89.樹氷の大森林 2
『いやいやまてまて』
『さらっと爆弾発言飛び出してるんですけど!?』
『金王林檎ってあれだよな、いま生産スレで話題の』
『おう、俺生産職だから知ってる』
『ちょっ、彼氏さん! どこでフラグ踏み抜いたの!』
「んー、話したくないかな?」
「そーそー。私たちが攻略失敗したときのためにね」
『ちょっと生産スレいってくる。この配信見ろと』
『行ってこい。さすがに俺らだけじゃ荷が重い』
『サイちゃんアーカイブは?』
「クリアできたら残します。できなかったら削除だね!」
『ですよねー』
『とりあえず生産スレでも呼びかけてきた。……大混乱だったが』
『そりゃ混乱するだろ』
『純生産プレイヤー以外が見つけたなんて知ったら』
『まったくです。せめて情報を見つけたなら教えてほしかった』
『お、生産スレから登場か?』
『ガオンです。よろしく』
『ガオンっていったら生産職協同組合か』
『……あれ、サイちゃんたちあそこに協力してなかったっけ?』
「今回はフィートが自力で見つけたので生産職協同組合とは関係ありません! 残念でした!」
『はぁ……あなた方には借りが山のようにあるのでなにも言えませんね』
「とりあえず、先に進まないか? いつまでもここにいるわけに行かないし」
「そうだね。多分あの森もダンジョンで迷路だし」
「面倒だな」
「面倒だよ?」
空を飛んで楽に……とはいかないんだろうなぁ。
諦めて地上をいくか。
そんなことを考えていた時間もありました。
「ちょっ! ここの敵、本気で殺しにやってきてる!」
「バステ山盛りとか聞いてないぞ!?」
「私だって知らなかった! 凍傷に氷結、悪寒、風邪。冷気系バステ全部盛りじゃない!」
「回復薬はあるけどどうするんだよ!」
「もちろん、特攻!」
「だよな……」
『サイちゃんが脳筋なのは諦めよう』
『とりあえずこのダンジョンに挑むときは冷気系バステ対策は必須と』
『あと、彼氏さんとサイちゃんの防御力が高すぎるからごまかされてるけど属性攻撃力もやばい』
『……これは生産職にはきついダンジョンですねぇ』
『設計者、なにを考えてこんなダンジョンにしたん?』
『せめてもの救いはスノーゴーレム系からフロストゴーレム系に切り替わって純粋物理攻撃でも破壊できるようになったことか』
『でもどちらにしても炎武器は必須』
『意地の悪いダンジョンだ』
「……! 見て、フィート! あそこにキャンプポイントが!」
「わかった! ……途中に罠とか仕掛けられてないよな?」
「漢解除!」
サイがキャンプポイントに立ち入る直前、ものすごい爆発が起こる。
もちろん罠のひとつである地雷が炸裂したわけだが……サイは無傷だな。
「よっし、これで安全!」
「無茶すんな」
「これが私のダンジョン踏破法!」
『諦めろ彼氏さん』
『サイちゃんはいつもこうだから』
『ときどき落とし穴にはまるんだけどなw』
『そこもまたご愛敬でw』
……とりあえずサイのダンジョン攻略方法がどんなものかはわかった。
少しは考えてほしい……いや、考えた結果がこれなのか。
「フィート、途中で拾った薬草でポーションの補充ヨロ!」
「はいはい」
この森、結構な量の薬草が採取できてそれらはすべて冷気系バステ対策のポーション材料だった。
つまり、最悪でも調合できる人間がいればここでポーション調達ができると。
「ポーション調達が終わったらいよいよ後半戦だね」
「楽だといいんだけどなぁ」
「きっといままでよりも大変だよ!」
「やめてほしいなぁ……」
『彼氏さん、ぎりぎりだものね……』
『サイちゃんは余裕あるけど、打ち漏らしが彼氏さんに向かうと一気にピンチになる』
『しかもAIが弱いプレイヤー優先攻撃!』
『鬼仕様!』
『……本当にどうやって攻略しましょうか』
「さあ、準備できたね! いざ、出陣!」
「おー」
サイが言っていたとおりここからは後半戦、のはずだが一度に出てくるモンスターの数は減っている。
おかげでサイがサクサク倒して先ほどまでよりも早いペースで進めてしまうほどだ。
前半は数で押し、後半は質で攻めてくるダンジョンなのかな?
「……あ、見て。また、キャンプポイント」
「だな。そしてその先に高台へ続く道があるってことは……」
「ここがゴールでボス戦だね!」
「だよなぁ」
『ふむ、ここまで1時間か。そこまで長いダンジョンじゃない?』
『あとはボスだな。サイちゃん、ボスは配信するの?』
「するよー。華麗に一発クリアを目指します!」
『すごい自信!w』
『可能性はあるからなw』
『頑張れ』
「がんばるよ! さあ、いくよフィート」
「はいはい。ってもうボスか」
坂の途中にあった平地、そこがボスエリアである。
そこから出現したのは……。
「黄金樹の守護者!?」
うーん、いまいち歓迎されてないみたいだな。
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