第12話 切り裂きジャック(1)
さて。
切り裂きジャックを調査する――とはいえど、そう簡単に見つかる訳もないし、何処から探せば良いのか分かったものでもない。
図書館で調べた知識をどう使ったって、切り裂きジャックに辿り着けるはずがないのだから。
けれども、のぞみとひかりはやる気だ。
どうしてそんなにやる気なのだろうか?
「だって、非日常を探すのって楽しいじゃない」
のぞみはそう言ったけれど、別に切り裂きジャックを非日常だと判定した覚えはないからな。切り裂きジャックは確か実在する殺人鬼だったはずだし。
「詳しいね……。でもまあ、確かにその通りだよ。イギリスに居たとされる、実在の殺人鬼。それが切り裂きジャックだ」
因みにフィールドワークにはエルザさんも同行だ。
刑部を知らないってこともあるし、ついでに教えてあげようじゃない! っていうひかりの提案からである。
ひかりは、優しいんだか優しくないんだか、時折分からなくなるな――いや、ここだけ切り取れば、優しいことは確かなのだけれどね。
「イギリスに突如として現れた正体不明の殺人鬼……。それが切り裂きジャックです。喉を切られて、かつ腹部も切られている死体が特徴である――とも言われていましたね。だけれども、どうしてか見つからなかった。それはもう、人類のミステリの一つでもありますよね。きっと、もう解決することはないのでしょうけれど」
「百年以上昔の話でしたよね? だったら、確かにそうかもしれませんね……。きっと、永遠に謎は解けませんね。もしシャーロック・ホームズが実在でもしていれば、もっと話は別だったんでしょうけれど」
「シャーロック・ホームズが実在していたら、薬物常習者で捕まっていたと思いますよ。彼は、コカインやモルヒネを使っていましたから」
「ああ、そういえばそうでしたっけ。最近のドラマでは流石にそれは不味いと思ったのか、ニコチンパッチを使っているんだとか。……随分とグレードが下がりましたよね」
「テレビで放送出来る限界がそれだったのでしょう? だったら、致し方ないと思いますけれどね。……でも、確かに探偵は欲しいものです。切り裂きジャックなんて、本当に目の前に出現したらどうすれば良いのやら」
「防犯ブザーを鳴らすのは駄目かな?」
いきなりひかりが割り込んで来たけれど、駄目に決まっているだろ。
それで解決すると思っているのなら、ちょっと考え直した方が良いぞ。
「切り裂きジャックを探そうと言ったって――」
のぞみは呟く。
「こんな明るい町並みじゃ、見つかるはずもないんだよね……」
そう。
そう思うのも、致し方ない――今、僕達がいるのは刑部駅の駅前。
時刻は午後八時を回った辺りか。今日はひかりの家に泊まると言っているので門限自体は問題ないのだけれど、あんまり遅い時間に中学生がふらつくのも宜しくない。だから、こういう場所にしか留まることが出来ないのだけれど……。
「そんなに嫌なら、諦めるか? 切り裂きジャックの調査」
僕の言葉に、のぞみはぶんぶんと音が聞こえるぐらい激しく首を横に振った。
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