第11話 自由研究のテーマ(2)

「都市伝説も色々と面白いんだよねー……。ちょっと調査してみるのも良いかもしれないね?」


 のぞみがそんなことを言い出すので、最早誰にも止められなくなってしまった。

 お前、どちらかというとストッパーの役目だろ。


「都市伝説かー、確か時速百キロで走るばーさんとか居たよな? 競争してみたいな!」


 ひかりは何を言い出すかと思いきや、完全に馬鹿な発言だ。

 いや、逆に年齢相応な発言だったりするのか……?


「ところで、その月刊パンゲアにはどんな都市伝説が掲載されているんだ?」

「ええと……」


 のぞみがパラパラとページを捲っていく。

 因みにその間に調べておいた情報によると、月刊パンゲアはサブカルチャー雑誌としては有名な雑誌らしい。主なカテゴリはオカルト。それに傾倒していて、オカルト一辺倒で出している雑誌は、最早月刊パンゲアしかないらしい。しかし、オカルトだけで月一発行というのも凄いな……。


「地方都市と言っているだけあって、確かに聞いたことのない場所だらけだけれど……、でも大抵面白いような、明らかに嘘みたいな都市伝説だらけで、ちょっとだけ拍子抜けって感じ。例えば城塞がロボットに変形するとか、駅舎がロボットに変身するとか、市役所がロケットになるとか」


 何だよ、それ。

 戦隊ヒーローもびっくりな展開だよ、それ。


「……で、我がこの町には何か都市伝説が?」

「いや、あることはあるんだろうけれど、どうなんだろう? この都市伝説、ちょっと危険が及びそうというか何というか」


 危険が及びそう?

 何だろう、紫鏡とかそういう類いの都市伝説?


「ええと、簡単に言うと、切り裂きジャック?」


 切り裂きジャック?

 確かイギリスに居たと言われる大量殺人鬼のことか?


「そうそう。その切り裂きジャックがこの町に住んでいるんじゃないか、って噂……。住んでいる、というよりは拠点にしているって感じなのかな? でも、もしそうだとしたら殺人事件とか起きてもおかしくなさそうではあるのだけれど」


 出来れば起きて欲しくないけれどな。

 物騒であることは間違いないのだし。


「……でも、それって面白そうじゃね?」


 どうやらひかりは乗り気らしい。いやいや、普通に考えて殺人鬼と遭遇したらどうするつもりなんだ? リスクマネジメントを少しは考えた方が良いと思うぞ。……まあ、学生のうちからリスクマネジメントがどうこう言いたくないのは分かるけれど。


「うんうん。私もそう思うな、面白そうじゃない? その都市伝説を調査するのって」


 エルザさんも同意するんですか。

 そうなるともう誰も止められないんだよなあ……。


「それじゃあ、私達の自由研究のテーマは……、刑部にある都市伝説の調査に決定!」

「おー!」


 こうして。

 僕達は夏休みの間、現代の切り裂きジャックを調査することになったのだった。

 ……でも、ほんとうに良いのかな?

 安全性とか、考えた方が良いんじゃないかな……。

 そんなことを考えるようになったのは、それから少しだけ後のことだった。

 

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