2
「痛い、痛いよっ、お父さん、やめてっ!」
俺は必死にそうお願いしていた。
それでも降ってくる拳は容赦なく俺を殴り続ける。
「おとうさ…っ、やめ……っ、」
俺は5人兄弟の1番上だった。お母さんはお父さんの毎日の暴力に耐えきれず、居なくなってしまった。お父さんの元に残ったのは、俺と3つ下の弟だけだった。
「……………っ。」
今日もやっと痛い事から解放される時には、アザだらけになって、口が切れて血が出ている。
「お兄ちゃん………ごめんねっ………。」
「………ばーかっ…きにすんな、お兄ちゃんは大丈夫だから。」
そう言って弟の頭をなでる。弟だけはこういう思い、させたくなくて。
「お兄ちゃん、口から血が…」
弟は、口を拭いてくれる。
「ありがと、ごめんな。」
あぁ、痛いな…。こんなお兄ちゃんでごめんな。こうすることでしか、お前を守ってやれなくて。
「………っ、」
痛さより、自分の弱さに涙が出てきた。
どうして、俺はこんなにも弱いんだろう。
少しくらい反抗したっていいんじゃないか。
いや、反抗すれば今度は弟がターゲットにされてしまう。それだけは絶対にダメだ。
俺は、お父さんのストレスを発散する唯一の方法らしい。
俺も狂ってしまったのか、こうされることで愛されていると思ってしまうようになった。
弟は暴力じゃない愛情、俺には暴力という愛情。
俺も、愛されているよね…??弟とは、違うだけだよね…?大好きって言うのを、言葉にしないで教えてくれてるだけ、だよね??
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