どうも。異世界生活はじめます

綾辻 月彦

プロローグ

「アイス・ウォール」


 この言葉とともに地面から2.5Μメートルの氷の壁が出現し、2Μメートルほどのゴーレムの動きを止める。


「タイダル・ストーム」


 水の渦でゴーレムを囲み粉砕する。


 もちろんこれは現実ではなく、ゲーム世界での出来事だ。彼が今していたゲームは「LAST・BRAVE」というVRMMOだ。キャッチコピーは『様々なスキルや魔法を使って強大な魔王軍を蹴散らそう!!』というもので、簡単に言えば、スキルや魔法を駆使し、魔王討伐を目指すというものだ。かなりの超大作でサービス開始から3年たっているのだが、未だに制覇したプレイヤーはまだいない程だ。それ程の容量なのにまだ一度もバグが起こっていないのはプレイヤー人口6000万人という人気の要因の一つだろう。


 彼の名は、林 侑。17歳で、高校2年生だ。身長は175㎝で太ってはいないが、痩せているとも言えない位の体型。友達はそれなりにいて、学力は学年で上位35%辺りの学力。ちなみに、侑の通っている学校は県で中間より、少し上位の学力だ。運動神経は中学生の途中からゲームにはまり、そこから悪くなってきている。ただ、一般の人並には動ける。このように、特に目立った特徴のない普通の高校生だ。そんな侑の身にあんな事が降りかかるとは、誰も考えてもいなかった……


 ある日の放課後、いつものように家でLAST・BRAVEをプレイしていた。


「次はアンデット系だから光魔法を予約しとこ」


 このゲームには戦い方がいくつかあって、主に武器を使う戦士系と、魔法を使う魔法使い系に分かれる。


 戦士系のメリットは魔法と違って、詠唱がないためタイムラグ無しに攻撃することが出来る。デメリットは物理耐性が高い相手には何も出来ないことだ。


 魔法使い系のメリットは戦士に比べて威力が高く、範囲攻撃が出来ることだ。更に、物理属性をもつ魔法もあるので、魔法に高い耐性を持っている相手にもなんとかなる。デメリットは詠唱によるタイムラグと隙だ。このデメリットは魔法の予約が出来るので、1度なら大丈夫なのだが、2回目は予約出来ないのでやはり隙などは出来る。


 ちなみに序盤で侑が無詠唱で魔法を使っていたのは、熟練度を上げて詠唱時間を短くしていたからだ。中級の魔法までなら熟練度を上げれば無詠唱で撃つことが出来るようになる。上級の魔法も無詠唱は無理だが、詠唱時間を短くすることは出来る。補足すると、熟練度はすべて使うことで上がっていく。なので使えば使うほど強い魔法を撃つことが出来る。


「やっぱ光魔法の熟練度上げとかないとなぁ」


 スケルトンドラゴンを魔法4回で倒しそうつぶやく。ちなみに一番得意な魔法は水魔法で、一番苦手(使ってないだけ)なのは、闇魔法だ。属性は、火→風→土→水→火となっている4属性と対極の光と闇、そして、空間の7種類ある。


そんな調子でモンスターを倒してドロップアイテムを回収しているとき事件は起きた。


「なにこの魔力と威圧感!? ゲームでこんな感覚来るはずないでしょ」


 ゲームではあり得ない程の感覚と威圧感に3年間このゲームをプレイしてきた侑もかなりビビる。


「うわっ、いきなり周りにモンスターがポップ!?」


 周りにポップしたモンスターは6割程がアンデット系、4割程のオークやオーガそして中にはあるダンジョンのボスであるケルベロスもいる。一体ずつならまだしも、囲まれていてしかも、恐ろしい程の魔力をもつ主はまだ出てきていない。


「とりあえず『タイダル・ストーム』」


 アンデット系は殺す事は出来ないかもしれないが、まずはそれ以外のモンスターを排除するため水の範囲魔法を放つ。


「やっぱアンデットは無理か。光の範囲魔法覚えとけばよかった。まあ、しょうがない。『究極の光アルティメットフラッシュ』!」


 究極の光アルティメットフラッシュは侑が使える唯一の光の範囲魔法だ。魔力の消費が激しいため、一度使ったら大体10時間たたないとまた撃つことは出来ない。しかし効果は凄い。その効果は、自分から半径20Μ以内の同格以下のアンデット系をすべて消すというものだ。さすがに威圧感を放っているやつは消えていないがそれ以外の敵を全て排除することは出来た。


「早く出て来い威圧感の主!」


 そう侑が叫んだ瞬間、反応出来ないスピードで何者かが後ろに回り込み、首を絞める。そのまま、侑は何も出来ないまま意識を失っていった……

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