サヨナラ、小さな罪

新吉

第1話 おはよう、小さな罪

 まだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。毎朝新聞とお手紙が来てないかなとポストを見に行くのですが、今日はとんぼがとまっていました。もう秋ですね。

 ところでさつきちゃんがこの間話していたマンガ、先生もハマってしまいました。教えてくれてありがとうね。『サヨナラ、小さな罪』面白かったよ、私は山本くんが好きでした。さつきちゃんは誰が好きかな?

 それでは何か悩みごとがあったら相談してね。遠くからですが、お手紙書いて応援しますね。ではまた、からだに気を付けてね。

 まりこ



 手紙を読み終えたさつきは、封筒がたくさん入ったお菓子の缶の中へその手紙を入れた。机の引き出しの一番大きなスペースにもう一度おさめる。その脇からレターセットを選ぶ。パンダの柄だ。


 机の本棚からマンガを一冊選ぶと、便せんに絵を書き始めた。キャラクターの山本くんだ。時間が過ぎていくのもお構いなしに、黙々と描く。そのうち暗くなりご飯だよーと下の階からさつきの母の声がした。



「今行くー」



 マンガ本の山本くんのページにかきかけの便せんを挟んでから階段を降りていく。



「まりこ先生、筆まめな人だったのね」


「筆まめ?」


「お手紙たくさん書く人のことよ」


「じゃーあたしも筆まめ?」


「うーんさつきは絵の方が多いでしょ?」


「そーだけどさ」



 食べた食器を台所に持っていくと階段を上る。



「さつき、宿題してからお返事書くのよ」


「はーい」



 さつきは宿題をせず絵を完成させた。

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