52
黒猫は病院の外に出た。
僕は階段のところから移動して、病院の待合室を抜けて、さっきまで黒猫がいた玄関の前のところまで移動した。
そして、開いているドアを抜けて、病院の外に黒猫を追って出て行こうとした。
すると開いているドアのところから、まるで僕を病院の内側に戻そうとするように、外側から……びゅーと、とても冷たくて強い風が吹いた。
……僕はその風のあまりの冷たさに、その透明な風の中に、『死というものの存在』を感じた。
白い雪が、その風の中で、まるで散る花びらのように舞っていた。
僕は寒さで一瞬、体を動かすことができなくなった。
でも、僕はその風に負けずに、開いているドアを通って病院の外に出た。
病院の外は真っ暗だった。
雪が(真白が想像していた以上に)、とても強い勢いで降っていた。
雪の降る闇の中に光る二つの緑色の瞳が、遠くから僕のことをじっと見つめていた。
僕はとてもじゃないが、こんな強い勢いのある雪の中を歩いて、あの黒猫のいる場所まではいくことができないと思った。
……でも、不思議なことに、それから少しして雪の勢いがだんだんと弱くなり始めた。
雪は小降りになり、僕はこれならなんとかあの黒猫のいるところまでいくことができると思った。
僕は雪の中を歩き始めた。
もう体の感覚はほとんど麻痺していて、あまり寒さなどは感じないようになっていた。だから四本の足の裏も、もう冷たいとは感じなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます