第111話夢とだに 見ゆとは見えじ 朝な朝な

                          伊勢


夢とだに 見ゆとは見えじ 朝な朝な 我が面影に はづる身なれば

                    (巻第十四恋歌四681)

※見ゆとは見えじ:誰からも、お逢いしたとは思われるはずがありません。

※朝な朝な:毎朝。

※面影:鏡に映る顔。


夢の中であっても、私があの人と逢瀬をするなど、誰からも思われるはずがありません。

それほどまでに、毎朝鏡に映る私の顔は、実に恥ずかしくて見られたものではありませんので。


年齢を重ね、すでに若い頃のような美しさが衰えたことを、毎朝鏡で見て自覚。

そうであるので、夢の中でさえも、逢瀬などは自分も含めて、誰もが想像もできないことと詠む。


特に、女性には辛い歌と思う。

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