の前に出された。
さっきから香っていた美味しそうな匂いの正体はこれだったのか!
「あ、ありがとう!食べていい?」
「いいよ〜!」
僕は目の前のクッキーを一枚取り、口の中へと入れる。
な、なんだこの美味しすぎるクッキーは!!お店で買ったやつより美味いぞ!!
「おいしい!!」
「よかった〜!今日の朝からがんばって作ったんだ〜!」
沙耶が嬉しそうな表情をしている。
朝から作ってくれたのか。本当にありがたいな。
それにしてもこのクッキーおいしすぎるな!食べる手が止まらないぞ!
僕はあっという間に完食してしまった。
「さ〜て、貴志はお菓子持ってきてるのかな〜??笑笑 トリックオアトリート!!お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ〜!!」
き、来た!シュミレーション通りだ!ここはお菓子を出さずにイタズラを受けよう!
ネコ耳メイドさんからのイタズラなんて最高だ!!
「も、持ってないです。」
「ほんとかな〜??笑笑」
なんだ?沙耶がニヤニヤしている。も、もしかして僕がわざとイタズラを受けようとしているのがバレているのか?いや、そんなはずはない。お菓子はバックの中に隠してるし。あれ?バックがないぞ?
「じゃあこれはなにかな〜??笑笑」
沙耶がバックから僕が持ってきたカントリーマアム出す。
や、やられた。僕の作戦が完璧にバレている。
「貴志はお菓子持ってないって嘘ついてまで、イタズラ受けたかったんだ〜!笑笑 そんなにあたしにイタズラされたいんだ〜!笑笑 ふ〜ん笑笑」
な、なんという羞恥。下心バレバレすぎて恥ずかしすぎる。
完全にからかわれモードだ。
圧倒的敗北。
気づくと僕の身体は地に這い、土下座の形をしていた。
「す、すみませんでした。僕は下心丸出し男です。」
「どうしよっかな〜?そんなにイタズラしてほしいならしてあげよっかな〜??笑笑」
くっ、完全にからかわれまくっている!
だがここはもうプライドを捨ててでもイタズラを受けるしかない!
「イタズラしてほしいです!お願いします!」
「しょうがないなぁ〜!下心丸出し男さん?笑笑」
南無三!これは仕方ない犠牲だ!
何を言われてもここはもう引き下がれない!
どんな辱めを受けようが、ここまで来たらイタズラを受けてやる!!
「じゃあ下心丸出し男さん!こっち来て〜!」
たどり着いたのはソファー。な、何をするんだ?
「はい!下心丸出し男さん!座って〜!」
言われた通りに僕は座る。
「じゃあひざまくらしてあげる〜!」
なに!?ネコ耳メイドさんのひざまくらだと!?
こ、これはイタズラでもなんでもない!!ただのご褒美じゃないか!!!!
恥をかいた甲斐があったぜ!!
僕はネコ耳メイドさんの太ももに頭を乗せる。
上には美しき双丘、横を見れば圧倒的神々しさを放つ絶対領域、ここが天国か。
僕は目を閉じて、五感の全てでこのひざまくらを堪能する。
楽園だここは。
そんなパラダイスは一瞬にして崩壊してしまう。
研ぎ澄まされた五感。極限まで敏感になった僕の触覚。
その状態だからだろう。僕は急に襲いかかってきた耳への吐息に全身を震わせてしまった。
「ひゃっ」
な、情けない声が出てしまった。
こ、これがイタズラなのか!?
またもや耳の中に吐息が吹き込まれる。
「ひゃう!」
また僕の身体が震える。
これはやばい!なんかやばい!!
沙耶が笑いを我慢しているのが伝わってくる。
「ちょ、ちょっと沙耶!や、やめてくれ!」
「ダメ〜!!笑笑 これがイタズラでーす!笑笑 これを30分間耐えてもらうから!!笑笑」
絶望だ。
これを30分も??
「ふ〜」
「ひゃっ!」
耳ふーふー30分耐久レースはまだ始まったばかりである。
30分耳ふーふーされた後の貴志はさながら賢者モードのようになっていたという。
小森貴志の童貞卒業への道はまだまだ遠い。
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