名ばかり神無月

もみじが色づくにはまだ早く

降る陽光は明るく強い


秋とは名ばかり

夏の名残が強すぎて


そんなわたしに

ちょっと待ってと

誰かの声が耳元に響く


涼やかな風が肌を撫で

金木犀の香りを零していった


だって見えるところからじゃ

面白くないからね


くつくつと悪戯っ子のような声は

秋のそれだったのか


足を止めても再びの声は聞こえずに

ただ

道には影が伸びるだけだった

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