第二話 Rêves
「お姉ちゃんこんにちわー」
「なんで猫の耳付けてるのー?」
「お姉さんは、外国のひとなのー?」
商店街のど真ん中で、子供たちが一人の女性を囲み、物珍しそうな表情を浮かべて話しかけていた。
そんな状況に女性は困惑していて、今にも涙目になりそうな雰囲気を醸し出しながら、一歩も動けずにいる。
「ねえねえ、お姉さんはどこから来たのー?」
「いえ、その⋯⋯ワタシは人を迎えに来ていて⋯⋯」
「あ、お姉ちゃんもしかして迷子? 迷子なの?」
「うっ⋯⋯いえ、まだ、探し始めたばかりですから⋯⋯」
子供たちの好奇心に押し潰されていく猫耳の女性を遠くから見て、私と私の猫はため息をついた。
彼女に出会ってから三年は経つが、一向にこの町の地理を覚えてくれない。
なのによく分からない意地を張るお陰で、今もこうして迎えに行く筈が商店街のど真ん中で立ち往生してしまっているというのに。
私は、この迷子の迷子の猫耳の女性を迎えに来ていた。このまま観察するのも悪くはないが、流石に助けてあげる事にする。
「ねえお姉ちゃん、もしかしてこすぷれってひとなのー?」
「い、いえ、これはコスプレなどでは無くて⋯⋯」
「さーがーしーたーぞー」
私の声が聞こえるや否や、彼女は猫耳をシュババッと動かし、こちらへ素早く振り向いた。
「に、西野小夏⋯⋯さ、探しましたよ」
「探したのはこっちだよイズンさん」
「ちょうど今から迎えに行く所で──」
「ごめんね〜、この人は私と待ち合わせしてたんだよ、少年少女たち〜」
言い訳を述べようとする猫耳の女性、イズンさんをスルーして、私はそのまま子供たちの元へしゃがみ寄った。
「えー遊びたかったなー」
「んふふ〜、じゃあ私より先にこのドジっ子お姉ちゃんを見つけてくれたお礼に⋯⋯はい、飴ちゃん」
「わーい、飴だー!」
「皆にそれぞれ一個ずつね」
ポケットから取り出した飴を、子供たちの手のひらへ乗せた。
「へへ、ありがとう!」
イズンさんから甘い匂いがしているから、何か貰えるんじゃないかと囲ったのかもしれない。そんな考えが脳裏に浮かぶ前に、飴を貰って上機嫌な子供たちはすぐ反対側へ走り去ってしまった。
「迷子ノルマ達成じゃな、イズン様よ」
子供が居なくなったのを見計らって、私の服から顔を出したロシアンブルーのラオシャは言った。
「そんなノルマはありませんよ」
「まっ、無事合流出来た事だし。はやいとこ猫カフェに向かおうよ。ね、迷子の迷子のイズンさん」
「むぅ。そうですね、向かいましょう」
この
人に乗り移る魂も、人の形で無い魂であってもその記憶を共有し、空へ還した事もあった。
この町に残っていた迷魂は既に、私が三年という時間をかけて全て送り返せている。つまり私がこの町で猫巫女としてやれる事は、もう全部やって来たのだ。
だからこそ私は次のステップへ進むのだ。
東都の大学へは既に通っている私だが、禊猫守としては今日初めての活動となる。今度は東都で、私は本格的に頑張っていく。
「それにしても⋯⋯」
「? なにか?」
「私が選んだ冬物、ちゃんと着てくれてるんだ」
「これですか。はい、思った以上に暖かくて、外に出る時はいつもこれを⋯⋯」
初めこそ変な格好で現れたイズンさんだったけど、私の選んだ服を着るようになってからは落ち着いた雰囲気の人になった気がする。
別にお洒落に目覚めたり女子力の向上に励むというような素振りは全くないが、私と一緒にいる時はやけに素直になったと思う。
それもあるし、この人自体、着せ替えに適しているのだ。変幻自在に身体つきを変えられるから、コーディネートのしがいがあるというか。
今着ている服装だって全て私の選んだ物⋯⋯。そう考えるとまるで着せ替え人形みたいな扱いだが。
とにかく今着てくれているパファーコートが暖かそうで安心だ。少しサイズが大きいから、彼氏の上着を借りたという感じに見えなくもないが、猫系のイズンさんにはファー付きのコートは鉄板中の鉄板で似合っている。
「うんうん。気に入ってくれてるみたいでなにより」
「猫の間でも、イズン様がお洒落するようになったと噂されておったな」
「貴女達には分からない悩みですよ⋯⋯ワタシだって、人としてどうして行けば良いかと日々考えているのです。人型である以上、少しくらい合わせていないと多少の疎外感は感じます故」
「ふ〜ん、イズンさんにも一応そういう意識はあるんだね」
「一応は余計ですし、当然ですっ。さあ着きましたよ。中へ入りましょう」
猫カフェへ入った足でそのまま、カウンターの奥へと誘導された。
位置的に考えると従業員用の出入り口だけど⋯⋯。
「ここは?」
「この扉の先は、直接東都へ繋がる共有の移動空間となっているのです。貴女のような猫巫女が大きな事をしでかした際、瞬時にサポート出来る様に設置した、いわば魔術ポータルのような物です」
「へぇ〜、便利になったもんだね〜。⋯⋯んん? 私、そんな大それた事した記憶無いけど?」
「貴女にとってはそうなのでしょうね⋯⋯」
「アーガルミットの件は本来禊猫守が向かう程の大事件だったのじゃがな」
「ああ、アレかぁ。あの時は必死に頑張ってたなあ」
「それから三年間は平和そのものじゃったからな。神衣だって使う機会は無かったのう」
確かに記憶を辿ってみれば、大きな出来事で言うとアーガルミット以降は何一つ無かったと思う。最後の一人の友達を送った時だって、平和そのものだったし。
でも、三年という月日の流れの中で沸々と感じている疑念のような物はあるのだ。
それは、
沙莉も彼方さんも上手いこと話を逸らされるから、深い部分では二人の関係は全くと言って良いほど分かっていない。
「⋯⋯ねえ、イズンさん、彼方さんって今どうしてるの?」
イズンさんならもしかしたら何か知っているだろうか?
