プロローグ 前世の記憶と今世の立場
最初に思い出したのは、
場面が
民衆の
「いまは、いつかしら」
答えは求めていなかった。ただ、なんとなく尋ねただけだ。
再び視線を足元に移す。
見張りは
「そう」
頭を押さえ痛みに
「この悪女め! この
女の言葉に、周りにいた人々がワッと一層
「やっぱり、あの女は悪女だ!」
「先代の
「あの女のせいで国が
「税が重くなったのもあいつが
「あの女さえ! あいつさえいなければ!」
私のせいじゃない。
税を増やさなければいけなかったのは、戦争に備えるため。戦争が起きたのは、敵国の王がこの国の資源を欲しがったから。
そう叫びたくても、次々飛んでくる石やゴミが当たらないよう身を
見張りの態度は当たり前だった。もう私に味方なんていない。何か言い訳するだけ
私は彼の言う通り、断頭台がある広場に着くまで口を閉じ、ただじっと地面に
「降りてください」
そして、断頭台へと連れられ、
「──罪人、元
私の頭上で、処刑人が罪状を読み上げる。
「
でっち上げの罪状に、反論する気力すら
皇帝が毒殺されたとき、
家族や親しかった友の首が広場で並べられている現状に、私は
ただただ
どうしてこうなってしまったのだろう、という素朴な疑問。
「──よって、サメルラ・アインザッツに死刑を科す!」
長々とした罪状を言い終えたのだろう。
十三までは、ただの
何の後ろ
その
陛下は何度も私を「美しい」と
気づいたときには何もかもが終わっていた。でっち上げの
ああ、そうか。
あの役人に見つかった時点で、私の結末はもう決まっていたんだ。
「ふふ」
美しいだけが取り
それ以外は空っぽだったから、こんな結末を
私に
そのことが可笑しくて、私は小さく笑った。
「ははは」
民衆の歓声が
死の間際、人は気分がこんなにも
ああ、神よ。もし、この私を
もう二度と、力のある者と
そう願って、涙をこぼした。
そこから先は、
私の前世は、ここで終わったのだ。
□■□
神というのは
時の権力者に寵愛されたせいで命を落とした私を、今世ではその権力者側にするのだから。
私こと、アザレア・エル・サベージはカボス王国の
そして何の因果か、私は王太子ロータス
ロータス殿下は太陽みたいなお人だった。
まさに、天才。
これほど殿下を表すのにぴったりな言葉はない。それほどロータス殿下は素晴らしく、
そう、凄まじいのだ。
殿下は
もし彼の欠点を挙げろと命じられれば、本当に
ロータス殿下は、
生半可な
甘く見れば、痛いしっぺ返しが待っている。
……たとえを挙げるなら。
今、両陛下の
「うむ? 勇者はなぜ泣いておるのだ? アザレアよ。
こてんと首を
そして、右手には
私は
「その前に殿下。その手に持っているハンマーと化した聖剣は一体どうしたのでしょうか」
「これか?
「さようですか。ところで殿下。その左手にお持ちの
「これか? 魔王の首である! さっき倒してきた! 良き修業相手であった」
うんうんと満足気に
「なに、将来国を背負う者としては当然であろう。余ができたのだ。アザレアも修業すれば魔王を倒せるだろう。そうであろう、アザレア!」
殿下の発言に、私の残っていた理性が
「修業感覚で魔王を倒す人間がそう簡単にいてたまりますかァ!」
私の
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