第32話 考え方

目を覚ますと見慣れない場所だった。

白を基調に整えられた部屋であり、必要な物しか置いていない。


「病院……?」


そう、俺には見覚えがあった。

俺は小学6年生のとき、自己免疫疾患という病気で入院したことがある。

昔のことを思い出しているとドアが開いた。


入ってきたのは医者らしき白衣を着た人と母さんだ。


「晋也!足は大丈夫?」


「足?」


そう言われ、右足に軽く触れると激痛がはしる。

そういえば俺は少女を助けたあと、足の痛みで気を失ったんだった。

俺の右足は何やら硬い布のようなもので固定されていた。


「晋也君、君はふくらはぎで肉離れが起きているんだ」


「肉離れ、ですか……。それは治るまでどれくらいかかりますかね?」


「早くて3週間くらいかな。しっかりとリハビリもしてもらうよ」


せっかくサッカー部に入ろうと決断してすぐの負傷に心が暗くなる。

やるせなさと悔しさでいっぱいだ。

そんなとき廊下からバタバタと誰かが走る音が聞こえる。


「晋也、大丈夫!?」


ドアを開けて夏帆が駆け込んできた。

すごい心配そうな表情を浮かべている。

走って病院まで来たのか息はきれているのに、息を整えるより先に俺の心配をしてくれている。

それが堪らなく嬉しくて、先程までの沈んでいた気分が晴れていく。


そう、別にサッカーが出来なくなったのは一時期だけなのだ。

今の俺がやらないといけないのは、リハビリと治療、日常の中でのケアだ。

少しでも早く治してサッカーをする。

そう決意した。

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