第12話:凶報・国王視点
スミス公爵とどうやって交渉するか、どれほど譲歩すべきか。
愚かな王太子や重臣の息子は幽閉したが、殺さねばならぬのか。
余りに厳しい処分にすれば、重臣達が離反するかもしれない。
何よりも王妃が五月蠅く騒いで敵わない。
子供の命が惜しい重臣達から賠償金をださせればいい。
王妃の化粧領の一部も割譲させよう。
そこまですれば、スミス公爵も王太子を殺せとは言うまい。
「大変でございます、陛下、王太子殿下が魔人に変化したとのことでございます」
このバカは何をとち狂った事を言っているのだ?
王太子は厳重に幽閉しているではないか。
「何を愚かな事を言っておる、王太子は幽閉しておるではないか!」
「その塔のドアを打ち壊し、見張りの将兵を殺して逃げ出したのでございます。
最初にベアリング侯爵家のキャスバル殿を殺し、今は王都で民を無差別に殺して回っております。
直ぐに手を打たなければ、王家の威信が地に落ちてしまいます」
キャスバルが最初に殺されただと?!
それでは、余が王太子達を監視させていた事に気がついていたと言うのか?
助かった、あの愚か者なら、逆恨みして余を殺そうとしてもおかしくない。
いや、そうしなかった事が不思議なくらいだ。
だが、ここで討伐部隊などだしたら、必ず余に襲いかかってくる。
「その必要はない、放っておけ、それよりも王宮の警備だ。
今王都を襲っているという魔人を、絶対に王城王宮に入れるんじゃない。
王家直轄軍と近衛騎士団には王宮を護らせろ。
王城は一般騎士団と貴族家に護らせろ」
「そんな、それでは王家は民から信頼を失ってしまいます。
王太子殿下が魔人化すような無様な状態では、大陸中の物笑いになりますぞ。
ここは陛下自ら討伐軍を指揮され、王家も名誉と誇りを取り戻さねばなりません」
「ええい、うるさい、うるさい、うるさい。
嘘偽りを申して王家の威信を傷つけているのはお前だ!
王太子は幽閉されて塔にいる、魔人になど変化しておらん。
魔人は日頃から行いの悪い王都の民が変化したのだ。
どうしても討伐したいのなら、息子をむざむざと殺されて武人の名誉を損なった、ベアリング侯爵にやらせればよかろう」
そうだ、それがよい、それで全て丸く収まる。
ベアリング侯爵に敵討ちの機会を与えれば、奴もよろこぶであろう。
数多くの忍者を抱え、戦闘力は王国でも指折りの貴族だ。
魔人と潰し合ってくれた方が、いつ裏切るか分からない忍者が力を持ち過ぎなくて丁度いいだろう。
「陛下、本気でそのような事を申されておられるのですか。
そのような考えだからスミス公爵に見捨てられるのです。
今ならまだ間に合います、どうか今一度ご再考ください」
「ええい、先ほどからうるさいわ!
その者を牢に叩き込んでおけ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます