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「私はあとでいいんだ。きっとまたきらきら星を見つけられる。実は今までずっと探してきたんだけど、ずっと見つけられなかったの。でもね、今日は見つけられたね。猫ちゃんのおかげだね。猫ちゃんを見つけて、きらきら星を見つけた。きっと猫ちゃんは『幸運の猫ちゃん』なんだね。だからいいよ。猫ちゃん」と瞳は言った。
願いごと? と僕は言った。
そう、願いごとだよ、と声が言った。
「猫ちゃんはきらきら星になにをお願いするの?」と瞳が言った。
願いごと、と僕は言った。
そう、願いごとだよ、と声が言った。君の願いを言ってしまいなよ。もしかしたらそれは言葉にすれば叶うことかもしれないよ、と声は言った。
……願いごと。僕が望んでいること。叶って欲しいと思っていること。それは……、口に出してはいけないこと……、と僕は思った。
ううん。そんなことないよ、と声は言った。それは口に出していいものだよ。きちんと他の人に伝えてしまって、かまわないことなんだよ、と声は言った。
……その言葉を聞いて、……僕は、星に、『ある、一つのお願いごと』をした。
そして、それが終わったことを瞳に告げるために、「にゃー」と小さな声で鳴いた。「お願いごと、終わったの?」と瞳が言った。僕はしばらくぶりに星の光から目をそらして、瞳の顔を見つめた。「うん。よかったね、猫ちゃん」と瞳は言った。……僕も、少し恥ずかしかったけど、星にお願いができてよかった、と思った。僕は星にお願いごとをする機会を僕に譲ってくれた瞳に、本当に感謝した。
「じゃあ、今日は少し早いけど帰ろうね、猫ちゃん」と瞳は言った。僕は本当はもう少し星の光を見ていたかったのだけど、瞳はくるりと身体の向きを変えて、ゆっくりと冷たい廊下の上を歩き出してしまった。星の光は見えなくなり、世界は再び真っ暗な闇に閉ざされた。
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