薄い望みだが、話しかけてみる事にした。
「
「⋯⋯そっか。もし会う事があったら言っといてよ。⋯⋯可愛い後輩が会いたがっていましたって」
「フフフッ⋯⋯勿論です。では、開けますよ」
結局、イズンさんでも彼方さんの事は聞いてないのか⋯⋯。
こうなると不安すら覚えるが、彼方さんの事なら大丈夫だろう。
また会えるし、今度は絶対に話してもらおう。
そう考えているうち、イズンさんはドアノブを回し、その扉をゆっくり開けた。
移動は瞬き一つ分の刹那。
次に目を開けた時には、もう別の猫カフェに立っていた。
「え、もう着いた?」
「あっという間じゃの」
余韻も何も無いのでビックリもしなかったけど、身体から伝わる空気がまるで違っていた感じはあった。
「西野小夏、ようこそ東都へ。貴方を今日から禊猫守として迎え入れます」
イズンさんから改まった丁寧な挨拶。からの、
「ん〜? なんだ今日は来客があったのか⋯⋯まったく表へ出るといつも落ち着かんな。やはりラボへ篭っておくべきだった」
丁寧な失望。からの、
「アレ!? イズンちゃんおかえりー! 早かったね! 珍しく見つけたの〜? 新しい子!! 私にもよく見せて?」
丁寧な歓迎。最後に、
「⋯⋯新入り」
丁寧な因縁。
これが一発目に起きた、私と禊猫守たちのコミュニティだった。
✳︎
「西野小夏、齢十九。三年前、姫浜町でベルカナと強制的に契約を結ばれて猫巫女となる。三ヶ月という短い期間の中で急速な成長を見せ、神衣までも習得した。その器用で大雑把な絆から来る魔力で持って、異世界から迷い込んだ魂を単独で送り返すことにも成功。その後も猫巫女と学業を両立しながら、三年をかけて姫浜に残存していた迷魂も全て送り返す。今年から東都の大学へ進学し、禊猫守として活動を広めていく⋯⋯と、これが彼女の内容だ。合っているかね?」
着いて早々、丁寧な歓迎をしてくれた人たちと同じテーブル席に座ることになった私。
「あ、はい。合ってると思います⋯⋯」
不敵な笑みを浮かべる女の子に対し、ぎこちない相槌を打ってしまう私。
唐突に私のプロフィールを読み上げたのは、私よりも小柄でインナーカラーの赤が輝く黒髪の、白衣を着た少女。鋭い眼差しで片手に持った青い端末のタブレットと私の顔を交互に睨んで離してくれない、ちょっと怖そうな人。危ない人体実験とかやってそうな見た目が怖さを引き立たせている気がする。
「つまり、成績優秀?」
「ふーん⋯⋯オレなんかよりずっとマシだな」
白衣の少女の腕に密着している美少女の疑問に続いて、隣側の席に一人で座る威圧感のある女性の言葉。
まず密着している美少女だけど、彼女は私もよく知っている人物だった。
現役トップアイドルのモモ。
ネット調べだが、本名は
個性的なピンクの髪色、青空のように眩い瞳、性格も底抜けに明るくて朗らか。
《世界を癒すその姿はまさに、現代に舞い降りた神子》
そんな風な見出しの記事をネットの何処かで見たのを覚えている。
アイドルを自分から追わない私でも、彼女はとんでもない美少女だと感じさせるオーラのような物はハッキリと伝わる。目を合わせたら二秒で死ねる自信があった。
「ああー! 小夏ちゃん、それ!」
「な、なななんです!?」
突然、モモさんが私を指差して席を立った。
「それ、その服! 今季流行りのヤツじゃん! コッチだと流行りだしたらすぐ売り切れちゃうから、着てる人レアなんだー。へえ、お洒落さんなんだぁ、小夏ちゃん。好きぃ〜」
はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯モモさんは気に入った事があれば、必ず語尾に「好き」を付けるらしい。これが堪らなく⋯⋯私にも大ダメージなのである⋯⋯はぁ、強い。
(今更だけど、こんなトップアイドルが禊猫守だなんて⋯⋯もしかして凄い所に足を踏み入れたのでは?)
「ウッ⋯⋯い、一応流行り物には目が無いので、あはは」
自分の陽の部分を全開に話を合わせていると、イズンさんが私の隣へと座ってくれた。
「さっそく馴染めているみたいで良かったです、小夏」
「な、馴染めてるのかな⋯⋯」
「大丈夫だよっ! 皆優しいから、小夏ちゃんならあっという間だよっ!」
「⋯⋯なあイズン、さん。呼び出したのはこれだけの為か?」
隣側に座っていた人が、イズンさんに問いかける。
「ええ。今回は禊猫守の中でも貴重な新メンバーの加入です。どんな人がいるか覚える必要は今後あるでしょう?」
「まあ、そうだな」
「ボクには必要ないがね」
「もー、いっつも堪え性無いんだから姫李ちゃんは〜。ごめんね小夏ちゃん。隣のこの人は久木野姫李ちゃん。いっつも考え事してるから、頭が逆にカチコチなんだよ、それこそ氷みたいな感じなんだよ」
「氷、氷か⋯⋯なるほど」
「あっ⋯⋯また自分の世界に入っちゃった⋯⋯。またね姫李ちゃん⋯⋯」
困り顔で、モモさんは自分の殻に閉じ籠ってしまった久木野さんを見送った。
「世の中、色んな人がおるんやなって⋯⋯あ、ところで⋯⋯あの人は?」
私の問いにイズンさんが答えてくれた。
「ああ、あの人は
男性のようにカッコ良くキリッとした鋭い髪や目で、頬杖をついてジッとこちらを見ている緋咫椰さんも禊猫守。
正直、近寄りがたい位威圧感のある人⋯⋯。ファッションもそれに見合った野生感というか、物凄くミリタリー系が合いそうだ。
「あの人も、禊猫守⋯⋯」
「ふん⋯⋯オレは他とは違うけどな」
緋咫椰さんはそう言いながら、不機嫌そうに顔を外へ向けた。
禊猫守、一癖も二癖もありそうな人達ばかりだ⋯⋯。
「本当に色んな人がいるんですね⋯⋯。あ、そういえば、ラオシャは⋯⋯」
「猫達も各々、他の猫と交流を取っていますよ」
「そっか、いつの間に⋯⋯」
ずっと会話に参加して来ないと思っていたら、もう既に移動していたのか。
「小夏から聞きたい事はありますか? なんでもどうぞ」
「え? ああ、えっとそうだな⋯⋯。今後も、東都で迷魂を送っていくつもりだけど、禊猫守だけの役割があるって、随分前に彼方さんやブラギ様が言ってました。実際その役割っていうのは、何なんですか?」
意外にも、私の質問に答え始めたのはそっぽを向いていた緋咫椰さんだった。
「狐の仔が重要視される前は、慈善団体みたいなもんだった。探偵よろしく、人の頼みやペットの捜索なんかも請け負ったり⋯⋯」
「私はアイドルだから、生配信でお客さんの悩みを聞いたり〜」
「人の多い東都ではそうする事で、ワタシ達が生きていく上で必要な
「慈善の行動が魔素の回収になる⋯⋯でもそれって、猫巫女でも出来るんじゃ?」
「ええ、話し合ったり、悩みを解決する事で迷魂を送る。それでも魔素の回収は可能です。が、赤い迷魂や、人に扮した迷魂なんかは別です」
「魂皆良い奴な訳無いからな。そういう時には神衣を使える、オレらが担当しないといけなくなる」
「あ〜、そっか」
(そうだ。思えば私、猫巫女の頃から神衣を使えたから平穏無事だっただけで、普通の猫巫女は神衣を使えない物なんだよね⋯⋯)
「緋咫椰ちゃんは強いんだよ〜、悪い子には容赦しないもん」
「はい、緋咫椰は率先して悪さを働く者を取り締まってくれるので、治安も良くなっているんですよ」
「治安を良くしてる意識なんて、一切無いけどな」
ここまで色々聞いてみて、暖かい人たちで構成された集まりなんだと、なんとなくだが感じ取れる。
「まあ、そこの研究者気取りは引き篭もってばかりだけどな」
そう思っていた矢先に、緋咫椰さんから愚痴がこぼれた。
「⋯⋯ん? なんだいボクの事かね。ボクはこれでも忙しいのでね、魂に付き合っている暇なんか無いんだよ⋯⋯」
