92.第2回鉱山攻略 その1

長らくお待たせしました。

連載再開いたします!

ラストまで突っ走れればいいなぁ……


**********


 なんだか大事になっていそうな樹氷の大森林攻略から数日後、今度はガオンたちとともに鉱山攻略の予定だ。

 集合場所に行くと、まだ30分前なのに今回の参加者であろうプレイヤーたちが勢揃いしていた。

 その中にはもちろんガオンも含まれている。


「ガオン、悪い。遅くなったか?」


「いえ、僕たちが早く集まりすぎているだけです。お気になさらず」


「そうは言われても……かなりの人数だぞ?」


「それだけ地下十三階は厄介だということです。今回はサイさんたち以外の戦闘系パーティ複数にも集まっていただき、数で広範囲を調べたいと思います」


「わかったわ。ちなみに、地下十二階のモンスターハウストラップは解除できたの?」


「なんとかギミック解除ができました。なので地下十二階は、そこまで消耗せずに通過できます」


「ってなると、本気で地下十三階なわけね……ガオン、そっちの情報プリーズ」


「……すみません。渡せるほどの情報がありません」


 おや、珍しいな。

 ガオンたちだったら、喜々として調べそうなものなのに?


「ガオン~。その情報集めから、ってわけじゃないでしょうね?」


「申し訳ありませんがそうなります。地下十三階からは、出現するモンスターのタイプも変わり、苦戦を強いられました。幸い、罠は体半分程度の深さしかない落とし穴や、草で作ったスネアトラップといったものしか確認されていません。面倒なだけで、殺意の高いものはありませんでした」


「罠の殺意が低いなら、どうして情報集めが進んでないのよ?」


「モンスターが強いのです。ハイコボルトが10匹以上の集団で襲いかかってきたり、ハイオークが群れで攻めてきたり、トロールが数匹で固まって行動しているのも確認しています。なにより厄介なのは、笛吹き妖精というモンスターが周囲を巡回していることです。この妖精の戦闘力は皆無です。ですが、こいつらに見つかると笛を吹き鳴らして、周囲のモンスターをおびき寄せるという厄介な行動をとります」


「それって、先に見つかったらアウトじゃないか?」


「はい、フィートさんの言うとおりです。おかげで、十三階の探索は進まず、僕たちだけでの探索は不可能という結論に至りました」


「あー、それは仕方がないかもね。笛吹き妖精、本気で邪魔だし」


「サイは会ったことがあるのか?」


「ほかのダンジョンでね。早く倒さないといつまでも笛を吹き続けるし、段々音量も上がるんだよね。それに伴って遠くのモンスターも呼び寄せるから……邪魔」


 サイが邪魔というのだから、本気で邪魔なんだろうな。

 ということは、俺が先手をとって倒していくべきか?


「あと、気配察知とかの探索系スキルに引っかからないのもめんどくさい。やたら小さいから目視もしにくいし、面倒」


「サイがそこまで言うのか……」


「邪魔で面倒なのは事実だもの。そんなのがいる場所に行きたくないなぁ……」


「仕事だと思って諦めてください。運良くでも、下の階に通じる階段が見つかれば、そこまでの最短ルートを割り出して突っ切るようにしますから」


「地下十四階も同じだったらどうするのよ?」


「……そうじゃないことを祈りますよ」


「なんとも、たいそうなことで」


「仕方がないでしょう。それに、おふたりが攻略した樹氷の大森林。あれの探索にも人を割かなければいかなかったわけですし」


「さすがにそれは八つ当たりじゃないの? 別に、このギルドでクリアしなければいけないわけじゃないでしょうに?」


「いえ、最初はそう思っていて場所の特定に人を出し、あとは全スルーのつもりだったのです。ですが、あそこの難易度が高すぎる、となってしまい、僕たちのギルドにお鉢が回ってきて……」


「それは、ご愁傷様だ」


「まったくです。……結局、僕たちでもクリアできず、戦闘系クランの力を借りて腐葉土を2つ集めることになりましたが」


「じゃあ、腐葉土は今週分集まったんだ」


「ええ、薬草園の腐葉土数も3/10になっていましたし、大丈夫でしょう」


「じゃ、そっちの方は任せてしまって問題ないよね?」


「サイさんたちはもう行かない気なんですね……」


「旨みがない。めちゃくちゃ疲れるわりに、実入りがないもの。行きたくない」


「仕方がありません。僕たち生産者グループでなんとかします」


「任せた。それで、今日潜るパーティ編成は?」


「前回と同じ、サイさんとフィートさん、それに文房具トリオの5名パーティで潜ってもらいます。といっても、十三階まではほかのパーティも一緒なので、賑やかだと思いますが」


「りょーかいりょーかい。ほかに気をつけることってある?」


「できれば、モンスター素材はできるだけ回収してきてもらいたいことと、採掘ポイントがあったら場所は記録していなくてもいいので、あったことだけは報告してください」


「場所の記録はいいの?」


「場所がわかっていても、モンスターに阻まれて容易にたどりつけませんからね。採掘ポイントの有無と、採取できる鉱石のレア度を天秤にかけて今後どうするかを考えます」


「わかった。ほかには?」


「ほかに、ですか……とりあえず、全滅だけには注意してください、としか。ハイコボルトは、ボウガンで遠距離攻撃もしてきますし、ハイオークは攻撃力も生命力も高いです。トロールの再生能力は……説明するまでもないですね」


「いいたいことは理解したわ。出発時間はいつ?」


「あと30分後くらいです。それまでは英気を養っていてください」


「よっし、食べるわよ、フィート!」


「満腹度の補充だな」


「そういうことよ!」


 サイはゲームの中なので太らないことを利用して、ドカ食いをする。

 まあ、俺も満腹度がMAXになるまでは付き合うとするか。

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