色の世界・音の世界

かおもじ

プロローグ

死にたい


そう思ったのは小学六年生の時。

学校でいじめられ、先生も相手にしてくれず、親は毎日仕事。


苦痛でしか無いわたしの人生を投げ飛ばしたかった。



階段の手すりを掴みながら私はビルの屋上へ向かった。

ドンッ

―――っ?!

「あ、ご、ごめんなさい…」

「…………」

「?」

「…………」

「あ、あの…」

ギュッ (手を握られる)

「な、なんですか?!」

『目が見えないのですか』

―――聞こえてきたのは女性の電子音

『僕は耳が聴こえません』

「耳が聞こえない…?」

『僕の耳元で大きな声で話してくれれば少し聴こえます』

「き、聞こえますかぁ?」

『はい』

「あ、あなたは話す事が出来ないんですか?」

『自分の声が聞こえません』

「そ、そうなんですね…」

『あなたは、なぜ屋上にきたのですか?』

「そ、それは…言いたくありません…」

『自殺ですか?』

「?!な、なんで」

『障害者は自殺をしたくなりますから』

「じゃあ、あなたもですか?」

『僕は自殺をすることをやめました。』

「なぜ…ですか?」

『自殺をしたらこの病気に負けるという事だからです。かっこ悪いでしょう』


かっこ悪い…?なにが?生きている事がかっこいいっていう事?


「私にはその考え方はできません…」

『大丈夫です。僕も自殺を繰り返してきましたから』

『だから、あなたも、もう少し生きてみませんか?』

「え?」

『ほら、早く帰りましょう』

「ちょ、ちょっと?!」




―――そうして

私の一度も送ることの無かった青春が始まる



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