「久木野はワタシの判断で、活動のサポートを主軸にするよう命じているのですよ」
イズンさんのフォローが入るが、緋咫椰さんは納得出来ない表情で久木野さんを見つめていた。
久木野さんと仲良くなるのは、私も困難を極めそうだな。
「あ、そうだ! イズンさん! アレってどうなった?」
突然モモさんが何かに気付いたような勢いで、イズンさんに問いかけ始めた。
「ああ、アレでしたら、今は作成段階に入った所です。数ヶ月もあれば出来上がるかと」
「やったあー! 楽しみに待ってるね! 小夏ちゃん!」
「は、はい!」
モモさんから前触れなく名前を呼ばれ、身体をビクつかせながら返事をしてしまった。
「ふっふっふー。楽しみにしててね⋯⋯。小夏ちゃんならきっと、喜んでくれるからね!」
何かに期待してキラキラさせた瞳を私に向けて、モモさんは言う。
何のことか全く検討が付かないが、トップアイドルからの期待を持たせる物だ。なんだかそれだけで胸が高まってくる。
「えっと、はい! 良く分かんないですけど、期待して、待ってます!」
「じゃあ小夏ちゃんの紹介は済んでるしぃ、この会は解散? イズンさん」
「ええ。ここへ連れてきた時点で、大体は終わっています」
「じゃあ私は先に帰るね! もう収録の時間だから! 行こう、Pちゃん!」
「Pちゃん?」
私が疑問に思っていると、一匹の黒猫が私の頭上を飛び越え、モモさんの方へと駆け寄った。
「また会おうね、小夏ちゃん! あ、週末の音楽番組、チェック宜しくねー!」
宣伝を添えてからモモさんは黒猫と一緒に勢い良く猫カフェを飛び出して行った。
Pちゃんって猫の事なのか⋯⋯それは名前なのだろうか。
「やっと腕から解けた⋯⋯ボクもラボに戻るとする。はあ、陽の光は浴びたくない⋯⋯」
「オレも帰るか⋯⋯ダエグ、行くぞ」
モモさんに続いて、他の二人も連鎖して猫カフェから去ろうとしていた。
「なんだか皆潔いな⋯⋯」
「禊猫守という括りが無ければ他人同士ですから、あまり他の会話を交わさないのです。今はモモさんが居るので、何とか繋ぎ止めていますが」
「ふーん。まだそんな感じなんだね」
ラオシャが終わったことを見計らって、私の所へ近寄りテーブルの上で腹を見せて寝転がった。連鎖的に腹を撫でる。
さあ次はどうしたもんか、今日は何一つ予定が無いし、まだ話し足りないこともある。
「小夏、狐の仔の事なのですが」
いつもより慎重に、イズンさんが話を切り出した。私もそのまま話を聞くことにした。
狐の仔、彼方さんの親友を手にかけた人物というのは、三年前にも話は聞いている。
刀を腰に差した、白いローブに狐の仮面。もし見つけたなら私も、その時は倒す覚悟で居なければならないだろうとはずっと思っている。
一頻りイズンさんから狐の話を聞いてから、私も猫カフェを後にした。
「禊猫守の最後の九として、貴女にも期待していますよ」と、イズンさんは最後にそう言ってくれた。
「のう、小夏よ」
イズンさんの言葉を飲み込んでいる途中で、ラオシャから声がかかる。
「ん? どした?」
なにやら真剣な声のトーンだったので、私は多少身を引き締めて聞くことにする。
「⋯⋯東都の現状も把握しておくと良い。中心街へ移動するぞ」
「現状⋯⋯?」
「うむ。移動してからのお楽しみじゃわ」
「了解。すぐに向かおう」
ラオシャの言う通り、猫カフェを出た私はそのまま中心街へと向かった。
✳︎
中心街はとても大きな交差点が十字にあって、どこもかしこも人混みで一杯だった。
周りにはビルが幾つも建ち並んでいて、まさに都会の景色と言わんばかりだ。
でもこんな所に来て、ラオシャは何を伝えたいんだろう。
「着いたけど、どうすんの?」
「⋯⋯モノクルを取り出して、天眼を使ってみろ」
「ん、りょ」
言われた通り、モノクルを目にかけて、天眼の膜を張って、街を見回してみる。
すると──
「⋯⋯えっ」
レンズ越しから見えたその途轍もない光景に、思わず呆気に取られた。
衝動的に身体が動き、さっきまで見ていた人混みを掻き分けながら、人目のつかない所で神衣を纏いアンダーへ入った。
人が干渉しない別空間、そこから私は遠慮なく十字路を突っ切り、ビルを垂直に駆け登り、屋上まで足を動かした。
そしてもう一度、天眼レンズから見えるその光景を見た。
とてもじゃないが、言葉が出そうにない。
姫浜での活動は何だったのかと思わせる程に、東都は⋯⋯一言に狂っていた。狂っていたと、感じてしまった。
「こんなのって⋯⋯」
「小夏よ、人間は一年を通してどれ程の命を落としていると思う?」
「⋯⋯」
漂う魂で形作られている雲は、街を覆って離さない。とにかく異常だった。
一度位考えた事はあるかもしれない。だけどここまで目に見えてしまうのは──
「此処らを漂っているのはほんの一部に過ぎん。都会に憧れ、他所から流れ着いた者も居るじゃろうな」
「それに良く見てみたらさ、管が無いんだね⋯⋯ここ⋯⋯」
見様によっては、死者の世界と勘違いしてしまう程の光景。
そしてその上空には、本来魂を送るはずの管が存在していなかった。
「これだけの魂の数が管に入ってしまったら、グリムの居る場所がパンクして、更なる問題を抱えてしまう。これはもう見て分かる事じゃった」
「管が無いから⋯⋯私達がそのままグリムさんの所まで送るしかないの?」
「うむ。更に遥か上空にはグリムの管理している船が設置されておるから、一体ずつ送る分には問題は無いのじゃが⋯⋯」
「そして魂を送る為の管が無いって事は、神社が一つも機能していないって事でもあるから⋯⋯」
「人の集まる場所はそれだけ発展もするが、同じくらいに何かは廃れ、失う物も存在する、という話じゃな。なあ小夏よ、お前はこれを見てどう思う。こんな光景が広がる都会から、離れようとは思わんか?」
ラオシャの言葉に、私は頭を横にふった。
「ううん、それとこれとは話が違うよ、ラオシャ。確かにこの数、ぜ〜んぶ送ろうと思ったら、嫌になっちゃいそうだけどさ」
「⋯⋯それでも、やり遂げようというのだな?」
「もちろん! だからラオシャも最後まで付き合ってよね」
「くっふっふっふ⋯⋯少し心配じゃったが、流石は小夏じゃな。ああ、無論これからもお供をするぞ。ワシも、最後まで小夏と一緒じゃ」
「私たちの戦いはこれからだ⋯⋯って事で、少しだけ送っていこうか」
「うむ! 同じことを考えておったぞ!」
「せっかくだし、考えてた新技でも披露しますかね! ピュリカフシスっていうんだけどね⋯⋯」
こうして、私たちの禊猫守としての活動が大きく開かれる事になった。
たとえ超える壁が大きくても、私たちは猫だから、きっと飛び越えられる事が出来る。
そう信じられるのはラオシャがずっとそばに居てくれているからだ。
禊猫守になっても私は変わらない。
だから、また明日も頑張ろう。
✳︎
「⋯⋯で? ハロウィンライブってなんだよ」
そんな始まり方がありつつ、禊猫守の九として活動してから数日、ようやく狐の仔改め
しかし結果は猫側、つまり私たち禊猫守は敗北、皧狐に傷跡を刻まれたまま、猫カフェの一つの席に集まって、昨日の出来事を話し合っていた。でもその途中、立ち込める暗雲を吹き飛ばすかのように、モモさんが扉を開けて開口一番、ハロウィンライブへ行こうと声を上げたのだった。
「ハロウィンライブはハロウィンライブだよー。皆せっかく集まる様になったんだし、ちゃんと仲良くして行った方が良いと思ったの」
モモさんの言葉の後に馬場園菜々さんの大きなため息が吐き出される。提案を遮るように菜々さんは否定的な意見を述べ始めた。
