第14話雲もなく なぎたる朝の 我なれや

                       紀友則

雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ

                      (巻第十五恋歌五753)


雲一つもなく、ただ平凡で魅力のない朝のような私が悪いのだろうか。

結局は厭われて相手にもされずに、長年何もない夜を過ごしているけれど。


いとはれて は、「いと晴れて」と「厭はれて」の両方の意味。

「世」は「夜」と「男女の仲」の両方の意味。


思う人に相手にもされない男の自嘲そのもの。

独身貴族などの自負などは、何もない。

特に「雲もなく なぎたる朝の 我なれや」に、空虚感がよくわかる。


※紀友則:生没年未詳。紀貫之の従兄。古今集に四十七首収録。勅撰入集は総計七十首。小倉百人一首に歌を採られている。




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