第15話泣く涙  雨と降らなむ  わたり川

                              小野篁

妹の身まかりにける時よみける


泣く涙  雨と降らなむ  わたり川  水まさりなば  かへりくるがに

                       (巻第十六 哀傷歌829)

※妹:篁の異母妹で妻だったらしい。当時は異母の場合は兄妹婚は残っていた。

※渡り川:三途の川。あの世への渡り川。


私の涙が雨のように降って欲しい。

そうすれば、妹が渡ろうとするあの世への川の水かさが増して、渡るのを諦めてこの世に戻って来るかもしれないから。



※小野篁:延暦21年生まれ仁寿2年没(802~852)。承和元年(834)正月、三十三歳で遣唐副使に任命される。翌承和2年に出帆したものの、難破して渡唐に失敗。同3年にも再出航も失敗。同5年、3度目の航海に際し、大使藤原常嗣の遣唐使船が損傷したため篁の乗る第二船と交換されることとなり、これに抗議して、病身などを理由に進発を拒絶した。しかも大宰府で嵯峨上皇を批判する詩を作り、上皇の怒りに触れて官位を奪われ、隠岐に流された。その二年後、文才を惜しまれて帰京を許された。

古今集の六首を始め、勅撰入集は計十二首。

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