「モモさん、トップアイドルなのにこの場の澱んだ空気をお察し出来ませんの? それに、ライブなんて行ってる場合じゃありませんわ」
お嬢様言葉の中に含まれるチクチクした棘がモモさんを刺そうとするが、それは叶わず。その前にイズンさんがフォローへ入った。
「いえ。ここでずっと考えているよりも、外へ出て気分転換するのは大事な事です。モモさんがせっかく誘ってくれたのですから、棘を抜く時間が必要かと」
「ねー!」
イズンさんの言葉に、モモさんの可愛い相槌が添えられる。
菜々さんもこれにはうぐぐと表情を丸く歪ませて唸った。
でも皆でライブへ行くとなると一つ問題が生じるので、私が意見してみることにする。
「あ、あの⋯⋯全員で行くのも良いですけど、その場合皧狐はどうするんですか?」
「ああ? そもそも行かねーよライブなんて⋯⋯新入りとバナナだけで行ってこいよ」
緋咫椰さんが不貞腐れながら、私の発言を否定した。
「同感だ。ボクだって皧狐から得られた情報を整理し、分析したい。ライブなんて騒がしいのはゴメンだよ」
「ちょっと! 私も行くとは言ってませんよ!?」
同じように姫李さんと菜々さんもライブへ行くのを拒否した。
数ヶ月経っても親睦を深めるような出来事も無かったから、禊猫守同士の仲は私が知ってる頃からあまり変わっていないのである。
モモさんはそんな行かない宣言を決める三人にほっぺを膨らませた。
「ぶーぶー、行かないなんて寂しい事言わないでよ〜! 緋咫椰ちゃんはもっと私たちに寄り添ってほしいし、姫李ちゃんもたまには外に出ないと牛になっちゃうよ!! バナナちゃんはバナナ!」
「興味ないんだよ、そもそもライブなんて⋯⋯」
「ボクが外に出る必要なんて無いんだよ」
「私だけ突っ込みが雑ですわ!?」
う、う〜ん⋯⋯これは思ったより困難かも⋯⋯。
思わず眉をひそめて腕を組んでしまう。どうにかして、皆をライブ会場に行かせられないだろうか⋯⋯。
言い合う周りを他所にうんうんと考えていると、先にイズンさんの頭の上の電球が点灯した。普段ジト目な彼女の瞳が、ゆっくりと大きく見える程に見開いた。
「でしたら⋯⋯」
間に割って入ったイズンさんの言葉に、両者が沈黙する。
「ライブへ行く側と、ライブを見守る側で分かれませんか?」
「お、おお⋯⋯! 流石イズンさん!」
「でもこのままですと、ライブへ行くのは小夏だけです、一人では心細いでしょう。なのでここは」
「ここは⋯⋯!?」
「ライブ参加に二人、ライブ参加の護衛を二人とし、皧狐への脅威に迅速に対応出来るようにするのです」
え、偉い〜〜〜〜っっ!!!
イズンさんに初めて感心してしまった、拍手が出てしまいそうだった。
「そうそう! 皧狐ちゃんがいつ私たちを狙うかは分かんない! でも目的を別々に持って近い場所にいれば、私も無事にライブが出来る!」
「護衛って事なら⋯⋯まあ、目立たないし良いか」
「流石緋咫椰ちゃん!」
緋咫椰さんは傭兵か何かなのだろうか⋯⋯案外目立たない役割を与えられれば動いてくれる人なのかもしれない。
「貴女が護衛なのでしたら、私はライブ参戦に致します。仕方ないですけど」
不機嫌そうに赤い髪を指で包めながら菜々さんは言う。でもそれはモモさんを納得させはしなかった。
「⋯⋯その言い方、やだ」
「は、はあ!?」
「行きたくない人をライブに呼んじゃうのは、私が許したくない! バナナちゃんは緋咫椰ちゃんと一緒!」
「ええぇ⋯⋯」
仁王立ちの構えを取って、モモさんは菜々さんを否定する。
「そして!!」と更にモモさんが続けて声を上げると、残りの人の肩がビクッと動いた。
「そして!! そんな理由はあれど外の世界に触れて欲しいって私が願ってるから姫李ちゃんは現地!!」
なんとしても悪い流れを破壊したくて頑固になってしまったモモさん、こうなってしまったらその通りにする他ないかもしれないと、モモさんの勢いを見て私は感じるのだった。
負けを認めよう、姫李さん。
「うぐぐっ⋯⋯ボクが外、なのかっ」
険しい顔で、もう崩せなくなった未来を受け止めるように姫李さんは現地への参戦を許した。
確かに昨日得られた皧狐の情報は数多く、整理したい状況ではあるのだが、疲弊している状況では時間がかかるだろう。だからこそ休息を兼ねた今回のライブへは行く価値はあるのだ。なにより禊猫守達を仲良くなるチャンスでもある。
ついに皧狐の話はしなくなり、ライブへの日程と準備について話し合う流れになった私たち。
この日は特に猫カフェの中が多少騒がしかったように思う。
✳︎
話し合いは終わり、猫カフェから皆それぞれ違う足取りで帰っていった。
私は当日現地参加する姫李さんと少しでも話をしようと思い、まだ猫カフェに留まっていた。
まあ、テーブルに突っ伏した状態の姫李さんにどう声をかけたものかという場面なのだけど。
「あ、あの⋯⋯ある意味良い機会じゃないですか。ずっと引きこもってたって話ですし」
「そうそう」
「ま、まあ普段動かさない身体をいきなりライブで動かすのはちょっとアレかもしれませんけど、私がついてますしっ」
「そうそう」
ライブ参加経験はそんなに無いものの、他のイベント事で荒波には揉まれてきた自分だし、今回だって大丈夫だろう。
「そうそう」
「そうそう⋯⋯って、まだ私は何も⋯⋯ってえ!?」
さっきからずっと相槌をしている謎の声の方を向いてみると、そこには二度三度会った顔があって、私は思わず二度見した。
「グリムさん!? どうしてここに!?」
三年前と変わらず、彼はホストみたいな佇まいで居た。
「久しぶりだね西野小夏。元気にしてるかな?」
「んん? グリムだとっ」
グリムさんの名前を出した途端、姫李さんが反応して飛び起きた。ずっと突っ伏していたお陰で前髪があらぬ方へ跳ねている。
「おお〜、キミは相変わらずだねぇ。その姿を見るにまだまだ引きこもったままなのかな?」
「チッ⋯⋯」
眉間に皺を寄せての綺麗な舌打ち、何故だか姫李さんがばつが悪そうにしている。
「知り合いですか?」
私は浮かんだ疑問を声にしながら首を傾けた。
「勿論、彼女は四番目の禊猫守だよ? 知り合いどころか、昔馴染みと言って良いかもね」
何故か少し自慢げにグリムさんは答える。
「へぇ〜、結構長いんですね、姫李さん。私よりも若く見えるのに⋯⋯」
「ふん⋯⋯」
姫李さんは何も喋らないまま、ただただ機嫌を損ねているようだった。
グリムさんの事が嫌いなのだろうか。
「それで? グリムは何をしに来たのですか?」
私のそばにいたイズンさんも会話に加わり始めた。
「やあイズン。いやあ僕もね、参加しようと思って。ライブ」
「は?」
イズンさんから溜息のような珍しい声が漏れた。
私も声に出かけたが、それよりも驚きが勝って出なかった。
「以前も言った気がするけど、僕達ケットシーにとってハロウィンは大事な要素、故にハロウィンは休息日なんだよ」
「それはグリムが勝手に決めた事ではないですか」
呆れて肩で息を落とすイズンさんに同調するように、私も腕を組んでグリムさんを睨む。
「そうだよ、それのお陰で姫浜に他の世界の魂が落ちた事もあったじゃん」
「あー⋯⋯それに関しては反論の言葉も無い。が、今度は大丈夫、問題ないよ。なにせ代理を頼んであるからね」
言い訳を述べるように喋るグリムさんに、イズンさんは納得の出来ない表情を浮かべて睨んだままだ。
どんだけ信頼されてないんだ、この人⋯⋯。
ともかく代理の人が居るのなら、当日グリムさんがライブに参戦してても問題は無い、のか⋯⋯?
