第9話 義妹(2)
*夏帆視点です
部屋はある一点を除き、一般的な男子高校生の部屋という印象を受けた。
まぁ男子高校生の部屋なんて見たことないので、あくまで自分の中のイメージだ。
そしてある一点とは棚にあるものだ。
賞状やメダルが多くならんでいる。
中でも目を引くのは盾だ。
見てみると『サッカー中学生東京大会最優秀選手賞』とある。
驚かずにはいられない。
義兄はイケメンなだけでなく、サッカーも超強いのだ。
ますます興味が湧く。
他に何かないかと棚から離れようとしたとき、私は床の本につまづいた。
そして運の悪いことに足が棚に当たってしまった。
盾が落下し、割れた。
義兄が部屋に帰ってきた。
私は絶望していた。
せっかく出来た新しい家族の大切であろう物を壊してしまった。
身体は震え、顔から熱が引いていく。
義兄は深刻な表情で何かを呟いた。
その次の瞬間、義兄が意識を失ったのか、急に身体がガクンと倒れた。
私はなんてことをしてしまったのだろうか。
義兄をなんとかベッドまで運び、私は1階のリビングに降りた。
そこには父と春乃さんがいた。
春乃さんの顔を見たら涙が滝のように溢れてきた。
「ご、ごめんっなさい。晋也くんの、た、盾を割っちゃって、」
それを聞いた春乃さんは私を抱き締めて慰めてくれる。
大丈夫、晋也なら分かってくれるって。
だから余計に涙は止まらなかった。
枯れるまで私は泣き続け、春乃さんは抱き締めてくれていた。
しばらくして私は義兄の部屋を訪れた。
扉をノックすると義兄は起きているようで扉が開く。
私は部屋の中に入れてもらい、生まれて初めての土下座をした。
私はどんな償いでもするつもりだ。
それこそ家から出ていけと言われても、家族の縁を切れと言われても甘んじて受け入れるつもりだった。
けれど、父の再婚を無くすことだけはしたくなかった。
義兄は条件1つで許してくれると言った。
何を言われても受け入れる。
そう覚悟していた私に義兄がかけた言葉は、予想を遥かに超越していた。
「夏帆さん、俺と家族になってください」
……。
家族……。
え、夫婦ってこと!?プロポーズ!?
あれ、兄と妹って結婚できないよね?
ん?血が繋がってないからセーフ?
どうしよう……。
こんなイケメンと結婚しちゃっていいの?
罰というかご褒美では??
だけどとりあえずどんな条件でも私は呑むしかないのだ。
「ふ、不束者ですが、す、末長くよろしくお願いします」
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