婚約破棄追放された元聖女は、王太子たちに監視されています。

克全

第1話:監視・王太子視点

 腹立たしい事だが、悪魔のようなアリスを処刑することができなかった。

 真の聖女、オリビアを護るためには、聖女の名を騙っていたアリスを殺さなければならないのだ。

 確実にアリスを殺しておかなければ、オリビアに復讐しようとして、魔の手先を送り込んでくるのは明白なのだ。

 愚かな父上や重臣どもは、そんな簡単な事も分かっていない。

 

 その事は他の者たちも心配していて、恋のライバルではあるが、一時的に求婚争いを中断してまで、手を組んでこうして集まっているのだ。

 父上から王国統治の練習として、王太子直轄領の政務を任されている。

 その為の執務室も王宮内あり、行政官もつけられている。

 まあ、行政官とはいっても、みな高位貴族の嫡男たちだ。

 私が王位を継いだ時には彼らが新たな大臣となるから、彼らも統治を学んでいる。


「王太子殿下、本当に大丈夫でしょうか。

 私を恨んで刺客を送ってくるのではありませんか」


「大丈夫だ、老害どもは役に立たんが、私が必ず護ってあげるから」


 可哀想なオリビア、偽者の聖女の正体を暴いたことで、この国一番の権力者、国王である父上も憚る、スミス公爵家を敵に回してしまった。

 偽聖女アリスは、スミス公爵家の長女なのだ。

 スミス公爵家はその権力と軍事力を使って、事もあろうに魔に魅入られた長女を聖女に仕立て上げ、この国を乗っ取ろうとしたのだ。


 この機会に私や次代を担う若き力で、奸臣を討ち取ろうとしたのに、父上も大臣達もスミス公爵やアリスを庇ってしまった、本当に愚かな事だ。

 いや、それどころか、スミス公爵は王家の忠臣だと言い張って、私の諫言を聞き入れてくださらない。

 愚か者で老害でしかな父上たち、これではこの国が乗っ取られてしまう。

 いや、その前にオリビアが殺されてしまうではないか。


「殿下、それは言い過ぎでございますぞ」


 フィンドデール公爵家のオリバーが文句を言う。

 まあ、私が老害と言った大臣たちは、こいつらの父親の事だからな。


「そうですよ、殿下。

 殿下の力だけで護っているわけではありませんよ、私たちも護っているのです」


 ラジアン伯爵家のチャーリーも文句を言う。

 まあ、確かに、第一騎士団を掌握するラジアン伯爵家の力がなければ、オリビアを警護する兵力を確保するのは難しかっただろう。

 だが、私がいなければ、スミス公爵に加担するラジアン伯爵ジェイコブ卿に命じて、騎士団の一部を聖女調査に使う事はできなかったのだから、全て私の力だ。


 だが、それを口にしてしまったら、私たちは分裂してしまう。

 なんと言ってもみんなオリビアに恋しており、妻に迎えたいと思っているのだ。

 多少の腹立ちは抑えて、協力させなければいけない。


「そうだな、私達が力をあわせなければ、老害どもの悪意を跳ね除ける事はできない、一致団結してアリスを監視し、反論できない犯罪の証拠をつかむのだ!」


「「「「「おう!」」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る