「⋯⋯」
姫李さん、どうしたんだろう? さっきからずっと無言のまま虚空を見つめてるけど⋯⋯。
「な、何か考え事ですか? 姫李さん」
「ボクには、やらなければならない事があるのに⋯⋯」
「え?」
姫李さんはとても切ない表情を浮かべて静かにそう口にすると、席を立ってそのままラボの方へと歩いて行ってしまった。
何かもっと声をかけるべきだったろうかと、去る背中を見て少しだけ後悔が募る。
「小夏、気にかける事はない。彼女は惰眠を貪るような存在ではないというだけだ。それは君もそうだろう?」
グリムさんには見慣れた光景なのか、私に言葉を投げかける。
「禊猫守同士、もっと仲良くしたいんですよね⋯⋯」
「小夏ならきっと出来ますよ。焦る必要はありません」
「うん⋯⋯」
「考えるよりまず行動だよ小夏」
「グリムさんには言われたくありません⋯⋯」
「ハッハッハ、それはそうだね。じゃ、僕もお暇するとしよう。ライブ当日までに備えないとね」
そう言い残してグリムさんも帰っていった。ある意味この人が一番猫っぽいな⋯⋯。
「私もそろそろ帰ります。行こうラオシャ。じゃあまたね、イズンさん」
「はい、ライブ当日、よろしくお願いしますね」
「りょーかいっ」
ラオシャが私の肩に乗るのを待ってから、猫カフェを後にした。
なんだかまだまだ馴染める感じじゃないなと、心の中で思ってばかりいる。
もっと仲良くなりたいという気持ちばかりが強くなっていって仕方ない。
ここ最近冷たい風を浴びて身体が冷えるからだろうか、無意識に温みを求めているのだと思う。
それにしても、
「なんか⋯⋯ラオシャって猫カフェに居ると全然喋らないよね」
最初から思っていた事を口にした。
最近のラオシャは家に居る時は私にべったりなのに、猫カフェに居る時は用が済むまで席を外しているのだ。
他所の人と交流してる訳じゃないのだから、ずっと私の所に居て良いのに。
「ワシは、猫達の間ではアウェイじゃからの」
意外な言葉が耳に入る。
「そうなの?」
「こう見えて、結構訳ありじゃからな」
そう得意げにラオシャは言った。
「ふーん⋯⋯」
まああんまり興味は湧かないけれど。
何より今は禊猫守達と仲良くなりたいと頭の中を駆け巡って仕方がない。
「もっと仲良くなりたいという顔じゃな」
「⋯⋯分かっちゃう?」
「神衣で何度も繋がっていると、お前の考えくらい読み取れてしまう物じゃ」
「心の中だけお喋りだって?」
「ワシが補償しておいてやる。お前はお前らしく、ただ思いのまま真っ直ぐ突き進めば、自然と絆が紡がれていく」
「⋯⋯ありがとう」
誰の言葉よりも、今はラオシャの言葉がただ嬉しかった。
私の東都での目標は決まった。
禊猫守全員と仲良くなる事。
もっとちゃんと考えてみれば、命を狙われる立場の私達がコミュニケーションの一つも取れないんじゃ狐の犠牲は必ず増えてしまう。これは絶対に阻止しなきゃ行けない。
一筋縄では行かなさそうな人達ばかりだが必ず達成して見せよう。幸い、交流が一番難しそうな姫李さんとの接触がライブによって可能だ。ライブ当日、頑張ってこちらから歩み寄ってみよう。
「姫李さんの好きな物とか分かる?」
「なんにも知らん」
⋯⋯ゲームでもしながら考えよう。
✳︎
ライブ当日。
私は早めに出発し、一足先に猫カフェへ姫李さんを迎えに行っていた。姫李さんの事だから、多分ラボって所にいるはずだ。
猫カフェは東都の中でも幾つか店舗があって、それぞれ経営されているが、禊猫守が集まるのは一店舗のみだ。
適当に並んでいる中の一店舗、藍色の外装に小さな観葉植物達で彩られた一見お洒落な喫茶店。
禊猫守である私は魔術で鍵を開けられる為、人が居なくとも単独で入る事は出来る様になっている。
「ラボって多分、この先だよね⋯⋯」
早速中へ入り、辺りを見渡す。
開店前という事もあり、中は静まり返っていて、人や猫の気配なども全く無い。
従業員用の部屋のさらに奥に進む。
そして目の前にもう一つ地下へ進む道があった。
前回はここから姫李さんが帰っていくのを見たから、この先に姫李さんが居るはず。
早速降りてみる事にした。
地下は少し肌寒く、私の靴の音だけが鳴り響いている。
幾つか部屋に通じている扉が均等に配置されているが、「四」とだけ書かれたボードが掛けられた扉に目が止まった。
恐らくここだろう、と直感がそう告げる。
「お、お邪魔しますね〜、姫李さん」
念の為ノックをし、声をかけてから扉を開けた。
扉はすんなり開かずに、何か引っかかった様な感触があったが程なく開いた。
すると、私の鼻を覆う様なまとわり付く匂いに襲われ、目が一気に冴えた。
「ん!?」
その臭くはないが刺激に特化した匂いを受けて、思わず鼻を手で塞いでしまう。
恐る恐る開けた部屋を見渡すと、臭いの原因はすぐに判明した。
床一面に敷き詰められる様に、または乱雑に築き上げられた、エナジードリンクの空缶。
エナジードリンクの山頂に置かれている缶は飲み干されて間もないのか、まだ水滴が付着しているのが見えた。
エナジードリンクの他には本らしき物も見られるが、下に埋まっていて何冊あるのかすら定かでは無い。
ゴミ屋敷。一言で表すならばこの言葉以外に無い。
私は唖然となり、しばらく立ち尽くしてしまった。
なんでこうなったというよりも、どうやって生きてこれたかの心配が勝る。
姫李さんの栄養面が気になって仕方がないが、取り敢えずこの山々が聳え立った部屋を歩かなければ先に進めない。
って言っても、
「足場が何処にも無いじゃん⋯⋯」
空き缶と片付ける意思が僅かに見受けられる、空き缶しか入っていないビニール袋達と時々本は、もはや足場となっている様にも見える。
まともな足場は無いか探してみると、何となく通った場所が凹んで道が出来ているのが分かった。
取り敢えずここは踏んで良いだろう、そう思って一歩一歩、ゆっくりと踏み締めて行く事にした。
「よい、しょ⋯⋯っ、よいっしょ⋯⋯姫李さん、何処ですか〜?」
返事は無い。
歩く度に鳴る金属音を味わいながら何とか先に進むと、モニターが置かれた机で寝ている姫李さんを発見した。
「あー、姫李さん⋯⋯」
居るだけで目がバキバキになってしまいそうな所で良く眠れるなこの人⋯⋯。
呆れつつも、寝ている姫李さんの背後まで近づき揺らしてみようとした。
