悠久と刹那

今城御日

序幕 ひとひらの花弁

序抄 独白

生きる場所を探していた




生に愛着が湧いたことは一度としてなかった




ただ意思とは関係なく繰り返される呼吸と鼓動が続いていた

だから生きていた




きっとこの先もこうして無駄に永い命灯が尽きるまで

自分はこうしていくのだと思っていた




自ら命を断とうとは思ったことは無い

きっととても恐ろしいだろうから




それと少しは

この先の未来にもしもを期待していた




今まできっと他力本願に生きてきたのだろう





だから初めて自らの行動力を働かせたとき

それまで見ていた世界が驚くほど一変した




曇り霞んでいた視覚が晴天の空のように明るく広がっていく

しかし昼間にも輝ける星々は数多にあることを知った




そして何より自分と似た自分とは異なる人との出会いが大きく自分を変えた




鏡写しのようなその姿に

自分自身を知ることになった




生きる場所はあった




凝り固まり錆び付いた歯車がまた滑り動き出した

それから生まれ変わるように生を再び辿り始めることができた




彼らとの軌跡はかけがえのないものばかりで埋め尽くされていた




そうして歩んでいく自分達は

やがて軌跡の終着点に辿り着くのだろう




そこに向かう時期は各々異なるものだが

願わくば約束したその場所にて再会することが叶えばいいと







刹那の想いは悠久に溶けていく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る