第108話ほととぎす 夢かうつつか あさつゆの

                       よみびとしらず


ほととぎす 夢かうつつか あさつゆの おきて別れし 暁の声

                    (巻第十三恋歌三641)


ほととぎすよ、夢だったのだろうか、それとも現実だったのだろうか、朝露が置く明け方に共寝の床から起きて、別れた時に聞いた鳴き声は。


共寝の後の別れ、そして男は心も身体もヨレヨレで歩く。

さっきまでのことが、夢なのか現実なのか、ホトトギスは鳴いているから、そのホトトギスに聞いて確かめるしかない。


枕草子「暁に帰らん人は」を思い出した。

あかつきに帰らむ人は、装束などいみじううるはしう、烏帽子の緒、元結、かためずともありなむとこそ覚ゆれ。いみじくしどけなく、かたくなしく、直衣・狩衣などゆがめたりとも、誰か見知りて笑ひそしりもせむ。

(意訳)

夜明け前の暗いうちに、女性のもとから変える男君は、身なりなど整える必要はありません。

烏帽子も元結も、ヨレヨレで結構。

直衣とか狩衣も、着崩しで十分、見ている人なんていませんから。

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