「起きてください、姫李さ⋯⋯」
「ん〜⋯⋯? ふぅ⋯⋯ん? なんだ? 何故人がここに居るんだ?」
揺らす前に、姫李さんは背伸びをしながら起き始めた。
「ライブにちゃんと来るか心配だったので、迎えに来たんですよ」
「あー⋯⋯そうだったかな」
「そうですよ」
一呼吸つきながら、姫李さんは椅子の背にもたれかかり、後ろの私に振り向いた。
冷たさのある表情に、少しだけたじろぎそうになったが⋯⋯姫李さんの髪はボサボサで艶やかで、それはシャワーすら何日も浴びていない風貌であった。
「き、姫李さん⋯⋯お風呂とか⋯⋯入ってます?」
「風呂なんぞ興味も無い。外に出る必要が無いからそもそも自分では入らん。それより、昨日導き出した考察を元に、資料を作成しないと⋯⋯」
その言葉を聞いて三年ぶりに、私の中の何かがプツンと糸の様に千切れてしまった。
無言で作業を始めようとする姫李さんを肩で担ぎ、ゴミ部屋を去り、猫カフェを去り、私の家まで戻ってきた。
ライブなので家で待機していたラオシャがビックリして私を追うが、そんなのには気にも止めず、担いでいた姫李さんを降ろして脱がせた。
「お、おい。ボクはまだ──」
「駄目デス」
私も脱ぎ、そのまま浴室へと移動させて、そこからはもうとにかく姫李さんを頭の先からつま先まで洗いまくった。
「や、止めろ、前くらい自分で」
駄目デス。前も後ろも何もかも、とにかく洗いまくった。
「や、やめろお⋯⋯」
✳︎
「おい⋯⋯き、着替えたぞ⋯⋯」
「おお〜! 可愛い! 流石私だ⋯⋯っ」
姫李さんを洗いまくった後もキチンと事を済ませ、私の服を取り敢えず着替えさせてみたのだが、う〜ん良い、小柄で細身な子にはスカートを履かせろという私の直感は間違っていなかった。
ライブに行く為なるべく動きやすい服を合わせ、白衣を上に着せてみたのだが、途轍もなく合っている。
イズンさんで一回経験しといて良かったな。
「おいベルカナ、どうなっているんだこの禊猫守は⋯⋯っ!」
姫李さんが一連の怒りをラオシャに向けて言った。
「ワシに言われてもの⋯⋯」
「姫李さん! ライブに行くっていうのにあんなだらしない格好じゃ駄目なんですよ!」
「余計なお世話だ! 第一ボクはライブに興味など無いんだ。ラボで静かに狐が現れるのを待つだけで、ボクはそれで──」
「そ、れ、が! 駄目なんです! モモさんも、外の事を知って欲しいから姫李さんを誘ったんですよね。だったらその気持ちに答えてあげるべきです!」
少しだけ気持ちが先行して、言い合いの雰囲気になってしまう。
「はぁ⋯⋯本当にくだらん。どいつもこいつも、ボクに構うなよ⋯⋯」
そう言いながら、姫李さんは私を見つめながら塞ぎ込む。
その目は相手を分析するような物では既に無くなっていて、ただただ降参の旗を上げるような愛らしい視線に変わっていた。
「姫李さんも女の子なんですから、最低限清潔は保たないと⋯⋯じゃあ出かけますよ。会場入りはまだまだですけど、現場の近くには居ないと入場に遅れて面倒ですから」
「ええ? まだ朝なんだぞ? そんな時間に出かけるなんて正気じゃ⋯⋯あー分かった、分かったから袖を引っ張らないでくれたまえよ」
✳︎
午後、東都ライブ会場前。
ハロウィンという事もあって、仮装をして盛り上がる観客達が続々と増えてきていた。
まだ他の禊猫守達の姿が見えないが、既に何処かには居るのだろうか。
このまだまだ増え続ける人混みの中で合流するのは困難だろう、連絡先すら交換していないし、今は姫李さんの手を握っておくので精一杯だ。
それに朝から姫李さんのお世話をしていたから疲労が蓄積している。まさかハンバーガーの食べ方すら知らないなんて思わなかったし、エスカレーターを渡れずに迷子になるなんてアニメでしか見ない物を経験してしまったし。
「外の世界は忙しないのだな。脚がもう動きそうに無い」
「会場内には座る席があるので、そこで休めますよ」
「はあ⋯⋯もう入場しても良いのでは無いか? 禊猫守を待ってても仕方ないだろう。護衛組も既に近くには居るのだろうからな」
「う〜ん、確かにそうした方が良いですかね」
ラオシャをライブ会場には連れて行けない以上私は無力。姫李さんもそれは同様だろう。
ここは姫李さんの言う通り、もう入場しておいた方が良いかも知れない。
ライブ会場に入ったら最後、モモさんのライブを私達はただ見届けるだけだ。皧狐と遭遇したとしても、ライブ会場からの退出は出来ない。
話し合った際に出た作戦行動、という名の約束⋯⋯。
何か怪しい姿があれば私は天眼レンズを使用し少量の魔力で護衛組に合図を送る事。
護衛組はライブ会場外で待機する為、中で動きがあればアンダーから対処に回る事。
ここでの目的はあくまでモモさんのライブの成功を祈る事、皧狐の撃退等は考えてはいけない。
私達は戦いの術を心得ていないから、無闇に危険行為はしない事。
これが大前提、今出来る唯一の守り。
「皧狐、本当に私達を狙って来るんでしょうか?」
うねる人の波を視界に、姫李さんに問う。
「顔が割れた以上、もう隠れる必要も無いと感じたから、アイツらは自ら名乗り出た。それにアンダーに入れる以上、表が公の場であろうと、舞台裏は戦いの場と化す」
「戦いは、避けられない⋯⋯」
囁く。戦いたくない、という僅かな願いを込めた言葉。
「? なんだ、怖いのか」
「皧狐だって、人だもん。人と戦うなんて、出来る事ならしたくないよ」
「フン、甘い奴だな。そんな事ではいざとなった時、前を向けなくなる」
「姫李さんは、戦えるの?」
「ボクを誰だと思ってるんだい、ボクは⋯⋯」
「やあやあ〜、ハロウィン、楽しんでる?」
最後まで言いかけて、私達に声がかかる。
声をかけてきたのはカボチャを被った着ぐるみのキャラだった。
「あ?」
姫李さんが警戒心を強くして、歯を剥き出しにして唸る犬の様に表情を歪ませる。
「あ、あれ、私だよ、私〜」
姫李さんの威嚇になんだか慌てた動きを見せるカボチャ。
発せられる声をよく聞いてみると、一人の顔が頭に浮かんだ。
「もしかして、モモさん?」
「あ、小夏ちゃんせいかーい! 私だよ〜、モモだよ〜」
喜びを身体で表現するカボチャもといモモさん。
「どうしてそんな格好を⋯⋯」
