さながら秋風の如く:2 再び走り出した君へ

彼方から響く 君の名を呼ぶ声

立ち上がった君は もう私を見ない

君は行く 私を置いて


君が流した涙は 再びの始まりのしるし

流れ始めた風 回り始めた時計

世界はまた 君のために動き出す


君の心臓は鼓動を刻み

こぼれた笑顔はあの子に向けて

そして 君はまた走り出す

私のことなど忘れて


掌にあったはずの君の心は

幻でしかなくて

傍に居ると 私に呟いた言葉も

幻でしかなかった


だから私はこのまま

此処でそっと 瞳を閉じましょう

たった ひととき

この場所に居てくれた 君の

揺らめく笑顔を 胸に抱き

そっと眠りに着きましょう

走り出した君が

再びここに戻ってきたりしないように


ああけれど けれど一つだけ

願わくば


私の思いのひとかけらが

君の心の奥深くで そっとそっと

息づいていますように




―― 水晶/凍った心の欠片たち



「vertige」様(現在は閉鎖)の「宝石イメージで5つのお題 寂しい心編」より

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