数学教師、男女比1:100の異世界へ行く

壬生狼

第1話 異世界転移! そこはハーレムと言う名の『地獄』だったのかもしれない……

 中年サラリーマンだったおれは、ある日のこと若年性脳梗塞を発症し、その後数年の下半身不随の生活の後、晴れて昇天した。


(ああ、若い頃の夢だった、女子高教師…… やってみたかったなあ……)


『うむ…… おぬしのその夢かなえて進ぜよう』


「へ? あんただれ?」


『神に向かって「あんた」とはいい度胸じゃのお』


「神様? なんでおれの前に神様? あ、おれ、死んだからか?」



『まあ、そういうことじゃ。だが必ずしも死んだからと言って神に会えるとは限らんぞ?』


「さいですか…… で、おれに何用で?」



『まあ、気まぐれじゃ…… ありがたく思うのじゃぞ』


「ほんとに夢をかなえてもらえるんですか? 女子高? 数学教師? イケメン? ひょっとしてハーレム? あ、魔物だらけの異世界なんてごめんですよ?」



『心配は無用じゃ、異世界とはいっても基本的にはそれほど危険な生き物などはほとんどおらん。所によってはいるがの…… 近寄らねば問題ない』


「わかりました。それでお願いします」


『おぬしの望み通り、年齢は二十三歳、イケメン、眉目美麗、体力よし、頭脳明晰、性格よしの状態で送り込んでやろう』


「それ以外に何か特典はありますか?」


『特典というわけじゃないがの、この世界は男女比一対百のハーレム世界じゃ。それに一夫多妻制完備のおぬしには夢の世界かもしれぬな』


(うひょ~ それこそ大ハーレムじゃん!)


(ただまあ、なんというか…… 行ってみればわかるからの、黙っておくか……)



 飛ばされた先は、某国立高校の面接会場、それも面接真っただ中でした……


 椅子に座って面接を受けるおれの目の前には、エルフ、それもロリータ、いやロリータBBAの校長と数人の面接担当員が、ある者はうっとりと、ある者は「獲物を狙う猛獣の目」でおれを舐めまわすように頭のてっぺんから足先まで…… ああこれって視姦ってやつですね……


 ロリータ校長自らおれに質問を投げかける。


「あなたのようなイケメ、いえ若い男性が教師を志望というのは、この国始まって以来の大事件なんですよ」


「はあ、そうなんですか?」


「この国は極端に男性の数が少ないのはいまさら言うまでもないことですが、生徒の大多数は女子高生、男子高校生はほんの数人しかいません」


 この高校は各学年五百人ほどで、五年制のため総数約二千五百人のマンモス高と言えるかもしれない。聞くところによると男子学生は各学年におよそ五人程度だそうだ。


「ところであなたはこの学校で何を教えてもらえるの?」


「あ、いえ数学を教えようと思ってます」


 おれは前世では某有名私立大学の数学科卒である。英語や理科系も得意ではあったがここはやはり『数学』だな。


「あの…… 『数学』ってなんでしょうか? 聞いたことがないのですが?」


「はい? え、では算数?」


「算数というのも聞いたことがありません」


 なに! 算数も数学も知らんだと? じゃあ一体数数えるのはどうやってやってるんだ?


「この国では『算術』というものが存在します。たぶんそれのことではないですか?」


「ええ、多分そうだと思います……」


 算術…… この世界の数学は恐ろしいほど発達していないのかもしれない…… でもまあ逆にいえばおれが活躍するにはありがたい世界なのかもな……


 そんなおれの甘い考えは見事に吹き飛ばされてしまうのはもう少し後の話である。


「それと、教師として働いてもらうにあたって一点のみ規則があります」


 一個だけでいいの? 規則……


「これだけ女子が多くて男子が少ない世界です。あちこちから誘惑があるやもしれませんが、万が一女子生徒に手を出したら…… いえ一線を越えたら『死刑』です」



 はい? 手をだしたら死刑? いや、だってここハーレムでしょ ハーレム世界って神様言ってたよ?


「ただし手を出した相手とは責任とって結婚してくれれば無罪となります。が、際限なく結婚すると後が大変ですので…… よくよく考えて行動をお願いしますね」


「わ、わかりました……」


「では、採用としますので明日から出勤お願いします。今日のところはこれにて…… あ、そうそう男性職員と生徒のための宿舎がありますので今日からそちらで生活していただいて結構です」


 おお! 即日採用決定!


 案内された宿舎は、宿舎と言う名の『監獄』、いえ『要塞』でした……


 その日、この国のすべての学校関係者にある通知があっという間に広がった。


『某国立高校にこの国始まって以来のイケメン、頭脳明晰、眉目美麗の算術教師現る!』


 大騒動の波は、おれの知らぬところでおおきなうねりとなって押し寄せてくるのだが、この時のおれはまだそのことを知らない。


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