「えへへ⋯⋯そのまま皆を迎えに行こうとしたら、スタッフさんに止められちゃってね。だから近くにあった着ぐるみを借りて来ちゃった」
「な、なるほど⋯⋯」
「うん。あ、緋咫椰ちゃんとバナナちゃんにも会ってきたから、姫李ちゃん達は入場してて大丈夫だよ!」
「ほ、本当ですか!? 良かったー、禊猫守、揃ってたんだ」
「なら遠慮なく、ボク達は中で待機していよう」
「⋯⋯まさか本当に姫李ちゃんがライブに来てくれるなんてね」
「お前の歌ならアイドルCDを押し付けられていた頃から知っている。あまり聞いた事はないがね」
「姫李ちゃん⋯⋯小夏ちゃんも、ハロウィンライブ、楽しみにしててね。キミ達の夢も乗せて、私頑張るから!」
拳を前に突き出して、モモさんは言い切ってみせた。着ぐるみ越しだけど、熱意を感じるものがあった。
「はい、楽しませてもらいます! 早速入場しよう、姫李さん!」
そうして、私たちの背景に映る巨大なドームの中へ入るのだった。
「面積、約五万平方㎡のこのドーム会場⋯⋯狐の侵入があるとすれば⋯⋯」
道中、人混みの中で姫李さんは言う。
「オープンされている屋根の上から、というのも示唆出来るだろうな⋯⋯」
「緋咫椰さん達は会場外で待機してるんですよね? でしたら中から襲撃してくるのが妥当じゃないですか?」
「妥当な案で攻めてくる連中ではない。お前には今度皧狐の情報を共有してやろう⋯⋯中からは恐らく、ボク達しか入れない筈だ」
「どうしてそう思うんですか?」
「アンダーで中から入れたとしても、モモを攻撃するには必ず表には姿を表さなきゃならない。となれば人目につく場所は全てアウトになる。これだけの人の数だ、死角を考えれば必然的に関係者入り口からのルートになる。しかしトップアイドルを守ろうとする者はボク達以外にも大勢いて、こっそり隠れる事など不可能に近い」
「つまり、皧狐がいるとしたら、外以外は考えられない⋯⋯?」
「あくまでボクの仮説だ。それに禊猫守に見つかったとしても、狐たちには対抗手段があり、そのどれもが敵わないものだ」
「うーん、どう考えても、モモさんを見守るしか手段はありませんね⋯⋯」
「こればかりは仕方ないだろう。まっ、どの道ボクは働かなくて良さそうだ」
薄暗くなっていく中で、皧狐を念頭に入れつつ、どんどんと会場の奥まで進み、私達に割り振られた席へ辿り着いた。
そういえばグリムさんはどうしているのだろうか? 既に会場の中へ入っていたら良いのだけど。
あ、そうだ。姫李さんに渡すものがあるんだった。
予め持ってきていた持ち物の中から、二本のペンライトを取り出し、姫李さんの方へ差し出した。
「姫李さん、これ。これを振って、モモさんを応援するんですよ」
「周りから様々な光が蠢いていたと思って見ていたが、これだったのか。なるほど、スイッチ式なのだねぇ」
カチッとスイッチの入ったペンライトが、姫李さんの顔を薄暗い中で青く照らす。
ペンライトに内蔵されたラメなのか姫李さん自身なのか、無言でペンライトの色を変えて遊んでいる。
私もペンライトを取り出しておこう。
しばらく待っていると周りも既にお客さんで埋まっていて、ポツポツとペンライトの灯りが会場を照らし、やがて光の海が出来上がった。
音もなく、照明も全て消えて、それでも照らさんとする光の海は、ただ一人の巫女。
自分の心臓の音が聞こえてきそうだった。
照明、音、同時に形となった。
巫女を祝福する光も、激しく動き始める。
始まった、一瞬で形作られる空間に、圧倒される。
気付けば私も夢中で、一本のペンライトを振っていた。
湧き上がる歓声も、光の海も、巫女は一斉に浴びた。
一曲の始まりは唐突にやってきた。
お客さんは次々と席を立ち、ペンライトを握り締めて、一心に巫女だけを見つめ始める。
そんな光景に姫李さんは困惑して座ったままだったが、私も興奮が抑えられず、一つ遅れて席を立った。
始まる⋯⋯っ!
✳︎
ライブは順調に進み、数曲披露された後、巫女のトークが始まった。
「皆っ! 今日はハロウィンライブに来てくれてありがとねっ!」
その言葉に応えるように、観客からは歓声と、ペンライトの光が激しく揺れ動く。
「ライブビューイングの皆も、ライブ配信の皆も! 私は見てるからね!!」
突き抜けたその声に、観客達は魅了された。
こちらこそ、とエールを送る人。
ただただ頷く人。
涙を浮かべて絶叫する人。
その場から静かに崩れ落ち、泣き始める人。
「良いぞー!! 流石ボクと肩を並べる存在だー!!」
これはすっかり熱に浮かされて、誰よりもペンライトを振りかざす姫李さん。
かく言う私も、ナンバーワンアイドルの魅せるステージに心を奪われていた。
そんな時、私にある気配が走った。
それは、ステージ上にいる一人の巫女から発せられたもの。
気付けばさっきまで身に付けていた衣装とは別で、新しく猫耳を付けて、私たちにはよく見知った巫女装束風の羽織りに着替えていた。
私の羽織る神衣とは少し異なっているけど、あれは正しく神衣の気、モモさんは既に神衣状態になっていたんだ。
「私からのイタズラとお菓子を⋯⋯ライブを観に来てくれた全てのアナタに、届けるよっ!! 新曲、聴いて下さい!」
そのモモさんの言葉に、ステージ上の全てが震え上がった。
突然の新曲の発表に、観客の興奮は更に加速する。
モモさんをもっと近くで観たくなった私は天眼レンズを取り出し、レンズ越しの姿を確認した。
すると、天井を覆う様に多くの迷魂達が集まっていた。
集まった理由は、巫女にあった。
「キミの横を歩いていくよ、そうしたら晴れ渡っていくから〜♪」
その歌は、迷魂をも魅了していたんだ。
更にモモさんから飛ばされる光線のような物が迷魂目掛けて発射され、当たった者から次々と送れていっている。
「す、凄い⋯⋯これって⋯⋯これがモモさんの⋯⋯っ!」
禊猫守、モモさんのお見送りは、ライブをする事で成されていたのだった。
振り付けの中で観客に向けて指差しでアピールする度、その指先から目には見えない光線のような物を飛ばしているのが見える。
あれがライブに魅了されて集まった迷魂達を送っているのだ。
天眼でないと見る事の無い、とんでもない光景がそこにはあった。
凄い、言葉にし得ない事が、この会場では行われている⋯⋯!
