『小さなお話し』 その133』

やましん(テンパー)

『人世ライン(線)』

 ねこママ


 『本日は、特別講師として、死神『もも』さんに、おこしいただきました。』


  


 わ〰️〰️、ぱちぱちぱち…………



いくらか、まばらな、拍手が飛んだのです。


 「みなさま、本日は、お忙しい中、ありがとうございます。


 さて、人生とか、ごき生とか、にゃん生とか、申しますものは、一本の線のようなものです。たとえば、音楽史の教科書など見る、と、たくさんの作曲家さまが、いつからいつまで生きていたかを、このように、線で表示しています。


 こんな感じ。(パネルを示す。)


 これだと、どなたが、どなたと同じ時期に生きていたかが、よぅわかりますな。(ももさんは、関西出身らしい。)あたくし、死神は、このライン(線)を、ぷつん。と、切るわけです。これが、その、切断用のハサミです。まあ、仕事用具です。人に限らず、みなさんの頭の上には、その、線が、浮き上がって見えます。あたくしには。それを、これで、ぶちっと、きれば、終わりなわけです。たとえば、いま、この、やましんさんの上で、こう・・・」


 「待った、待った。だから、それはしないと言う約束だろ。話が違う。絶対、ダメ。」


 異議を、申し立てたのは、ほかならぬ、やましんさんです。


 「あら、そうだったかな。」


 「約束は、守ろうね。あんた、文句あるなら、あたくしが、お饅頭嵐を振りまきますよ。」


 幸子さんが、やましんの護衛に入っていたのです。


 ももさんの魂胆は、分かっていますから。


 「あ、お饅頭は、こわい。はははは、冗談ですよ。冗談。」


 「まったく。」


 「はい。まあ、そういうわけなのです。ただ、それぞれ担当者がいます。担当者と仲良くしておくと、良い事もあるかもしれません。」


 「あんたがいう、良い事ってのは、ぶちっ、だろ。」


 「幸子さん、質問は、あとでお願いします。」


 「あ、そ。」


 「で、あたくしが、これを切断しなければ、いつまでも、生きるわけです。しかし、それでは、宇宙の摂理に反するのですわ。」


 「ふうん・・・・・そうなんにゃ。」


 「ママ、またなにか、商売考えてる、ぽ。」


 はとさぶろが、やましんさんにささやきました。


 「まさか。商売にならないよ。」


 「だから、あたくしが、最後のハサミを行使する時には、いまみたいに、じゃましないでくださいね。」


 「あああ、ここにいたか。」


 突然、現れた何者かが、ももさんの頭の上をカットしました。


 ももさんは、ぱったりと、倒れました。


 「失礼。あたしは、死神の死神、ププです。ももは、配置転換します。」


 「死神さんが、死ぬのにゃんか?」


 「いえ、死にません。ただ、配置転換の際は、この世との縁を切りますので。おじゃましました。」


 ププさんは、ももさんの身体を抱えて消えました。


 「幸子さん、これは、なんだい?」


 「はあ・・・この前、やましんさんで、しくじったので、やはり、左遷かな。」


 「あらま。」


 「女王様に、交渉して、うちの地獄にスカウトしよう。あそこの地獄は、人事が強烈だし。大王さまが気に入らないと、すぐ、くびにするから。」


 「そんなのも、やはり、地獄でも、ありなのかい、ぽ。」


 「まあ、どこの世界も、人事は不可思議。わりと聖域だから、介入不可なんですよ。まあ、幸子も、たまには、文句は付けるけど。幸子は、古顔だし、女王様と話ができるしな。それでも、人事に関しては、キャリアの課長や部長には、なかなか歯が立たないの。結局は、女王様頼みなんだなあ。まあ、それでも、うちは、女王様が、寛大だからな。おまけに、力が強いし。」


 「へえ、幸子さんて、意外と、力があるんだ、ぽ。まあ、人事に文句付けたら、イメージわるくなる、ぽ。おいらも、そうだった、ぽ。いくらか、許せなかった、ぽ。でも、結局は、おいらが悪者に、なった、ぽ。やましんさん担当だったからなあ。それが、ちょっと・・・・あ、失礼。ぽ。」


 「ははは(冷や汗・・・)、いやあ、たしかに、ぼくなんかも、ちっとも、人事に苦情なんか付けてないのに、付けたことにされてたりもしたなあ。希望出したのが、苦情に見られたかも。まあ、でも、あれは、不思議だった。なんで、文句も付けてないのに、あんなに、言われたんだろ。どっかの上司が、申し立てしたんだろうかなあ。世の中、むつかしいんだよ。上役の意見が通りやすい。」


 「それは、まあ、上の人が強い、ぽ。それに、やましんさんは、ひにくりすと、だ、ぽ。それは、元々、組織には、向かない、ぽ。」


 「まあね。でも、ぼくとしては、あまり、同情は、この場合は、できないなあ。やはり。最近、今日が最後かなあ、なんて、いつも、思ったしな。」


 「まあ、ももさんに、狙われてたからニャンか。」


 「でも、すぐ、別の、担当が来るわよ。」


 「はあ。そうですか。まてまて、幸子さんは、なんの、担当?」




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『小さなお話し』 その133』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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