香花は五つ歌を奏でる:4 香花は秋雨を願う

薄闇に漂う霧の合間

切れ切れに広がる甘い香り

次いで広がる細い声

濡れた耳を澄ましてみれば

雨願いの歌が聞こえた


一雨ごとに夏は去り

一雨ごとに秋が来る

だからどうか

時だけが過ぎてしまわないように

雨よ 雨よ

秋がちゃんとこの地へ

やって来れるよう

導いておくれ


金花の歌は細く微かに頼りなく

香りと共に風に乗る

水を含んだ風はいずれ近いうち

雲を導き雨を降らすのだろう


その雨できっと

あの金色の歌い手たちは

全て散ってしまうのだろう

あの甘さも全て雨に洗われて

まるで何も無かったかのように


それでも金花は歌うのだ

それでも雨を願い

それでも秋を願うのだ



―― 金木犀「涼気を迎えに広がる」



「回遊魚」様(現在は閉鎖)の「香る花五題」を元に。

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