「す、凄い! 凄いよ、モモさーん!」
「みんなみんな、み〜んな、私は見えてるからねー!!」
ステージの真上にはよく見ると、緋咫椰さんと菜々さんが退屈そうにこちらの方を眺めている。
姫李さんも気付いたのか、私と同じように空をじっと見つめていた。
これが、これこそが東都を照らし続ける巫女の在り方。
この後もハロウィンライブは、最後の最後まで盛り上がり、歓声とコールが鳴り止む事は無かった。
✳︎
華々しい夢の舞台は、光の海を抱いて幕を閉じた。
その中で起きた事が誰も彼も、熱を帯びたまま溶けてはくれず、夢から覚めない人々は帰る足を惜しみながら、端末を片手に想いを書き連ねていた。
ライブを味わった者達に彩られていく電子の海を横に、私たちは一人の女の子を待っていた。
大きくため息をつく。
私も同じく、夢から覚めやらない気持ちで溢れて一杯になっていた。
あの楽しくて楽しくて、忘れられない時間はいつまでも活力になってくれるのだろう。
楽しむには十分すぎる時間だった。
「まだ頭がぼーっとしてると言うか⋯⋯、感動で何もかも忘れてた⋯⋯」
「か、身体中が熱い⋯⋯ボクはもう電池切れだ⋯⋯早く帰らせてくれたまえ⋯⋯」
皧狐の事すら忘れてしまっていたけれど、これで良かった気もする。
ライブは平穏無事に終わってくれたのだし、あとはもう帰るだけだ。
「結局、皧狐の気配も何も無かったですね」
「そうだねぇ。しかしまだ油断は出来ない、油断している今、という事もある」
確かに。心が一杯になっている今の状況は、襲撃には合っているかもしれない。
「取り敢えず、会場を出ましょうか。外で緋咫椰さん達が待ってるかもしれませんし」
「ふむ、そうしよう」
✳︎
「いや誰も居らん!! モモさんはいち早く帰ったかも知らんけど誰も居らん!」
会場の外で、私のツッコミの声が虚しく響いた。
待っている人たちは誰一人として居なかった。
「ふっ、まあそんなものだろう。役割が終われば馴れ合う必要はない」
分かっていたかのように、姫李さんが鼻で笑う。
「な、納得が行かない⋯⋯」
肩をがっくり落としてしまいそうになる。
こんなにも気持ちの昂揚するライブだったのに、あの二人には届かなかったというのか⋯⋯。
「それでは、ボクは一足先に失礼する。まあ、良い経験ではあった」
「あ、ちょっと⋯⋯姫李さん、せめて連絡先とか──」
「⋯⋯まあ良いだろう。ほら、好きに受け取りたまえ」
姫李さんは嫌な顔をしながら渋々と、白衣のポケットからカードを取り出し、私に投げ渡した。
受け取った一枚のカードには何も書かれておらず、裏面も特にこれといった装飾もない。
「これは?」
「それはウィルドのカードだ。魔力を与える事で情報が開示される。帰ってから勝手に開けるんだな。ボクはもう疲れた」
ようやく、ついに、禊猫守の人と連絡を取る事が出来そうだ! やった!
「あ、ありがとう姫李さん!」
姫李さんは無言で立ち去ってしまった。
無愛想な面は変わらずあるが、それは姫李さんらしさなのかと、少し思う。
今日は本当に色々あった、私も早く帰ろう。
結局あの二人には姿だけしか確認出来なかったけど、今頃ちゃんと帰れているだろうか。それだけは心配である。
✳︎
私は興奮冷めやらぬ中自宅に戻った後、ラオシャと共に姫李さんから渡されたウィルドのカードを閲覧していた。
カードの中の情報には姫李さんの簡素な内容と連絡先、それに三年前の皧狐の記録が記載されていた。
「あの久木野姫李が自分の情報を渡す事は滅多に無い、誇っても良いぞ小夏」
「書いてある情報量、皧狐の方が多いけどね⋯⋯」
「くっふっふっふ」
取り敢えず姫李さんのIDをチャットアプリに登録しておくとして⋯⋯。
「う〜ん、結局今回は皧狐は襲ってこなかったんだよね。ラオシャはどう思う?」
「なんとも言えんのう。姿を表したのじゃから、てっきり毎回襲ってくると思っておったが」
「相手にも都合があった⋯⋯ならさあ」
「妙な気は起こすでないぞ。言っておくが、あやつらは人を殺しておる。そんな奴らと仲良くなろうなどとは考えない事じゃ」
「まだ何も言ってないじゃん⋯⋯でもまあ、大体は当たってる。話が通用するのなら、倒す以外の解決策もあると思っちゃうんだよね」
「その具体的な考えは、次の集会まで取っておけ。お前だけの問題では無いのじゃからな」
「それもそうか〜」
大きく背伸びをして身体の力を抜いた。考える力も抜くと、眠気も同時にやってきた。
「大学もあるし、早いとこ寝ますか。ライブの事、話してあげるよ、ラオシャ」
「お、是非聞かせてくれ。モモとやらはどうだったんじゃ?」
✳︎
「六花〜、ライブ、楽しかったねぇ」
「⋯⋯」
「また、次も一緒に行こうね⋯⋯今度はみんなでさ」
「⋯⋯」
以下後書き
「希望の叶え歌」
作詞 衣江犬羽
どんな未来でも 紡がれていけ
キミの横を歩いていくよ そうしたら晴れ渡っていくから
新しい出会いに 心がまた満たされるかも
ひょっとしたきっかけから夜空の星達を
輝かせていく 一つ一つの光がほら
ありふれた日常に 置き忘れた思い出も
アナタの宝物だから
花を咲かせよう(一輪の花を)
キミと歩いたこの道が ほら 軌跡
夢は終わらない(想いは巡って)
キミがくれた勇気が 芽生えていくから
どんな未来でも
キミと一緒なら
アナタのそばにいる事 それだけが私の願いで
沢山の光が 私の陰を大きくしても
アナタの居ないこの道に 私が歩いても
導いてくれる? 輪廻の輪に咲く花のように
空はどこまでも(繋がっているなら)
自由に翔べる 追憶の翼を下さい
夢が潰えても(薪を焚べていこう)
アナタの歩いた軌跡にいる私が
焔を灯すから
紡がれていけ
忘れないで この生きている時間を
夢は終わらない(想いは巡って)
キミがくれた勇気が 芽生えて行くから
花を咲かせよう(一輪の花を)
キミが咲かせた心よ、眩く輝け
どんな未来でも
紡がれていく
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