第2話 神からの着信
『お久しぶりですね、ガラムドです。コンタクト、消していませんですよね? 私、LINEあんまり使い慣れていなくて……。こちらの知り合いに何とかかんとか教えて貰ってはいるのですけれど』
長話をしている暇があるなら、さっさと世界の安寧を確保でもしてほしいものだ――そう思いながら、僕は返信する。
『長々と話をしている暇があるなら、さっさと本題に入ってくれないか。それとも、ただの世間話をしたいがためにLINEを送ったとでも言いたいのか? 言わせねえよ?』
そんなフレーズを使った芸人が昔居たような居なかったような気がするけれど、そんなことはどうだって良い。
『古いネタですねえ……。まあ、神にとって数年なんて誤差ですけれどね、誤差』
神のジョークか、それ。
『で、何の用があって連絡してきたんだ? まあ、あんまり時間は経っていないけれど、もう二度と連絡をしてこないようなスタンスだったような』
『それがですねえ』
言葉を区切ったガラムド。
何か言いたくないことでもあるのだろうか?
『……今、少しで良いです。電話させて貰えませんか? 出来れば、メッセージで残したくないというか』
『何故だ?』
それぐらいやばい事態がやって来ていると――言いたいのか?
『じゃあ、電話しますね』
そう言ってものの数秒で、電話がかかってきた。勿論LINEで。
「はい、もしもし」
『やっほー、ガラムドです。一年ぶりですね?』
読者はそうかもしれねーけれど、こっちは数日ぶりだよ。
『まあまあ、そう言わずに……。じゃあ、本題に入りますけれど、以前、あなたにラブコメを演じていただいたことについては、先ず感謝申し上げます。貴方の御陰で一〇八あるバックアップのうち一つを守ることが出来ました。バックアップを一つの作品世界として独立させることで、その世界の役割をバックアップから外した……。いやあ、我ながら良い判断ですよね。神に感謝しないと。あ、私が神でしたか』
相変わらず口うるさい女神だこと。
『……口うるさいとか思っていないですよね?』
「え?」
何で分かったんですか、そのこと?
『私は一応神ですよ? それぐらい分かって当たり前じゃないですか』
「一応って……。まあ、確かにあんまり信仰している人居なさそうですよね。歴史から消されでもしたんですか?」
『もっと上の次元に居るから、認知されないだけですよ。まあ、名前が知られている神は大変だと思いますよ。何せ、人々から忘れ去られたら、イコール死に繋がりますからね。人気を取るのも大事、って話ですよ』
「……で、本題は何ですか。まさか、世間話をしたいから電話した訳じゃないですよね?」
『あー、それなんですけれどね……。ちょっとあれから面倒なことになりまして。簡単に言っちゃうと、天使の配置換えです。あの二人、覚えていますよね?』
「あの二人ってどうなったんでしたっけ……?」
『一言で言えば行方不明。難しく説明すると、かなりの量の説明が必要になりますけれど。それとも、その説明を必要になりますか?』
いえ、結構です。
『……で、まあ、それから色々ありまして。私の管理責任も問われた訳ですよ。一応、天使も管理していますから、私。でも天使も世界も管理しないといけないんですよ、たった一人で。それ、出来ると思っているんですかねえ? このシステムを構築した前代の神……ううん、或いは、それこそ「創造主」に訊ねてみたいところではありますけれど』
「創造主、って……。あんたがその創造主じゃないのか」
『私はあくまでこの世界の管理を任せられただけに過ぎないのですよ。ただし、神が交代した段階で、過去・現在・未来全てのシステムが書き替えられて……昔からずっと自分が管理していたかのように成り代わります。そして、それを知ることが出来るのは、量子コンピュータと神自身に過ぎません』
「前も思ったんですけれど……量子コンピュータがあるってことは、僕達の『外』の文明って相当凄い文明なんですね……」
『親より優れた子供なんて滅多に居ませんからね』
即答かよ。
『で、話は戻りますけれど……やっぱり引き続きラブコメを演じていただきたいんですよね』
「いや、何でですか。世界が消滅する危機は脱したんでしょう? だったら別に必要ないというか……」
『そこが問題でしてね』
「はい?」
『実は天使の中で謀反を働いている連中が居て、いつその世界が「バックアップ」として再成立するか分からないんです。ですから、その天使が見つかって、その可能性が排除されるまで……再びラブコメを演じて欲しいんですよ』
何を言っているのか、さっぱり分からなかった。
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