79.鉱山攻略 その2
「文房具トリオ?」
「そう、文房具トリオ。ね、ガオン」
「ええ、文房具トリオですね」
確かに名前は文房具そのままなんだが……それでいいのか?
「おう、フィートって言ったか? 俺らの名前は気にするない」
「そうそう。ゲームを始める前からこの名前でいこうと決めてたからな!」
「この名前が取れなかったら、シャーペンとか万年筆とかいろいろ候補はあったんだぜ」
「……とまあ、本人たちがこう言っているのですよ」
確かに文房具トリオだ。
それもかなり気合いの入った。
「フィート、深く考えるだけ無駄よ。こいつらってこういう性格だもの」
「そうですね。こういう人たちだと割り切ってもらえれば幸いです」
「細かいことは気にすんな、ってことだ!」
「それより、お前たちも席に着け! 乾杯だ、乾杯!」
「これで酒があればなぁ……」
本当に気合いが入っているプレイヤーだな。
これがロールプレイなのか、素なのかは知らないけど。
「ともかく、僕たちも席に着きましょう。料理は……大量にありますね」
「だね。頼む手間が省けたと思っておこうよ」
「サイさんは前向きでうらやましい。……この際、気にはしませんが」
そんなわけで、俺たち3人もそれぞれ席について文房具トリオに促されるまま乾杯となった。
そしてしばらくは宴会のような様相を呈していたわけだが、ふいに文房具トリオのひとりペンが話を切り出してくる。
「で、今日の依頼は銀鉱石の採掘、それも3つで間違いないな?」
「ああ、間違いないぞ」
俺の答えを聞いたペンは顎に手を当てて少し考えてからガオンに話を持ちかけた。
「ガオンの旦那。今日の予定は地下五階からになっていたが、地下十階からじゃダメか?」
「地下十階からですか。確かにレアな鉱石が採掘できる可能性は高くなりますし、可能ならば挑戦してみてもいいのですが……サイさん、どうしますか?」
「そこで私なわけ?」
「負担が増えるのは主にサイさんですからね。地下十階からは敵の強さも一段階上がるんですよ」
「ふーん。まあ、私が前で敵を潰して取りこぼしをフィートが撃ち抜く、そのスタイルが通用するんなら問題ないんじゃないかしら?」
「……そうなると、フィートさんの実力も確認したいところですが……時間がありませんね。サイさんが大丈夫と考えているなら大丈夫なのでしょう」
「大丈夫よ。フィートは武器も新調していて、ガンナーとしては結構いい装備してるのよ?」
「ほう? フィートさん、見せていただいても?」
「うん? 構わないよ」
ガオンにこの間買った銃を手渡してみる。
すると、ガオンが少し驚いた表情を見せた。
「……この攻撃力でこれだけの属性値を付与しますか、なかなかの錬金術士ですね。できればウチにスカウトしたいくらいの」
「そういうの好みなのかなぁ? どう思う、フィート」
「どうだろうな。話すだけ話してみるか」
「是非にお願いします。できるだけ好条件は用意いたしますので」
なんか、レールさんの株がガオンの中で爆上がりしてる。
そんなにいい装備だったのか、これ。
「……これだけの装備も整っていますし、地下十階でも通用するでしょう。目標は十五階ですか?」
「そうなるわな。前衛はそっちの嬢ちゃんと坊主、後衛はノートとコンパスが務めるぜ」
「……戦えたのね」
「普段は3人で地下五階に潜ってるからな」
「最低限の戦闘力はあるぜ?」
「装備も支給してもらってるしな」
「あなたたちからのレア鉱石支給が止まると、僕たちも困りますからね」
「つーわけで、持ちつ持たれつなわけよ」
「なるほどな」
彼らの関係性がわかったところで具体的な話し合いに移る。
なんでも
地下十二階までは行ったことがあり、途中まではマッピングもされているらしいのだが回復薬が不足して撤退したとのこと。
いまなら回復薬も充実してきているし、サイという強力な助っ人もいることで先に進めるだろうと考えたようだ。
「……ってわけだ。完全に未知なのは地下十三階から。そこからは採掘ポイントがあったら採掘してみるが、基本的には先に進むことを優先するぜ」
「了解、こっちは問題ないわ」
「俺も問題なしだ。回復薬、俺たちの予備を渡しておこうか?」
「いや、今回の採掘のためにギルドから結構な数が支給されてんだ。足りなくなったら頼むわ」
「そっちも了解した。それじゃあ、出発か?」
「だな。それじゃ、レアな鉱石が見つかることを期待していてくれよ、ガオン」
「ええ。フィートさんたちもよろしく頼みます。……ああ、あと。私たちでもわからなかった3つめの素材について調査していますのでそちらも進展があったらご連絡いたします」
ガオンに見送られて俺たちは鉱山へと向かう。
さて、鉱山内じゃハイジャンプも使えないだろうし、どうやって戦おうかねぇ……。
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