94.第2回鉱山攻略 その3
「あぁもう! 敵がどんどん出てきてウザい!」
「嬢ちゃんが笛吹き妖精を警戒せずに進んだせいだろうが!」
「だって、ここまで酷いことになるとは思わなかったんだもん!」
「だもんじゃねえ! ともかく、逃げるための道を開くぞ!」
うちのお姫様が無警戒にズンズン進んでいった結果、いうまでもなく笛吹き妖精の警戒網に引っかかる。
そこから先は、ハイオークやらハイコボルトやらが続々出てきて、サイでも倒しきれなくなってしまったのだ。
笛吹き妖精はなんとか見つけ出して倒せたが、増援が止まっただけで今いる数は減らない。
逃げ出すのも容易ではないので、ここで持久戦を繰り広げているわけだ。
「おっと!?」
俺の頭めがけて、ハイコボルトのボウガンが狙い撃ちしていたらしい。
後衛退治は俺の仕事だが……数が多くて対処しきれない。
「てい!」
「ギャウ!」
今、撃ってきたハイコボルトは倒せたが……数は相変わらず多いな。
サイたちの支援は期待できないし、地道に倒すか。
「次、そこ!」
「キャン!」
「そっちも!」
「ワフ!」
ボウガン持ちのハイコボルトを優先して倒していく。
サイにはほぼ効かないが、文房具トリオには大ダメージだろうからね。
「まだまだ!」
「ワン!」
「ギャン!」
「ガフ!」
結局、ハイコボルト狩りに要した時間は15分以上で、そこからサイたち前衛陣のサポートに入り、戦闘終了までは1時間以上かかった。
「わかったか、姉ちゃん。なんの注意もなしに、この草原を進むとああいう目にあうんだよ」
「骨身にしみました」
「さって、どうすっかなぁ。ノート、コンパス。消耗品はどの程度残ってる?」
「ほとんど残ってないよ。そういうペンは?」
「俺だってすっからかんだ。姉ちゃんたちは……持ち込みが多そうだから、まだ余裕があるか」
「あるにはあるが、5人分となるとかなり厳しいぞ」
「仕方がない。一度、ガオンたちのところに戻って補給だ」
「えー、先に進まないの?」
「誰のせいだ、誰の!」
「落ち着け、ペン。まあ、俺も言いたいが」
「ともかく、戻ろうぜ。……サイの嬢ちゃんはあんな不注意に進むんじゃなく、常に笛吹き妖精の状況を見極めてな」
「はーい。厄介なミッションだなぁ」
帰り道は特にモンスターとエンカウントすることなく戻ることができた。
そして、補給に戻ってきた俺たちを『やっぱりか』といった様子でガオンが見つめてくる。
「お帰りなさい、サイさんたち。大方、サイさんが暴走して笛吹き妖精を無視、その結果大量のモンスターに襲われたというところでしょうか」
「よくわかってるじゃねえか。その通りだぜ」
「そんな気はしていたのですよ。補充アイテムは準備してありますので、それを持っていってください」
「わかった。俺たちはそっちでアイテムを補充してくるぜ」
文房具トリオは奥にある補給品スペースへと消えていった。
残ったのは俺とサイ、ガオンだが……うん、空気が悪い。
「サイさん。あなた、説明は聞いていたでしょう? いくらあなたのレベルより低い、ハイオークやハイコボルトの群れとは言え、数の暴力で襲ってくれば勝ち目はありませんよ」
「うぅ……痛感してるから、いわないで」
「まったく、フィートさん、この猪突猛進な性格、どうにかなりませんかね?」
「多分無理だ。サイはゲームではこのプレイスタイルを崩すつもりはないらしいからな」
「余計に厄介ですね。……そうそう、それならば、フィートさんがパーティリーダーをしてはいかがでしょう?」
俺が?
経験もないのに?
「いや、無理があるだろう……」
「そうでもありませんよう? 笛吹き妖精の索敵範囲はスナイパーの有効射撃距離よりも狭いです。うまく、先手をとって見つけていければ、笛吹き妖精を無力化できます」
「でも、倒しきれなかった場合は? 結局、笛を吹かれるんじゃないのか?」
「ご心配なく。ノンアクティブ状態、つまりこちらを発見していない状態の笛吹き妖精に攻撃をできれば、持っている笛を確定で破壊できます。その結果、笛吹き妖精はモンスターを呼び寄せることができなくなるのです」
「ずいぶん便利な仕掛けだが……それなら、先に教えてくれればいいんじゃないのか?」
「まず、笛吹き妖精を先手で見つけるのが難しいんですよ。次に、笛吹き妖精の索敵範囲より広い攻撃距離を持つのは、スナイパーだけでほかの武器はすべて索敵範囲内ですからね」
「ガンナーじゃないと無理なわけか。面倒なザコだなぁ」
「まったくです。ともかく、一度試してみる価値はあるかと」
「わかった。サイもそれでいいな?」
「あれは二度とやりたくないから、了解」
ガオンが最初からこの説明をしなかったのって、サイの勢いを削ぐためでもあったんじゃなかろうか。
ともかく、これで、光明は見えたわけだ。
俺たちも消耗品を補充して、次の出撃に備えよう。
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